第10話 コラボ配信 with 兎耳山 2(別視点)
○東條(兎耳山)視点
「それじゃあ次はこれ!」
『灯里ちゃん、セラヴィスさんこんばんは。先日セラヴィスさんがめちゃくちゃ美味しそうなパエリアを作ってましたね。セラヴィスさんは灯里ちゃんの料理配信を見たことがありますでしょうか?是非指導してあげてほしいです。』
「だそうです。セラヴィス君って私の料理の腕知ってる?」
「実はまだ見れてなくてね...この前の配信に来てくれた時に手取り足取り教えるよって会話はしたと思うんだけど、どの程度の腕前なんだい?」
「そう言われると思って用意してます!」
そう言って私は一枚の料理の写真を画面に映す。
「え~と...これは...美味しそうな海賊焼きだね。」
「アクアパッツァ!これでも私の作った料理の中ではマシな方なんだよ!」
「他にはどんなんがあるんだい?」
「これかな~」
そう言って別の写真を用意する。
「う~ん...炭?」
「ハンバーグ!炭って酷くない!?」
【有名芸能人の料理と並べられたあの画像すこ】
【アクアパッツァは美味しかったらしいからセーフ!】
【いや、これは炭でしょ】
【それをハンバーグと言うにはあまりにも黒すぎた。黒く、汚く、焦げ臭く、そして大雑把すぎた】
「先生!コメントが酷いこと言ってくる!」
「リスナーさん、灯里さんに酷いことを言ってはいけませんよ?ごめんなさいしましょうね?」
【ごめんなさい】
【すみませんでした】
【でも、先生も炭って言ってました!】
「セラヴィス君の言うことはよく聞くんだね...というよりセラヴィス君も炭って言ったじゃん!」
「いや、この画像はね...やっぱり炭にしか見えないよ。やっぱりリスナーのみんなの意見は正しいよ。うん、謝る必要ないね。思ったことが言えるそんな世の中にしていこうじゃないか!」
【手のひらクルックルで草】
【めっちゃ早口やん】
【何度見ても炭にしか見えんからしゃあない】
やっぱりいいな~こうやって軽いやり取りが出来るのは。
打てば返ってくるの楽しいな...
「この写真見て、料理の指導とかできそう?」
「う~ん...大丈夫だと思うよ。レシピ通りの時間焼いたり、綺麗な盛り付けを意識したりするだけで結構化けると思う。」
「じゃあまたスケジュール調整するから料理配信をコラボお願いできる?」
「全然いいよ。こちらこそよろしく。」
【料理配信コラボ楽しみ!】
【それってオフコラボですか?】
【てえてえの波動を感じる...】
「それじゃあ料理の話題はこれぐらいにして次のお便りはこれだ!」
『セラヴィス様の配信で灯里ちゃんがボイス台本書くって話をしてましたよね?あれっていつですか!?待ってます!この配信で少しだけでもいいのでセリフのサンプルとか貰えないでしょうか?』
「と言うことで、実は少しだけ用意してます!」
「準備いいね。」
「通話アプリの方にセリフ送るからそれ読んでもらえる?」
「構わないよ。」
さて、どのセリフを送ろうか...
セラヴィス君ってイケボだし俺様系ありな気がするんだよね~
またはお兄さんボイスとかありかも
「決めた!一つ目はこれで!」
「なるほど...わかりました。」
「それじゃあセラヴィス君のセリフまで、3...2...1...どうぞ!」
『あ?どこ見てんだよ...俺だけ見てろよ。』
かはっ!?これは想像以上!
ある程度構えていてこれとか不意打ち食らったら死人がでるかもしれん...
