【10話】形勢逆転なのか?

少女の魔王は、何やら深刻な表情を浮かべ、静かに口を開いた。


「そうか…。

しかし…。

うん、だよな、だよな…。

本当に大変だったな、お前…」


どうやら、魔王からかなり深い同情を寄せられているらしい…。

しかも、どういうわけか、俺がこれまで壮絶な苦労を重ねてきたかのように勝手に想像し、うんうん、と頷きながら、わかるわかる、とか呟いている。

どんな存在なんだ、俺…。


「よし、分かった!」


少女の魔王は、なにやら名案を思いついたように、突然、自分の膝の上を勢いよくピシャリと叩いた。


「その見た目だと、どちらかと言えば、こっち側の存在じゃろ?

ならば特別に魔族として、儂の仲間にしてやる。

報酬や待遇もはずんでやっても良いが、どうだ?」


「え、マジ!?

もしかして世界の半分をくれるってやつか?」


「──スミマセン、イッテイルイミガワカリマセン──」


「ボケ殺しかよ

スマホのアシスタントみたいな回答しやがって…」


あまりにも人間扱いされない境遇に思考が止まってしまい、気づけば意味不明なボケが口をついて出てしまう。だが、少女の魔王はまるでスマホのアシスタントのように、無感情な機械音声で返答してきた。くっ…、なんかこのやりとりが既視感を感じるな…。


「ダメですよ、リュート!」


俺と魔王のやり取りを黙って見ていたレイアが、突然、鋭い声でピシャリと注意を飛ばしてきた。


「あ、やばい…、異世界に来てから、扱いがひどすぎるもんだから、つい揺らいじまった…」

俺は、ハッと我に返り、本来の目的を思い出す。


「そうか、それは、残念だの…。

では、消えてもらおう」


少女の魔王は、これまでの軽やかな雰囲気を一瞬で消し去り、圧倒的な威圧感を放ち始めた。


ぐっ…、これは………。


その瞬間、空間が一瞬にして変わった。まるで大地が震えるかのように、周囲に強烈なエネルギーがほとばしり、重く圧迫する目に見えない力が空気を引き裂く。その力は波動のように押し寄せ、俺の体に重くのしかかる。身の危険を感じ、額に冷や汗がじわりと浮かび上がった。


「くっ、やばい…

レイア、どうする…?」


俺はすぐさまレイアに声をかけた。


「残念ながら、私の攻撃は魔王には一切効かないのです」


だが、彼女は変わらず無表情のままで、このピンチを打開するような言葉は返してこない。てか、お前、この状況をちゃんと理解してるのかよ、ここはやる気を出す場面だろう…。


「まじか…、勝てる気がしねぇぞ…」


その時──


「ぐぐぐぅ…。

なんだ、この徐々に侵食してくるようなダメージは…。

お、お前の仕業か…?」


少女の魔王は、突然顔を歪め、苦しむような表情を浮かべた。その瞬間、これまで押し寄せていた圧倒的な威圧感が、わずかにだが薄れ、空気が少しだけ楽になるのを感じた。


なんだなんだ、一体どうしたんだ?

何が起こっているんだ、これは…?

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