【5話】失礼な仲間が加わった

「何やってんだこんなところで、しかも全然違う見た目じゃないか」


ようやく仲間になってくれるのかと声をかけられたが、その声の主が、異世界転生直後に出会ったあの女神であることに気づき、思わず疑問を口にしてしまった。


「はい、人間の姿に変えていますから」


「そうなのか…。

あれ、でも、俺、なんで分かったんだろう?」


確かに姿はまったく違うが、あの失礼な女神の面影が重なったような気がして、何とも言えない不思議な感覚だったんだよな。


「単純です、勇者にはそういう力がありますからね。

まぁ、その見た目でも、勇者は勇者、ということですね」


「おい!」


「あ、でも、大丈夫ですよ。

あなたの見た目で勇気をもらっている人は大勢います。

人々に勇気を与える、そういう意味でも勇者であることを誇りに思ってくださいね」


「思えねーよっ!

反面教師かよ、いや、反面勇者かよ!」


くそっ、相変わらず余計な一言が多いな…、こいつは…。

とはいえ、他に仲間を見つけるあてもないし、このまま女神を仲間にして一緒に行動した方がいいだろうか…?

俺は、むむむ、と激しい葛藤に揺れながら頭を悩ませる。


目の前の女性は、ふうと大きなため息をつき、哀れみを込めた表情で話しかけてきた。


「しかし、心配して様子を見に来てみたら、案の定、仲間が一人も加わっていないとは…」


「この世界の見た目で判断する文化はひどすぎるぞ…!」


「それは仕方がありませんよ…。

諦めてください…。

私もあなたの顔については、もう諦めていますから…」


「諦めたら、そこで試合終了だぞ!」


「──スミマセン、イッテイルイミガワカリマセン──」


「ボケ殺しかよ

スマホのアシスタントみたいな回答しやがって…」


俺はいつもように頭が熱くなり、気づけば意味不明なボケが口をついて出てしまう。だが、女神はまるでスマホのアシスタントのように、無感情な機械音声で返答してきた。くっ…、なんかこのやりとりが既視感を感じるな…。


「では………。

うう…、うう……。

自己紹介はしたくないけど、仕方がないからしますね…。

ぐすん…」


「そこまで涙をためて、嫌そうにする自己紹介は初めてだな…」


「私は、世界救済局 勇者推進部 女神課に所属している、レリーン・イバン・アルヴェール、です。」


「なんだ、その局とか部とか課は!

役所かよ!」


一瞬、元の世界に戻ったかのような錯覚に陥るほど、見覚えのある組織体系になっているな…。


「名前がちょっと長いよな、なんて呼べばいい?」


「レイアと呼んでちょうだい」


「お、おう、それぞれの頭文字で呼ぶのが普通なのか…?

変わっているな。

んじゃ、レイア、よろしくな。」


「うっ…」


「ど、どうした?」


レイアの顔が急に歪み、苦しそうに息を呑んだ。

何か体調が悪くなったのだろうか?

レイアは息を荒げながら、苦しそうに言葉を絞り出した。


「その顔から、私の名前が発せられるのって、

なんか、心が苦しくなるのね…」


「悪かったな!」


くそっ、少しでも心配した俺がバカだったな!


「さて、では、早速、魔王を討伐しにいきましょう」


「ああ、そうだな、世界を救う、つまり魔王を倒すってことだったな…。

ちなみに、レイア、お前、強いの?」


「そうですね、実際にお見せした方が早いですかね?」

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