第11話 洋服屋
海の上から新しい陸地へと足を踏み出す。
久しぶりの地面の感触だ。とても懐かしい感じがする。それに、とても大きな街だ。立派な都市部として繁栄しているのだろう。
『海洋都市マルタ』か。紆余曲折色々あったがようやく辿り着いた。グリム団長が遥か東の地に向かえといった。その言葉通り向かった結果ここにたどり着いたが、本当にこの場所に私たちが求めている情報屋がいるのだろうか。リゼットはそんな疑念を持ちつつも、到着した喜びを噛み締め。街の大通りを歩いていた。
「遂に、着きましたね」
「・・・あぁ」
着いた街を歩いていると、そこは様々なお店が並んでいる。リゼットは新しい街の光景が新鮮に映るのか。あちこちに目を輝かせる。街の中心からいい匂いが通ってくる。この街の名物はどういったものがあるだろうか。折角なら武器・防具も見てみたい。自分のサイズにフィットする耐久値の高めな軽装備の上物等々があれば、購入を検討したいところである。
また。視点を変えると、そこには古本屋。本を買って読み耽るのも悪くない。一向の余地ありだ。
だが。
———今最優先にすべきは。旅の軍資金を増やす事。
カジノ都市と言われるこの街の博打に興じてみるのも一つの手だろう。あのネオンに光り輝く場所に赴いてみるのもまた一興。
そんな風に、ふらふらと何処かに彷徨ってしきそうな雰囲気をみせるリゼットを見て。
アルトはため息を吐きつつ、彼女が迷子にならない様誘導する様に、肩をぐいっと抱き寄せた。
「———先に宿屋を探すぞ」
(そうでした。まず宿屋を探さなくては)
その後。適当に歩いていたら偶然見つけた、少し古めの宿に停泊することに決めた。
これからの事を考えて、少しでも節約したいが為の資金活用という奴だ。リゼットカウンターで受付を済ませる。アルトは先に自分の部屋に荷物を置きに行った。
今回は相部屋ではなく、きちんと2部屋予約した。なにかあった時の為に部屋は隣同士で取っておいた、これで一先ず安心だ。プライベートはお互いにあった方が良いだろう。
その後は。
自分の部屋に荷物を下ろし、人段落ついた後アルトさんの部屋に集合してこれからの方針をたてていくことにした。
建てたプランとしては、一先ず役割分担をし、バラバラに分かれて探索を行う方向で話は進んだ。お互いに行きたい場所も異なる。二人で一緒に行動するより、色々な範囲を探索出来るし、街の全貌を把握する事で少しずつ探索範囲を絞っていける。
街を闇雲に探索するよりかは建設的な作戦だと思う。
「さて、何処から回りましょうかね」
「―好きにしろ。俺はお前じゃ探れない場所を探る」
(・・・私が探索できない場所、ですか。となると、酒場とか闇市といった治安が悪い場所ですかね)
「大人の世界だ、お前が入れる場所じゃねぇよ」
「そうですか・・・」
これからどうするか。
今残った資金をどの様にやりくりしていくか。所持金が残り少ない、このまま宿代だけで資金が喰われていく現状は早めに打破したい所だ、ここから帰りのことを考えると資金が圧倒的に足りない。この街で私ができる仕事を探すべきか・・・、最悪カジノで軍資金を増やすことも視野角入れつつ。今夜の夜にひと稼ぎに行かないか。後で相談してみよう。
———アルトさん、博打とか結構好きそうだし。
「忘れてました。それじゃあ、お金渡しときますね」
「おう。
———じゃあな」
「・・・あ、あっという間に行ってしまった・・・」
手から硬化を光の速さで奪い取ってそのまま持ち去る芸当。その芸当はまるで盗賊のよう。
一応味方ですよね私たち。まぁいいですけど。
よし。切り替えて私も街の探索にいこう。
◇◇◇◇
道をふらふらとあてもなく彷徨っていたリゼットは、赤い街頭で『みたらし』と書かれたお店を見つけた。ここなら、ゆっくりとした時間を過ごせそうだ。
(違いますよ、甘い物に惹かれたわけではありませんからね。決して)