【あ゛?!】
【ひゃ……】
【くぁwせdrftgyふじこlp】
【あ、しゅき。すごいえっち】
「さ、流石だね...コメントの反応見てるけどやっぱ需要ありそうだよ?」
「そう?まあ、喜んでもらえたようでよかったよ。」
「それじゃあ次はこれね。」
「うん?なるほどこういうタイプね。大丈夫だよ。」
「それじゃあセラヴィス君のセリフまで、3...2...1...キュー!」
『よしよし、偉いね。いつも君が頑張ってるの僕だけはちゃんとわかってるよ。お疲れ様。』
【ママー!!】
【こういう彼氏が欲しいだけの人生でした】
【セラヴィス君は私の彼氏だった?】
【いや、ワイの彼氏や!】
「非常にいいと思います。まあ、こんな感じのボイス台本書くからよろしくね。」
「わかったけど...需要って...うん。ありそうだね。」
【需要しかない】
【いくらあればボイス買えますか!?】
【お兄さんシチュお願いします!】
【もっとドSなのおなしゃす!】
【男同士の親友ボイスみたいなのありですか?】
「セラヴィス君はもっと自分の声に自信を持った方がいいね。君のボイスは求められてるよ。」
「『メモプロ』の男性ライバーのボイスってどんなのがあるんだい?」
「え~とね...ウチの男性ライバーってセラヴィス君を除くと二人だけで一人はハイテンションだからあんまり恋人シチュに向いてないの。」
「もう一人は所謂男の娘だから、こっちも女性向けではなくて...だからウチのボイスはセラヴィス君に掛かってるんだよ!」
「なるほどね。まあ、ボイス録ることにあんまり抵抗ないから要望に応えられるように頑張るよ。」
「ありがとう!台本出来たらまた連絡するね!」
「さて、時間としてはそろそろ終わりかな?何か言っておきたいこととかある?」
「う~ん...まだデビューして3日だから告知があるわけでもないんだよね...」
「まあ、そうだよね。じゃあ枠を締めよ...」
「いや、一つ言っておかないといけないことがあった。」
「えっ?何?」
どうしたんだろう?こんな風に話を遮るなんて西園寺君らしくない。
「僕はまだデビューしたてでこの業界こと詳しくないんだけど、この業界って入出流が激しいらしいんだよ。で、出ていった人のことを言うのって結構タブーとされていると思うんだ。」
「でも、仲が良かった子の引退とかって割りきったつもりでも感情が内側から溜まってきてしまってどこかで外に出さないと自分まで潰れてしまう可能性があると思う。」
「そういうときは、僕にでも話してね?元々リアルでも知り合いなんだからそういう感情をぶつけたからって何かが変わるでもないし。」
「まあ、言いたかったのはそれだけだよ。」
セラヴィス君は何でもないようにそう言う。
やっぱり西園寺君は優しいね。
「ありがとう。もしかしたらお願いするかもね。」
【なになに?】
【これはてえてえですか?】
【てえてえ~】
【ママであり彼氏でもある新人】
「さて、僕の話で少し枠の時間を押してしまったね。それじゃあ締めるとしようか。本日お送りしたのは、『メモプロ』所属の『セラヴィス·アークバルト』と」
「『メモプロ』社長兼シスターの兎耳山灯里でした!みんなありがとね~バイバーイ!」
そう言って枠を終えた。
ちゃんと枠が閉じられていることを確認して私は口を開く。
「西園寺くん。ありがとね。」
「うん?こちらこそありがとね。東條さんがコラボしてくれたお陰で別の人ともコラボしやすくなったよ。」
「どういたしまして。でも私のさっきのお礼はコラボ自体のことじゃないよ。」
「気にしなくていいのに。もう10年以上の付き合いがあるんだよ。たまには頼ってくれたってバチはあたらないさ。」
「ある程度は私の中でも区切りは出来たと思ってたんだけどね。ちょっとしたことがあると不意に考えてしまうんだ。」
「そういうもんだと思うよ。僕の場合は結構コロコロと環境を変えるからそういう区切りはつけやすい性格してるんだけど、一般的にはそういうわけにもいかないらしいし。AIにでも相談するつもりで気軽に話しかけてくれていいよ。」
「ハハッ。溜まったらそうさせてもらうわ。」
そのあと少しだけ雑談をして通話アプリを閉じるのだった。
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