そしてB型の日常が始まる
ぞっぴー
そしてB型は惹かれ会う
1.幼馴染と七不思議
『B型の人ってどう思いますか?』
おちゃらけた風貌の男はカメラマンを引っ提げ、二人の女性にマイクを向ける。
『え~~? 自由奔放?』
『すごい行動力あるよね』
『まぁ、けど………』
女性二人は顔を見合わせる。その作られた間がまた胡散臭い。
そして示し合わせたかのように声を合わせ、男は笑いながらスタジオに返した。
『自己チューってイメージかなぁ』
『らしいですよスタジオのあおいちゃーん!』
「……くだらねぇ」
無意識に不満を漏らしながら皆人はトーストにかじりつく。
朝の番組のコーナーの一つ『あの子について聞いてみた』
これはスタジオゲストについて芸人のリポーターが街居る人に訊ねていく企画、最後のはいわゆるイジりというやつだ。
「血液型だけで人を当てはめるんじゃねーよ」
そう皆人は愚痴りつつトーストを食いきり、コーヒーを飲み干す。
皆人は笑いながら訂正しているアイドルを途中にテレビを消して玄関へと向かった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
洗い物中の母親と簡易的に挨拶を交わし、学校への往路へつく。今日こそ平和に過ごしたい、そう願いながら―――。
「普済くんってB型なんだ~!」
小学三年の頃、女子の占いブームに巻き込まれ皆人は自分の血液型を言った。
その時までは特に何も思わず、聞かれた事を返しただけ、なのだが――。
「B型って自己チューらしいよー」
「確かに普済くんってマイペースかも」
相手は小学生、悪気は無かったのかも知れない、だが皆人は小学生ながら嫌悪した。
自分がB型と一括りにされたのが嫌だった。人間性すら否定されたかのような。
人によっては考えすぎだろと言われるかもしれない。
それに対して上手い返し、自分もこの女子達も傷付かない言葉、小学生ながら気を回しすぎなこの少年は答えが出せず固まった。
「おう、待ったか?」
自宅を出発して10分、皆人の背中が強く叩かれ、ハッと我に返る。それは短い平和の終わりを告げる鐘となった。
「待ってねぇ、天地がひっくり返ようとも待つことはねぇ」
「もう……イケズぅ!」
「叩くな! 痛い! 触るな!」
この制服を着崩し俺は人とは違うアピールをしている短髪男は
マイペースで思い立ったらすぐ行動、壁なんて全て蹴り破るを信念に持った自由人。
なんの因果か、今年から入ったこの
皆人がこの高校に決めたのもただ家から一番近いからって理由だ。近所に住んでいる強も当然選択肢に入るかもしれない。
けど勉強嫌いな強が何もせずに入れるような甘い所ではない筈、そう思っていた自分の考えが一番大甘だと思い知らされる。
頭を抱える皆人の脳内には「一夜漬け!」と親指を立てた強の憎たらしい顔が今も焼き付いている。あれはそう、合格発表の時だ。
誰よりも声を上げ注目をもらった恥ずかしさといったらまだ記憶に新しい。
そんな事を考えながら歩いていた皆人はできるだけ横の幼馴染みから目を外していたのだが当の本人はそんな事知る由もない。
強は自分の中でホットな話題を皆人へと語り出す。
「それはそうとまた新しい七不思議が見つかったらしいんだよ」
「七不思議ってあれか? 前にお前が言ってた。えっと……」
「【
前にも聞いた二つの謎、再度聞いてもやはり皆人は首を傾げる。
一般的なのは理科室の動く人体模型や音楽室の独りでに鳴るピアノな筈なのだが、少なくとも皆人の知識には無いものばかりだ。
「で、今回見つかったのが【
「へぇ……あとから見つかっていく七不思議とやらにもびっくりだがお前ってそんな噂好きな奴だったか?」
その言葉を皮切りに強の口元が分かりやすく上がる。
しまった――。そうよぎった頃には時既に遅し、皆人には幼馴染みの考えが手に取るように読めてしまった。
強は昔から面白そうな事に首を突っ込む質なのだ。
強の右手が力強く高々に空へと上がる。それが彼等の開戦の狼煙となる。
「学校生活にも慣れて来た頃だし、そろそろ俺の事を皆に分かって貰う時だろ!」
「この目立ちたがり屋が……」
皆人の言葉には聞いていないのか無視してるのか、強は高らかに宣言する。
「七不思議を全部暴いて俺が八不思議目となる!!」
「そういう話なの!?」
思っていたオチとは違い皆人の渾身のツッコミが入る。が、それは虚しく宙へと消えていくのだった。
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