誰に宛てたわけでもなく、ブツブツと1人で呟きつつ。その匂いに釣られて吸い込まれるようにこのお店に入る。話を聞くと、2階のテラス席が開いていた様なので、席に座って街を一望しながら食べることに決めた。良い景色を見ながら食べる甘味というのは、また格別においしいのである。階段を上がってくる音とともに、お店のおばあちゃんが持って来てくれたメニュー表をざっと眺めて。興味を引かれたみたらし団子と温かいお茶を注文することに。注文を終え、イスに腰を落ち着かせて、一息つく。
(あっ。きな粉餅食べてる、美味しいそう)
欲望につられて、追加注文である。
あたりを眺めつつ。ぼーっとした時間を過ごしていると、頼んだみたらし団子と、つぎたてで湯気のたったあつあつの湯呑みがトレイに乗せられて運ばれてきた。
「ごゆっくりどうぞ。」
「・・・・・これを待っていました」
そっと置かれたお皿の上には、お待ちかね。秘伝の醤油ダレがたっぷり。これでもかとかかった、もちもちの白い団子。
「ごくっ・・・」
待ち時間に、美味しそうな香りや。遠目から見る美味しそうに頬張る姿にたっぷり焦らされ、我慢できず一口頬張る。軽い感じの焼き目がついた生地は滑らかで、噛む度にモチモチとした弾力を感じる。何より、醤油と黒砂糖をベースで作った特製のタレ。これが甘すぎずほろ苦さがマッチしていて、団子の魅力を格段に引き上げている。香ばしい香りに包まれて。
「これは、堪らないですね」
熱々のお茶に、息をふーふーと吹きかけて少し冷まし、茶碗をゆっくりと傾けていきズズッとお茶を啜る。ほぅ。と思わずため息が漏れる。「やはり和菓子にはお茶がよく合う」リゼットが景色を眺め、癒されながらモキュモキュと夢中で団子を頬張る。
「んぐっ、うまうまです」
・・・ご馳走様。軽く空いていたお腹が甘味で満たされて、大変満足な時間だった。決してご飯巡りの旅ではない、綺麗に食べ終えた食器をお店の返却口へと戻しにいく。ご馳走様を伝えるついでに。
街の情報を仕入れるため店の人と軽く談笑を交える。
話を伺うに、なんでもこのお店は、創設してから100年程の老店舗らしい。あれだけ美味しい物を作っているのだから、長く人に愛されているのだろう。是非とも途絶える事次の世代にもこの味を受け継いでいってほしいものだ。
リゼットはついでにこの街の情報屋についても、何か知っていないか訪ねてみたのだが。どうも、そんな人物は聞いたこともないらしいとのことだった。とても不思議そうな表情をされていた。ダメか、でもおいしかったから満足だ。今度こそお会計を済ませてお店を後にしようとした。
———去り際に、リゼットは呼び止められ。
「———お嬢さん。服に汚れが付いているよ」
これは。急いで食べた時にタレが服についてしまったようだ。このまま街を出歩けば。1人恥をかくこと間違いなしだった。危ない危ない。次は古い書籍を購入しにいく予定だったのだが、予定変更して。
今から新しい服を買いに行こう。
▽
リゼットの訪れていたのは、女性専用の洋服店。
個人的な感想を言うのであれば、男性の服を着ていた方が気楽ではあるのだが、女性としての生き方を学ぶべきであると考え、今回はこちらのお店にお世話になろうと思った次第。
『クローズ・エフェクト』
それがこの洋服店の名前だ。
しかし、お店を前にリゼットは店内に入ることができないでいた。
「・・・ちょっと、腰が引けてきましたね」
辞めておくべきだろうか。突発的に女性専用の服屋を訪れたは良いが、ずっと入り口付近を右往左往している。このお店は、まだ自分が来るにはハードルが高すぎる気がする。
いざ。入ろうにも入りきれず。不審者と疑われないか不安になっていたのだが、そんな中で偶然。お客さんの対応をしていた。おしゃれな店員さんと偶然目が合う。
すると、その店員さんは新しい獲物を見つけたように瞳を輝かせながら、こちらに近づいてきた。
(・・・いやいや、気のせい、気のせいです)
今の私は空気で透明だ。誰にも認知されることのない、メタルスライム的存在なのだ。学生時代、たまたま廊下を歩いている時に久しぶりに誰かに話しかけられて嬉しくてはしゃいでいたら。「君、初めて見るね」と言われる程の存在感の無さ。
