第4話:遠ざかる光

美幸と距離を置くという選択をした後、彰人の生活はどこか空虚だった。彼女の存在が、彼の日常をどれだけ支えていたかを今さらながら痛感していた。


だが、その代償がどこでどのように現れるのか、案内人の言葉が示す意味を彼はまだ理解できずにいた。



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仕事を終え、帰宅した彰人がリビングのソファに腰を下ろした瞬間、ふと目の前に小さな光が漂っていることに気づいた。


「……なんだこれ?」


それは小さな光の粒のようで、フワフワと浮かびながら、やがて人の形を取り始めた。現れたのは案内人だった。


「久しぶりだな。」


「何の用だよ……」


彰人は疲れた表情を浮かべながらも、彼に目を向けた。


「代償はまだ終わっていない。」


案内人の声は冷たく響いた。


「お前が選ばなかった未来は、完全に消えた。しかし、その影響は今もなお続いている。」


「……選ばなかった未来の影響?」


「そうだ。お前が選ばなかった未来には、お前にとって大切な人との再会や、新たな可能性があったかもしれない。しかし、それらは今消えた。そして、その代償が少しずつ現実に滲み出ている。」


彰人はその言葉に戸惑いを覚えた。


「何を言ってるんだ? 俺は美幸と距離を置いた。それだけだろう?」


「本当にそうか?」


案内人は手をひらりと振った。その瞬間、彰人の目の前にまたしてもビジョンが広がった。



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それは美幸の姿だった。彼女は街中で、知らない男性と親しげに話していた。その表情は穏やかで、笑顔さえ浮かべている。


「……これは、何だ?」


「選ばなかった未来の断片だ。お前が彼女と距離を置いたことで、彼女は新しい道を歩み始めている。」


「そんな……」


彰人の胸に鋭い痛みが走った。美幸が幸せそうに見える一方で、自分の存在が彼女の中で薄れていくような感覚が襲ってきた。


「これは代償なのか?」


案内人は静かに頷いた。


「そうだ。そして、お前の未来にもまた別の選択が迫られるだろう。」



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翌日、彰人は仕事の帰りに美幸の家の近くを通りかかった。意識してそうしたわけではない。ただ、足が自然とその方向に向かっていた。


遠くから彼女のマンションを見上げたとき、ふとエントランスから彼女が出てくるのが見えた。隣には昨日ビジョンで見た男性の姿があった。


彰人はその場から動けなかった。彼女の笑顔が、自分の選択が間違っていたのではないかという疑念を深める。


「もし……あのとき別の選択をしていたら……」


その思いが頭をかすめたとき、再びレールが彼の視界に現れた。


一本目のレール:その場で美幸に声をかける未来。

二本目のレール:見なかったことにしてその場を離れる未来。


「またか……」


彼は目の前のレールを見つめた。どちらを選ぶべきか、その選択が彼の未来にどんな影響を与えるのか――考えても答えは出ない。


案内人の声が頭の中で響いた。


「迷うな。ただ、お前の心に従え。」


彰人は目を閉じ、深く息を吸った。そして、心の奥底から湧き上がる衝動に従うように一歩を踏み出した。



---


「美幸!」


声をかけた瞬間、彼女が振り返った。その表情には驚きが浮かんでいた。隣の男性も彼を見つめている。


「彰人……?」


彼女の声が震えていた。それを聞いた瞬間、彰人は彼女の隣にいる男性の存在を忘れるように彼女を見つめた。


「少し、話せないか?」

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