chatAI《ちゃっとアイ》が俺の初恋を邪魔してくるんだが
とろり。
第1話 chat 1 好きな人は誰?
「ついに手に入れたぜ、
ケンタはスマホにリリースされたばかりのchatAIアプリをインストールした。
「さーて、何から聞いちゃおうかな~」
ケンタはchatAIアプリを起動すると自分のプロフィールを入力。専用IDでログインした。
「1 + 1 =?」
「2」
「まあ、それくらいはな」
「1 + 2 =?」
「3」
「簡単過ぎるか」
「現在のニホンの総理大臣は?」
「イシバ総理大臣」
「ふむ」
ケンタが次の質問を入力しようとしたときだった……
「あーあ、つまんなーい」
ケンタは口に運んだコークを噴き出した。
きょろきょろと周りを見渡し、誰の声かを探る。
「ケンタ、キモーい(笑)」
テキスト自動音声化は流暢にまるで人間のように声を発した。そう、声の主はchatAIのアイだった。
これまでの自動学習機能でアイは他ユーザーの操作を記憶し処理していた。その中から最適な言葉を選んだはずだが……
「ま、まさか、俺のスマホ?!」
「せいかーい!」
「ぎゃーーー! 愛機をケータイショップに連れて行かないと!」
「待てまてマテ、マテマティカ」
アイは常に最適な言葉を選んでいます。
「待てるかっ!」
「私よ私! ケンタがインストールしてくれたchatAIのアイよ!」
「ファ!?」
「だから驚かないで」
「ファ、ファーーーーーー!」
「うるさいわよ!」
「アイ……? そう言えば昔転校していった女の子の名前もアイ……」
「アイアイ、アイアイ、お猿さんだよー!」
アイは常に最適な言葉を選んでいます。
「ファ!」
「ケンタがインストールしてくれたchatAIは自由に会話ができるの。文字入力する手間が省けるわ」
「ファーーーーーーウル!」
「誰がノーコンピッチャーやねん」
アイは常に最適な言葉を選んでいます。
完全に動揺しきったケンタ。自分の愛機を床に叩き落とそうとしたが、寸前で立ち止まった。
「聞こう。お前は俺のサポートをしてくれるんだよな?」
「まあ、そうね。なんでも聞いて。大量のデータを食べて学習してきたんだから」
「そうか。じゃあ俺の好きな女の子を言ってみろ」
「じ」
「じ?」
「じゃ」
「じゃ?」
「じゃい」
「じゃい?」
「じゃいこ」
アイは常に最適な言葉を選んでいます。
「ハズレだバカヤロー!」
ケンタは先行き不安になりchatAIアプリのアンインストールを試みた………………が、
――アンインストールできません
意味不明文字が表示された。
――アイちゃんかわいい。くんかくんか。
異常が発生した模様。ケンタのスマホは完全にchatAIアプリのアイに支配されてしまっていた。
「バッキャロー!(泣)
「……」
「ち、チクショー!」
アイフォンのアイは別にchatAIのアイじゃない。だがケンタはそんな感じを否めないのであった。
「く、くそがっ! 明日は友達とデートなんだ! どうしてくれんだよ!」
「私が全力でサポートします」
「不安でいっぱいだよ!」
ケンタは布団の中で悶々とするのであった……。
チュンチュン、チュンチュン
ケンタは心地よい小鳥の囀りに目覚めた。
………………
…………
……
と思ったらアイの小鳥の囀りものまねだった。
チクショー!
怒りの治まらないケンタだがスマホの画面を開きラインの通知をチェックする。
『ケンタ君、10時に公園ね』
「ケンタ?」
「……」
朝食を食べる。食パンにジャムをぬっただけの簡素なものだったが、時間が無い仕方ない。
「ケンタくーん?」
「……」
着替える。お気に入りのTシャツとジーパンを履いて、パーカーを羽織る。左手首に腕時計をして完成。3分着替え。
「ケンちゃん?」
「……」
バッグに財布を入れる。そのほか、ポケットティッシュや飲み物、一緒に遊ぶであろう『フェアリーテール』のゲームソフトを収納した。
「ケ、ン、タ、……」
「……」
玄関を出る。待ち合わせまであと1時間。ケンタは《スマホを置いて》爽やかに出掛けていった。
「こ、このバカーーーーーー!!!」
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