バルサラ戦記~首尾の魔法使い~

情蝶

プロローグ

  数百年前、この世界には魔法が存在していた。


 その起源は明らかになっていないが、一説によると非力で進化の遅い人類を神が哀れみ魔法を与えたと言われている。


 ところがある日突然誰一人として魔法を使うことができなくなってしまった。

 ひとりやふたりではない、全員が使えなくなったのだ。

 様々な国の学者が原因究明に急いだのだが、結局わからなかった。

 これもまた一説によるのだが、魔法を使い文明を発展させてきた人類だったが、常に争いが絶えずそれを見兼ねた神が魔法を取り上げたのだとか………。


 神様がどうこうなんてものは信憑性に欠ける話なのだが、そうとしか説明のしようがないのもまた事実だ。

 この話を信じている国民は少ない。

 神うんぬんは当然のこと、そもそも魔法が存在したことすら信じていない人がほとんどだ。

 魔法に関する歴史書はおとぎ話のような扱いになり、なかなか寝付かない子供に読み聞かせる母親なんてのも珍しくない。


 そして今、この国『ホルテセ王国』と隣国『アガルズ王国』は戦争をしている。

 元々は一つの国だったのだが、魔法が消失したとされる時期に二つに別れてしてしまった。

 ところが数年前、アガルズ王国がひとつの国に戻るべきだと主張し始めた。

 離れたのはホルテセ王国であり、本来この国の領土であると。

 だからその土地を返してもらおうというものだ。

 しかしホルテセ王国もただ頭を縦に振るわけにもいかず、離れたのはそちらであると反論した。


 互いに主張を譲らず話し合いで解決することはなかった。

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