野良猫を可愛がっていたら何故かお嬢様系美少女達に懐かれてしまった

田中又雄

第1話 始まり

 とある大雨の日のこと。


 傘をさして帰っていると、歩道にダンボールが置かれているのが目に入る。


 ずぶ濡れのダンボールは何故か動いていて、心霊現象かと怯えながらも気になって近づくと、中から「にゃ〜」というか細い声が聞こえた。


 急いで段ボールを開けると、そこに居たのは寒さで凍える小さい猫が居た。


 本当なら家に持って帰りたいのは山々だが、うちの家族は俺以外全員が猫アレルギーだった。


 だから、家にとって帰ることはできない。

だけど、このまま放置はできない。


 俺はこれ以上ダンボールが濡れないように傘を傾けてその場を走り出した。


 そうして、ずぶ濡れの体でコンビニに入ると、暖かい水と猫用の食料、それとタオルと牛乳を買ってどちらもレンジでチンしてからまたその場所に戻った。


 そのまま、子猫の体を温かいタオルで包みつつ、飲み物を与えた。


 生きることに必死な子猫は懸命にその水と牛乳を飲んだ。

そして、猫用の餌を美味しそうに食べると少しだけ元気を取り戻したようだった。


 そうして、濡れないような場所にその箱を持っていき、可能な限りその場所にいつづけた。


 何ができるわけでもなかったが、そばにいてあげたかった。


 その気持ちが伝わったのか、子猫も俺に懐いていた。


 帰ったあと、当然ずぶ濡れであることを母さんに怒られた。

挙句、翌日は高熱を出して、学校を休んだものの、猫のことが気になって、重い体をどうにか起こして、餌と飲み物を持って昨日の場所に向かった。


 すると、相変わらずその段ボールの中にいて、俺を見ると嬉しそうにニャーニャーと鳴いた。


 それからというものの、毎日3回、俺はその猫に会いに行った。


 次第に猫は元気になり、段ボールの外に出るようになっていたようだが、俺が行く時間には必ずダンボールの中にいて、俺のことを待っていてくれた。


 そんな生活が1ヶ月ほど続けていたある日のこと。


 いつものように餌などを持ってその場所に行くと、段ボールごとその子は居なくなっていた。


 いきなりのことで衝撃を受けつつも、こうしてここで生きるより、人間に拾われたほうが幸せなのは間違いなかった。


 それはきっとあの子にとってもいいことだと思っていたのだが、置いていた段ボールの場所に、一枚の手紙があることに気づいた。


 興味本位でその手紙を開くと、そこにはある住所が書かれていた。


「...ここって」


 それはここら辺で知らない人はいないほどに、豪華で広大で有名なとある元財閥の家が立っている住所だった。

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