美少女転校生の正体を知ってしまった俺はUFOにお持ち帰りされる
uruu
第1話 転校生
高一の二学期ももう11月。いつものように登校してきた俺は何か違和感を覚えた。どうもクラスがざわついている。あまり友達が居ない俺だが、だからこそ周りの様子に敏感だ。俺は聞き耳を立てて、ようやくその理由がわかった。
要は転校生が来るらしい。しかもうちのクラスに。担任の森本先生がその子と話しているのを誰かが見たようだ。どうやら、超絶美人らしい。そういうことには男子も女子も敏感だ。だが、俺はあまり興味が無い。関わることも無いだろうから。しょうもない、いう気持ちで俺は寝ようとした。
と、そこに騒がしいやつが来た。
「おい、
興奮した様子で話しかけてくるのは
藤崎は騒がしいやつだが見た目は悪くない。イケメンというやつもいるかもしれない。だが、とある理由で俺と同じくクラスのカースト底辺だ。今は席も隣だし俺が最も話すやつだが親友とは呼びたくない。
「……知ってるよ。転校生だろ?」
こいつが転校生ぐらいで騒ぐなんてちょっと意外だな。
「転校生? 違うよ、これだこれ!」
そう言って藤崎が見せてきたのはスマホの画面だが、何も映っていない。
「……真っ暗で何も見えないぞ」
「良く見ろ! ここだ!」
そうやって指さしたところには小さな光が映っていた。
「これがどうかしたか?」
「見てろよ。再生するぞ」
動画だったらしい。再生されると光は点滅したかと思うと急速に移動した。
「どうよ!」
「……これが何なんだ?」
「見てわからんのか。UFOだ!」
「UFOね……」
また始まったか。藤崎の趣味はオカルト系。某オカルト雑誌は毎号買う。それどころか特派員なんて謎の資格まで持っている。そしてそれを隠していない。クラスメイトにオカルト趣味が知られてからは話すやつも俺ぐらいになってしまった。これがカースト底辺の理由だ。
「こんな動画、よくあるだろ」
「違うよ、これは熊本で撮られたやつだぞ!」
「はぁ……そういうことね」
熊本、つまりは俺たちの地元。この辺でUFOを見た、という話はあまり聞いたことが無い。藤崎はそれをよく嘆いていた。たまにテレビで流れるUFO番組でも九州のUFO目撃事例は福岡が多い。まあ、人口が多いせいだろうけど。
「興奮するよなあ、熊本にUFOが来たんだぞ!」
「お前なあ、どうせUFOじゃないってオチだろ」
「いやいや、専門家のお墨付きだって」
そうやって今の動画へのコメントを見せる。
『間違いなくUFOですね。非常に興味深いです。年末特番で使わせてもらえませんか?』
このコメントの投稿者は八神浩一。UFO専門家としてよくテレビ番組に出ているうさんくさいオヤジだ。
「へぇー、じゃあ、異星人解剖フィルムと同じぐらい本当かもな」
「じゃあ間違いないな!」
「違うだろ、まったく……」
異星人を解剖したというフィルムは一時期本物だと騒がれたが、今では偽物だと確定している。だが、それでも本物だと信じているやつはいた。藤崎もその一人だ。こいつは根拠が薄いことも面白ければ信じてしまうから将来が心配だ。
そんな話をしていると、担任の森本先生が教室に入ってきた。いつもは疲れ切った中年男性だが、今日はどこか生き生きしている。
「おーい、席に着け」
教室が落ち着くと見知らぬ生徒が入ってきた。また教室がざわつく。なにしろ、美人。そして背が高い。さらには金髪のロングヘアだ。おまけに胸も大きい。
「今日から転校生がクラスに加わるからな。はい、自己紹介」
「
教室はたちまち騒然となった。興奮した声が飛び交い。森本先生の声が聞こえない。
「騒ぐな! まったく……じゃあ席は……」
まさか……俺の後ろの席は謎に空いているけど……
「
「は、はい!」
全然違う席だった。鳴海華蓮が指名されたのはクラスの委員長・皆川綾乃の隣の場所だ。俺の席とはかなり遠かった。
ホームルームが終わり、休み時間になると転校生・鳴海華蓮のまわりは瞬く間にクラスメイトたちで埋め尽くされた。彼女に話しかける生徒の声が教室中に響き渡る。
「転校ってどこから来たの?」
「アメリカ」
「うわー! すごい!」
「別にすごくないよ」
「綺麗な金髪ね、どうやって染めてるの?」
「染めてない。私のお母さん、スウェーデン人だし」
「え! ハーフ! すご-い」
「すごくないから」
……転校生も大変だな。
さすがの藤崎も転校生に夢中だろう。と思って隣の席を見ると転校生に目もくれずにスマホを見てブツブツ言っている。
「お前、転校生に興味ないんだな」
「当たり前だ。それどころじゃない。見ろよ、昨日のあのUFOを見たってやつ、たくさん居るみたいだぞ」
そうやってUFO動画に寄せられたコメントを俺に見せる。確かに自分も見たというコメントが多い。しかし……
「ほんとに大きな光ならもっとたくさんの人が見てるだろ。例えばクラスの誰かとか。でも、誰も騒いでない」
つまりはそんな光は無かった、あるいは見間違え、もしくは小さい光、ということだ。
「そう言われればそうだな……誰か見てるかも。じゃあ、聞いてみるか。おーい!」
急に藤崎は大声を出した。転校生に夢中だったクラスメイトたちも藤崎に注目する。
「昨日、UFO見た人!」
その言葉にみんながしらけた様子を見せた、「なんだ、また藤崎のたわごとか」と言った声が聞こえて誰も返事をせず元の会話に戻っていく。
「い、いないのか!」
藤崎が言うがみんな無視だ。そして、委員長の皆川綾乃が言った。
「藤崎と星野、うるさい! みんなあんたたちの趣味に付き合う暇は無いからね!」
なぜか俺も一緒に怒られてしまった。俺は藤崎とセットじゃ無いぞ。
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