第2話 親と旅行をした話
「隼人、学校の課題終わったか?」
「え、いやまだだけど」
俺が子供の頃母さんが死んで男で一つで育ててくれたお父さん。眉間にシワを寄せて聞いてくる。今は冬休み期間。学校からの課題が出されているが残り五日ほどだからほとんど終わらせた。
「後何が残っているんだ」
「思い出作文」
冬休み外に全く出ていなかったから書くことがなかった。イマジナリーメモリーでも創ろうと考えていた所。
「思い出か…、どっか旅行でも行くか」
「出来るなら行ってみたい」
「場所は?空いてる日はあるか」
「中華街に行ってみたいかな、冬休みは全部暇だから空いてるよ」
「じゃあ、明日いつもより早めに起きてこい」
「わかった」
父さんも俺も話すことが得意ではなくて会話が全く広がらない。だからやり取りがいつもメールみたいになってしまう。
「おはよう、父さん」
「ああ、おはよう」
作ってくれた朝食を食べていると、切符を渡される。
「一泊二日で旅行行くか」
特急列車の切符だ。
「神奈川県の横浜の中華街に行くぞ」
「ありがとう、楽しみ」
中華街、辛さ?スパイスっぽい独特の香りが鼻を刺激する。東京から約二時間。電車内でスマホを見ているだけだったがついに実感をする。
「昼飯はは食べ歩きする感じでいいか?」
「うん、大丈夫だよ」
餃子やりんご飴、肉まんで腹を満たす。
「めっちゃ美味しい」
「そうだな、あれも買ってみるか」
手相占いをやってみたりしていたら時間が過ぎた。
「予約しているホテルに行こうか」
広いベッド二つと低めのテーブル。風呂とトイレは別室だった。ありがたい。
大きめの荷物を置き、財布などの貴重品が入ってる肩掛けバッグを持って再度外に出る。
「夜はレストランを予約しといたんだ」
「装飾がめっちゃ豪華だね」
「そうだな」
コース料理で見慣れている小籠包、餃子。初めて聞いた料理名の肉の料理が出てくる。どれも口にあって美味しかった。
「父さん、なんで連れてきてくれたの?」
「作文書かなきゃならないだろ」
「そうだけど、家あんまお金ないんじゃ」
そう言うと父さんは驚いたような顔をした。いつもの吊り目が大きく開かれて真ん丸になっていた。
「そのリビングの家具も古いままだし」
「あれは、母さんとの思い出を残したいと思ってて」
「前、数年前に電気代止まったし」
「あれは、払うのを忘れただけだ」
「え、マジ?」
「ガチマジ、勘違いさせてたのか」
家に帰って父さんが働いてる場所だったり、銀行帳を見せてくれた。
すごかった。
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