本当に今更だけど。人の傷つく事はしてはいけないって両親から習わなかったのだろうか。無意識に発せられた言葉の刃物はグサグサと心刺さる。因みに。その日の授業は頭に内容が入ってこず。しかもそのタイミングで先生から授業の問題を出されてしまい、当然リゼットに助けてくれる友達がいるはずもなく。答えを導き出せなかったリゼットはこっ酷く先生に怒られてしまった。リゼットは帰ってから一日中ずっと寝込んだのだった。
(・・・ぐすん。ぼっちで何がわるいんですか)
いけない、トラウマがフラッシュバックしている。
って何でこんな距離近づけてくるんですか辞めて欲しい。私には私なりのパーソナルスペースがあるのだ。今は、1人にしてくれないだろうか。私じゃありませんように私じゃありませんように私じゃありませんように私じゃありませんように・・・ッ。
目を瞑り震えながら、時が過ぎるのを待つ事をただ願う。
「ねぇ、貴方。大丈夫?」
「・・・え、」
かけられた声におずおずと、閉じていた目を開けてみると。女性店員さんが心配そうに見つめている。この様子をみると、どうやら親切心で声をかけてくれた見たい。
咄嗟に声が出せなかったので、どうにか身振り手振りで、伝えようと試みると。
「服、買いに来たの?」
「・・・あ、そうです」
微笑みを浮かべ、お姉さんが私の腕をギュッと握ると、入り口からお店の中に案内してくれた。
「お客さん、お店に来るのは初めてだよね?とりあえず。あっちに試着室があるから。ほら、あそこにカーテンが見える?」
店員さんが指を指さされた方に視線を向ける。
落ち着いた、ブラウン色の遮光カーテン。それはひらけられていて、鏡に映る自分の姿がチラリと映る。ガチガチに固まって緊張しているようだ。お店の雰囲気に圧倒されていると。色々と道具を用意してくるから、その中に入って待っていてと言われ。私は彼女のいう通りに、カーテンの中で待つことにした。
「お待たせー。準備できたよー。
まずは・・・着ているお洋服を脱いでもらえる?」
私が今まで愛用していた黒のパーカーに白Tシャツ。それを少しづつ脱いでいきおへその辺りからお腹、肩へと上に向かって徐々に素肌を露出していく。
動きやすさ重視の紺色のデニムパンツ。お気に入りだったそれも、スルスルと脱ぎ捨て。脱いだ物は畳んで籠の中に入れ込む。上半身裸で黒いスパッツ姿になって
お店の女性が興味ありげな様子でリゼットのお腹の腹筋を眺めていたと思ったら、おもむろに手のひらで撫で回し始めた。
「・・・お腹の筋肉、すごいね。それにお肌も綺麗。お手入れって何かしてる?」
「い、いえ。特に何も・・・」
「・・こ、このツヤ肌で・・・、うぅ…私の努力」
何故だか頭を抱えてため息をつき始めた。気づかないうちに、地雷を踏んでしまったのだろうか…。此処は穏便に済ますが吉。そう考え。よろしければ、後でスキンケアの方法を教えてください。とお願いしてみる。すると彼女はとても嬉しそうに頷き、返事をしてくれた。良かった。
「・・・じゃあ始めるね。できるだけ動かないでね」
大きな鏡の前で全身が映るように立ち、手を横に広げ
脇の下から両手を入れる。メジャーを背中側からゆっくりと前に戻し、背中が真っ直ぐ平行になるよう姿勢を正す。
胸の前で、メジャーが交差した位置でメモリを測りズレがないかをきちんと目視で確認をし。それから数値を記入していく。
好奇心とは裏腹に、秘密を知った事による気まずさが優っていた為。できるだけ見ないように目を瞑り自分の着たい服装のイメージをぼんやりと浮かべながら、寸法が終わる事を願った。無心になって考え事をしている間に、ちゃちゃっとウエストとヒップも同様に記録して。
全ての記録を記入し終え、無事に全てのサイズの確認が終了。
「はい、お疲れ様ー」
無事に寸法が終わったみたいだ。
目を開け、リゼットはお店の人に記録してもらった表を見せてもらう。
▽
『リゼット・リシュエル』 性別:女性
身長157cm 体重47kg
バスト :B84
ウエスト:W54
ヒップ :H79
