第2話 一本の電話(別視点)
誰視点なのか分かりやすくするために、主人公である、侑人以外の視点の場合は誰視点なのか書くようにしようと思います。
○東條視点
私の名前は東條 彩華(とうじょう あやか)
Vtuber事務所であるメモリアルプロダクション、通称『メモプロ」の社長をやりながら自身も『兎耳山 灯里(とみやま あかり)』という名前でVtuber活動を行っている。
『メモプロ』を立ち上げて3年、Vtuber業界の中ではある程度名を馳せるようになってきたと思うが、『Multi Color』や『ユニライブ』といったトップクラスの企業とは比べるまでもなく、最近すごい勢いで登録者数を伸ばしている『ぶいちゅあ』にも差をつけられているのが現状だ。
ウチの事務所に所属してくれている子達も頑張ってくれてはいるのだが、私が最近50万人に到達したのにたいして、20万人が一人、10万人が二人、1~10万人が四人とまだまだ登録者数を増やせるはずなのだ。
登録者数が高いほど偉いというわけではないし、別に登録者数=戦闘力というわけでもないのだけれど、企業として活動する必要があるため、登録者数を増やすための活動は行う必要がある。
私は1ヶ月後にデビューする女の子二人組のデビュー準備の為、20時を回った今も会社のオフィスで仕事を行っている。
そんな中、私のケータイ宛に一本の電話が鳴る。
電話を掛けてきたのは今もたまにやり取りを行っている、西園寺君からだった。
彼とは高校生時代からの付き合いなのだが、彼ほどの天才は今まで見たことがない。
その才能をなんとかVtuberとして奮ってもらえないかと思い、何度かウチでデビューしないかと話を持ち掛けたことがあるのだが、全て断られてきた。
おそらく今回の電話も飲みの誘いだろう。
そう思ってわたしは電話に出る。
「僕だけど、今時間いいかな?」
「もしもし、どうしたの?急に電話なんてしてきて?」
「前に誘ってくれたVtuberにならないかって話、あれってまだ有効かな?」
まさかのVtuberの話だった。
今まではあまり良い反応がもらえてなかったが、急にどうしたのだろうか?
ただ、これはまたとないチャンス!私はこの話を逃さまいと電話に答える。
「全然有効よ!なんならいつでも電話もらっていいようにあなた用の立ち絵とか準備してあるのよ!」
「それはよかった。前に断ってしまって申し訳ないが、Vtuberになりたいと思ってね。すまないけど、お願いするよ。」
万が一、話を受けてくれたとき用に立ち絵とかは既に準備していたのだ。
準備していた私偉い!今日はご褒美に美味しいスイーツを買っちゃうぞ!
「わかったわ!それで活動するとなったらいつから活動できるの?」
「今の仕事を辞めてからにしようと思うから、3ヶ月もらえるかい?僕がVtuberになるのに必要なことがあったらそれまでに準備進めておくから言ってくれ。」
「了解。いや~楽しくなってきたわよ!私の事務所も中堅どころとしては大きくなってきたと思うんだけど、上二つとそれに追い付け追い越せになってる一つに中々差をつけられてしまっててね。貴方ならトップ目指せるんじゃないかしら?」
「期待に応えられるように頑張るよ。」
「期待しているわ。準備してもらう必要のあることとか所属してもらうにあたっての契約とか諸々はまた説明するから準備できたら連絡するわね。」
「わかった。楽しみに待ってるよ。」
「それじゃあまたね。」
そう言って電話を切る。
まさか西園寺君からVtuberになりたいと連絡がもらえるとは...
これは楽しみになってきた!
『メモプロ』は半年ごとに二人ずつ新人がデビューしている。1ヶ月後にデビューする二人も既に予定を決めてしまっているのでこれにねじ込むのは難しいだろう。
3ヶ月後となると同期がいないということになってしまうが、逆に同期がいない方が良いのかもしれない。
彼と同期となるともう一人にも同じぐらいのスペックを求められることになる。
私が同期となるのであれば絶対に嫌だ。
天才と並べられる凡人などVtuberとして活動していけるとはとうてい思えない。
よし!彼はソロでデビューしてもらうことにしよう!
楽しくなってきた!
ただ、先に1ヶ月後の準備からね。そっちを疎かにするつもりもないし、ウチに所属してくれる子達に優劣を付けるわけにはいかないものね。
そう言って東條は遅くまで仕事をするのであった。
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