【3話】試練を乗り越えチートスキルを授かる

女神はこれまでになく、深く真剣な眼差しで語りかけてきた。


「勇者リュートよ、あなたには、この世界を救ってほしいのです。

見た目的には本望ではありませんが…」


「さっきから、失礼だな…!」


最後の余計な一言さえなければ、何だか良さげな雰囲気に感じられるのに、完全に雰囲気が台無しだ…。それにしても、俺みたいな奴が勇者だなんて言われてもな…。その思いが、無意識のうちに口をついて出てしまった。


「だいたい、この世界を救うたって、俺はしがないサラリーマンだぞ」


「大丈夫です、勇者にはチートスキルを授けることができます。

見た目的には与えたくありませんが…」


「おい!しつこいぞ!

んで、そのチートスキルってどんな力なんだ?」


「それは、そのうち分かります」


「え、なにそれ?

最初から教えてくれればいいじゃん」


「教えてあげたいのはやまやまなんですが、私には分からないので…。

なので、そのうち分かります…、よ…、き、きっと…」


女神は突然表情を一変させ、冷や汗をダラダラと流し始めた。


「なんだそりゃ!

さっき、世界の調和を保っている、みたいなこと言ってたから、なんでも知っているんだろう?」


「あれは、そう言わないといけない決まりなのっ!

私も所詮、ただの中間管理職なのよっ!」


「うお! 逆ギレかよ!」


「いろいろあるんですよ、異世界にも…」


「なんだそりゃ、夢がないな、異世界は…」


なんだよ、女神って言ったって、思ってたほど大した権限はなさそうだな…。もしかして、ただのオペレーターか? それにしても、本部だの中間管理職だのって話、俺のいた世界と何も変わらないじゃないか…。


「まぁ、いっか…。

じゃあ、早速チートスキルをくれよ」


「はい…

……………

嫌です…」


「は?」


「あ、失礼しました…、つい本音が…」


「おい!」


「では、チートスキルを与え………

……………

……………

……………

ません」


「おい!

いい加減にしろ!」


「ふふふ、じょ、冗談ですよ…」


「では、チートスキルを………

……………

……………

……………

……………

……………

すぅぅ…

……………

うう…、うう…、ぐすん…」


「涙が出るほどイヤなのかよ…。

ホント、ひどい話だな…」


チートスキルを受け取る資格があるにもかかわらず、女神は悔し涙をボロボロと流しながら、自分の思いと激しい葛藤の末、ようやくそのスキルを授けてくれたらしい。

って、なんなんだ、この女神、最後の最後までなんて失礼なだな…。なんか…、俺も涙が溢れてきたぞ…。




**********




「これで良かったのでしょうか?」


先ほどの失礼な女神と、年配の男性の会話。

どうやら、その年配の男性は女神の上司にあたる人物らしい。


「うむ、時間がかかってしまったが、ようやくリュート本人を転生できたのう。

そして、お前、見た目でチートスキルをケチるな…」


「ははは…

でも、私、ものすごく頑張ったんですよ!

自分の気持ちに打ち勝ってちゃんとスキルを授けたんですから!

でも、あれ以来、ずっと涙が止まらないんです…」


「お主の見た目にこだわる性格は、なんとかならんかのう…」


「それで勇者リュートは世界を救ってくれるでしょうか?」


「そうじゃの、この世界の未来は彼にかかっている。

サポートを頼むぞ」


「分かりました

それでは、このまま彼の動向を追っていきます

見た目的には追いたくない気持ちでいっぱいですが…」


「こら!」

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