▽
痩せこけていたあの頃からは一転して健康的な体型。筋肉質な体作りをしており体重は2年前の頃から順調に増加していた。バストは元々Aサイズだったのが気づいたらBまで膨れ上がり。この2年間で全体的に体が成長している。
「この感じなら、そろそろ『下着』をつけ始めた方がいいかもねー。」
「む、無理です…」
無理に決まっている。それに私は、この格好が気楽で気に入っていたのだ。だがお姉さんが言うにはこの時期になると。歩くたびに揺れが気に始め、服と胸が擦れて軽く違和感を感じ始めるらしい。綺麗なバストの形を保つ為にも、早めにブラジャーをつけ始める方がいいのだと言う。
「でも・・・ちょっと、まだ着るのは抵抗が…」
リゼットがうんうんと悶えながらどう返事を返そうか考えていたが、時既に遅く。気付けば、色々な種類の物を持ってきてくれていた。
よくよく考えてみれば、寸法は済ませたのだからお店の人としては商品をおすすめするのは当たり前の事。私はお客さんという立場でこの場所を訪れている。お店の人が善意で持ってきて頂いた物を、嫌だと突っぱね返すなどできるはずがなく。
———やはり手遅れなのである。
「・・・あぁ」
その事に気づいたリゼットは頭を完全にからっぽにし、考える事を辞めた。専門家である彼女に全て任せる事にしたのであった。
◇◆◇
あれから、店員さんが運んできてくれたランジェリーを次から次へと、着けては着替え。着けては着替えを繰り返してバッタバッタと薙ぎ倒し。完全に着せ替え人形とされてしまい、憔悴しきったリゼット。結局4・5着分。お店の人が似合っていたと言っていたセットを買う事になった。スポブラやらショーツやら、それにちょっとセクシーな物まで。とても似合っているから是非!!と、押されに押されて私は断りきれないままそのすべてを買う羽目になったのだ。
「もう、殺してください………」
ひどい辱めを受けた。そうだ…。さっきのことは忘れて、服を選びに行こう。本当は、忘れることも切り替える事もできていないのだが。何とか切り替えた振りをして。店に飾られている服を一つ一つ眺めていく。
こうしてみると、ファッションという物に対して興味のなかった自分だが。最近は心境の変化からか、段々と興味を持つ様になった。どう考えても、あの時のメイド服が劇薬となり発症した気がしないでもないが・・・。その思考は闇の底へと封印す流事にしよう。
「・・・あ、これとかいいかも」
ぶらぶらと店の中を歩き回っていると、最初に目につけたのは。肩掛けで外套の「黒いケープマント」思い切って服を手に取りその場で試着してみる。
身長的に着られるか不安だったが、丈の長さもちょうどいい感じ。材質はかなり硬めで出来ていて、背中側は太もも辺りまで伸びているタイプのもの。この服はボタンによって開け閉めが可能になっていて。暑さと寒さに対応できる両刀型。その性能面もさることながら、リゼットが何よりも惹かれたのは。
・・・うわぁ、かっこいい……。
一目惚れ、その一言に尽きる。迷いは無い、この服は購入確定である。早速店員さんにこれと似合うコーデを揃えてほしいと頼み込んでみる事にした。あらかじめ、できるだけかっこいい感じでお願いします。と伝えておいたので、問題ないだろう。彼女は鼻息を荒くして、とても張り切った様子だ。
「私に、まっかせなさーい!!」
このお店に入店してから、早くも2時間以上は経過している。気づけば随分と長くなってしまったが、遂にここから解放されるのだ。
それではお待ちかねの、揃えてもらった服を順番に紹介してもらう為、着替えていきたいと思います。
「よいしょ・・・。出来ました。」
上着から
トップスはホワイトカラーのシンプルなブラウス。これは肌触りが素晴らしく着た感じ、とても着心地が良い。更にワンポイントとして、胸の上あたりにリボンブローチが付いている。
ボトムの部分には、サスペンダー型のホワイトカラーでできた"スカート"に黒タイツとスニーカー。因みに、このスカートは白のベルト付きのものとなっていて注文通り、露出は少なめにしてくれている上で更に動きやすい格好になっているりとても良い感じ。そして最後にこの、黒のリボン付きのツイルベレー帽を被れば、全身装備の完成。
