自然消滅って、あるんだ

彼方希弓

第1話 もう忘れてるみたいだけど

 まえがき



 時代設定は、昭和です。

 今とは違って、スマホも携帯電話もSNSもない時代。

 連絡手段は、家の電話か、手紙でした。

 そんな時代の女の子のお話です。



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 高1 クリスマスイブ 前日


 「えっ?なんで?もう遅いだろ?

 俺 他につきあってる子いるから」


 電話から聞こえた声は、本当に驚いているって感じ。

 そうだよね。

 わかってたよ。

 それを聞くのが、恐かっただけだ。


「ちょっと!なんで!ひどいじゃん!約束したのに!」

 って、言いたかったけど、陰キャな私は、そんなこと言えなかった。


「あ、そうだよね。わかった」

 そう言って電話を切った。


 バカだ。

 最後まで、いい子のフリしてる。


「ふざけないでよ!!私たち、いつ別れた?

 他につきあってる子なんて、認めないないから!!とにかく、会って話そうよ!!」


 そう言えたら、状況はなにか変わるのだろうか?

 もう、終わってるって事実は覆らないだろう。

 すべてがもう遅いんだ……

 せめて、いい子だったって、思っててほしい。


 って……


 今の時点で、私とつきあってたことさえ、

 もう忘れてるみたいだけど……



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 中2の秋


「突然で悪いんだけど、俺、仲田のこと好きなんだ。つきあってくれないか?」


 掃除の時間、水道で並んで雑巾を洗っていた。


「えっ?」


「ダメ?」


 ちょっと、その石けん貸して?ってくらいの感じで言われた。


 廊下では、雑巾をキャッチボールみたいに投げあってる男子がいたり、それを注意する女子がいたり、ガヤガヤしていた。


 ジャーーーーーーーーーーッて音が響いていた。

 彼は、横から手を伸ばし、私の目の前の蛇口を

 キュッとしめた。


 突然、無音になった気がした。


「返事、またでいいから」


 そう言うと、白山君は歩いて行った。

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