2話 甘えたい①
「は?」
彼女の言葉に脳内が停止する。確かに、俺の言えた事かは置いておいて、JKが1人で外に出れば襲われる可能性は高い。
だから割と普通に置いてやろうとは思っていた。
「えっと…。その、な?お前もうちょい体を大切に…。」
「良いの?セックスしなくて」
「もうちょい可愛らしい言葉に変換してくれ。」
「え、じゃあヤラせてあげるよ。童貞でしょ?」
「失礼だな?!」
当たりだが、ちょっと失礼じゃないか。それで俺が追い出す様な短気ならどうしていたのだ。
あと、当たり前の様にベッドに座っているが暫く洗って無い事を言うには…少し遅かった。
「でも、私が渡せる物はこれくらい。ここから出て補導されても、集団に襲われても、人生は終わる。」
「それは考え過ぎじゃないか?どちらも高確率とは言えないだろ。」
「あるよ。前者はいつしかあり得るし。後者は…さっきそうなりかけた、逃げたけどね。」
「あっ…。」
妙に息が切れていたり倒れたのも、そう言う事なのか。それでも、わざわざ自分から体を差し出さなくても…いや、事情があったのだろうか、家庭内で。
俺は暫く沈黙してしまった。
単に気不味かったのと、返答する言葉が見つからなかった。思ったよりも、彼女は大変な思いを、していたから。
「ねぇ…。」
「へ?」
気付けば彼女はベッドから降りて俺に近付いていた。顔と顔の距離は指2つ分程しか無く、やはり…なのかお決まりに良い匂いがした。
さっき支えた時とは妙に違うのは、相手が下着姿なのと顔と顔での距離がさっきより近い事だ。
「君は…どんなプレイが好き?」
「へ…?」
心音がうるさい。何なんだこの女、急に誘惑して来て…そんなにバレたく無いのか。
…いや、バレたく無いな。人殺し何て。
「シンプルにヤる?何かコスプレさせる?それともちょっとアブノーマルに?」
「…そこまで考えてなかったし、ヤる気も別に無いが…。」
「…。でも君が黙ってたり家に居させてくれないと私捕まるし、そもそもレイプされちゃうかもよ?」
「俺とやるのは良いってのか。」
「無理矢理より、恩返しって事でセックスした方がまだマシ。それでここに居させてくれるならばんばんざいだよ」
「…帰りたくないのか?」
「帰りたくなよ。殺し、バレるし。処女を捨てた方がマシ。」
「そう…か。」
そこまで隠したい。そこまで逃げたい。それは分からなくも無い。ただ、どうして彼女が逃げたいのか、それを考えたかった。
「…。どうして、逃げたい、か。」
昔の光景がふと蘇る。それはクソ映画を見てるかの様な気分になる、最悪の光景だった。血反吐が出るような腐敗臭、散らばった内臓に砕けた骨、変な曲がり方をした肘から上の無い手に、壁に潰された目玉。糞尿が垂れ流され、男の方の目は狂っていて、一部バラバラになった筋肉がそこらに飛び散っている。
男がパクパクと死にかけの虫のように何かを言っている。無意識にそこに膝をつき、膝が汚れていると認識するまも無く…。
「お前何て、いらなかった。おま、え…がし…ね…ば…。」そこで息が途絶える。
こんな汚く、悍ましいこの場で、目が潰れそうな程強く目を開いた。
その時、気付いたのだ。テレビで報道を見てただ適当な感想を言っている連中は知らないだろうが、人を殺す感覚よりもそれまで、その後の方が辛い…辛かった事を…。
「ぐうっ…ぁ、ぁ。」
久々に見たその光景に吐き気を催す。さっきの彼女とは別の意味で、立てなく、自分の体を支えられなくなる。
「だか…せ。」
「ん?何?」
苦しい。辛い。吐きそうだ。立てない。死にたくなって来る。何もかも全部を捨てたい。
…誰かに、寄り添いたい。
「だか、せてくれ。抱かせてくれ。」
「え、?」
「ぁぁ。ぁぁぁぁ…。」
遂には俺が泣き出してしまった。でも苦しいのだ。胸も痛い。辛い、誰かにこの瞬間だけは甘えたい。
「…。良いよ。何かあったんだね、君も。」
彼女は腕を広げ、そのまま俺を包んでくれた。
「ぁぁ…。うぁぁぁん。ぁぁぁぁ。」
泣いて、泣いて、泣いて…。出会ったばかりの女に惨めな状態を晒して。
それでも妙に彼女の胸の中は安心して、直接触れて感じる良い匂いに安心しきれる。
気付けば、俺は眠りに落ちていた。
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