「これが貴方に捧げる、わたし渾身のコーディネートよ!」
「おお・・・っ」
ここに来る前とは見違えた自分の姿に心底驚いている。シンプルだからこそ、それゆえに誤魔化しが効かない。これがプロの技。実際に着てみてクオリティーの高さがわかる。服の材質が肌に合う様にしっかりとフィットしていて感動すら覚える。
ほぼ2色のカラーだけで、自分の求めたオーダーに完璧を越える形で答えてくれた。
この人に任せてよかったと心の底から思う。
「・・・この、手をコートの隙間から出す感じが。堪りませんね」
「そこもポイントよ」
萌え袖の上位互角。・・・かっこいい。早速街を歩いて見せびらかして優越感に浸りましょう。全ての愚民どもに見せつけてやるのだ。最高の結果に思わずルンルン気分。お会計を済ませようとレジへ向かった。
色々とお世話をしてくれたお店のお姉さんが意味深な様子でレジにいたので会計を頼むと、何故かレジの上にドカンと置かれた寝る時のパジャマやラフな普段着などの服。
どうやら、わざわざ用意してくれていたみたい。
彼女はレジから身を乗り出し顔を近づけ私の耳元でこうつぶやいた。
「あのね、ちょっと話があるんだけど…。」
突然の事で少し驚くが、話を聞くに何と。この店は裏メニューで、服にステータスを付与することができると言う。彼女はどうも、この先の私の事が心配だから何か手伝わせて欲しいとの事。
よくわからず、一体何のことかと尋ねると。
体にできた軽い打撲のあざ、手にできた軽くゴツゴツとした豆
などから、私が何かしらの戦闘職を有している事を察して声をかけたらしい。
「言い訳はできないよ、実際に体付きを見たから分かるから。あっ、勘違いはしないで?止めようとしてる訳じゃない。ただ。貴方のお手伝いがしたいの。
心配はいらない、料金は弾む。久々に腕を奮って、私も色々と満足させてもらったから。だからエンチャント代は無料でやってあげる。これ、普通あり得ないことなんだよ?一つ付与してあげるだけで下手な家が一つ買えちゃうぐらいには莫大な料金が掛かるんだから。だから貴方だけ今回特別。
ーーでもその代わり、一つ条件があります。
「お願い!リゼットちゃんの髪の毛を一本ください!」
「・・・???」
「私、お薬を作るのも得意なのよー。といっても、簡単な魔法薬なんだけど、色々と実験してたら変身薬を作る方法を編み出しまして、効果は24時間程度と短いけど。でね、貴方みたいな可愛い子に変身して1人でいろんなお着替えタイムを満喫したいなぁなんて。 あ、そうそう。コスプレみたいなものだよ」
「やっぱり、どうしても憧れが…」
若い子に成り代わって1日を過ごしてみるの。あの頃に戻りたいって気持ちが溢れて止まらない。お願い!悪さはしないから、
このお店からは絶対に出ないからッ、ほら書面で契約しますッ。ただ1人で楽しむだけっ。
「だから、お願い!この通り!」
え、うーん・・・?よくわからない。
一日だけ私になった所で、何も得られることなどないと思うけど、けど。それは私の考えであり、人によって物事の捉え方は千差万別。彼女とってはそれが一等の宝くじ並みの価値がある場合があったりとか…?
「まぁ、そんなのでよければ」
「・・・やった!交渉成功だね、絶対約束だよっ?それでそれで、エンチャントは何がいいのかな・・・?」
とりあえず耐久性が上がれば、それで大丈夫。
あとはお任せしますと伝えて、今度こそお金の支払いを済ませる。服はまた次のタイミングで取りに来て欲しいらしいので、
店で用意してもらったラフな格好に着替えて、ようやく店を後にする。
「また次回、お洋服取りに来て頂戴!」
笑顔で見送られるままに店を出ると。気づけば外は日が暮れ始めていた。今日のところは一旦宿へと戻ろう。
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