13.放課後の哄笑
「灯、何でここに?」
「割り箸占いしてたら屋上に行くべしって出たの」
さすがは占い研究部と言ったところか。割り箸占いは恋を占うものだった様な気がするが敢えてここは口を閉じておく事にした皆人。
「それで知ってるってどういう事ですの?」
「私よく占いの結果として学校をいろいろ回るんだけど、D組にいつも寝てる生徒がいるの。いつ通っても机に突っ伏して寝てて……最初は見えちゃいけないものかと思った」
だがちゃんと確かめた所、その男は実体を持った人間だったという。
どう確かめたのかと聞くと「君、占い好き?」と怪しい勧誘紛いで一つ占いをしようとしたとか、なかなかどうして物怖じしない性格なようだ。
因みに断られたらしい。
これまた有力な情報だった。場所も分かりやすく、今から向かえばまだいるかもしれない。
「灯、でかしましたわ!」
「褒められると嬉しい」
無表情で頬に手を当て灯はおどける。
次の目的地は決まった。
その前にと強が灯に懇願する。
「良かったら何か占ってくれないか?」
「ああ、それは俺も気になってた」
「いいよ。くーちゃんもやってあげる。くみちゃんは?」
「わたくしは遠慮しときます」
「そう……」
しょんぼりした様子で灯は割り箸を三本取り出し、各々に配る。
「好きなように割って」
「……好きに割れば良いのか?」
「ご自由にどうぞ」
その言葉に強は「バキぃ」と割り箸を真横にへし折った。普通に割るのではなく、真横にだ。
人と同じ道は歩きたくない、身勝手な男の抵抗だ。
それで占いは成り立つのか、疑問に思いながら皆人は慎重に割り箸を開いた。
それは真っ二つになり、今まで割った割り箸の中で一番綺麗に割れたと自負する程だ。
ふと横を見たらムックも瓜二つといっていい程綺麗に割り箸を割っていた。
それを見て少し肩を落とした皆人であった。
灯は一人ずつ割り箸を舐めるように見ている。
断面図とかで判断しているのかは分からないが皆人の割り箸だけ唸るように見ていた。
強もムックでさえもそんなに時間を掛けてないのに何が気になるのだろうか。
何ならムックと皆人の割れ方の違いなんて素人目には一切判断できない。
「なるほど」
何かに納得すると灯は強に神妙な面持ちで相対する。
「あなたはこの後ある女生徒と戦う事になるでしょう」
詳細は分からないがおそらく【亀甲乙女】の事を暗示しているのだと誰もが感じていた。
いつから居たのか知らないが一色桜の話をしているのを聞いていたのだろうか。
「このままでは何もできず敗れる」
「この俺が!?」
「手も足も出ない」
「一矢も!?」
「報いれない」
強は膝から崩れ項垂れる。
表現が豊かな奴だ。どこまで本気にしてるのやら。
もう皆人は冗談半分で聞いていた。
「どうすれば!?」
「ラッキーアイテムを授ける」
灯が何処からともなく取り出したのは左腕、いや、精巧な作り物だ。体に固定するベルトが付いた義手であろうか。
鞄も何もない身一つでいるのに何処から出しているのか。先程の割り箸もそうだが奇術部でも入った方が良いのではないか。
「この上腕義手があなたの助けになる」
「何で貴方こんなもの持ってますの……」
友達にまで呆れられてる始末。
強はそれを有り難く受け取り、早速試している。普通に腕が邪魔で着けづらそうだ。
「これで一つ貸し」
本当に役に立つか分からない物を渡して貸しとは。
皆人はツッコミを脳内で留め、対して強は笑って了承する。
「ありがとな、今度何か奢るよ」
「要らない。また決まったら言う」
「まさか……俺の体目当て!?」
「興味ない」
「強ちゃん悲しい」
これで強の占いは終わり。次は皆人に向けられる。
あれだけ悩んでいたのだ。何が飛び出してくるか分からない。
皆人は固唾を呑んで経過を見る。
次に灯の口から飛び出したのはまさかの言葉だった。
「あなたは神になる」
「……ん?」
「神になる」
「いや、聞こえなかったとかじゃなくて……どゆこと?」
「灯の占いを本気にしない方が良いですわよ」
「くみちゃん酷い」
「皆人が神か……じゃあ俺は宇宙だな」
「スケールがでけえよ」
ローズの言う通り、強の時からそうであったが話半分に聞いている。この場合半分もくそもないが。
皆人の占った結果はそれだけだったようで灯はムックには「ちゃんと噛んで食べる事」と占いと言う名のアドバイスを送っていた。何なら皆人のは占いじゃなく予言である。
「じゃあとりあえず一年D組に向かうか」
目的は【眠る男】だ。
「灯はどうしますの?」
「私は部活に戻る」
「機会があったらまた占ってくれよな」
「何時でも来て」
強は何故か灯の占いが気に入ったようだった。
皆人は機会があってももういいかなと、ローズが何故断ったのか、少し理由が分かったような気がしたのだった。
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