第21話

ステージに立ち、ギターを肩にかける。

ドラムを背にして並んだマイクスタンド、その真ん中が俺の場所。



二弦を軽くはじきながら、何気なく後ろに目をやる。

…あれ?どうして、誰もいないんだ?



秀ちゃーん、どこだよ。ドラムがいなきゃ曲が始まんないじゃん。

ヒロ、何やってんだ?俺1人じゃギターしょぼ過ぎだろ?

チャマ、早く来い。ベース無しのバンドなんて聞いたことねぇぞ。






何度見ても、ステージにいるのは俺だけ。

満員のお客さんが、こっちに声を投げかけてくる。

舞台袖でスタッフが忙しく動き回っている。



俺、1人で歌うのか?

どうしてこんなことに?



俺は4人でしかステージに立ったことがないから、1人じゃどうすればいいかわからない。

弾き語り…出来ないこともないけど、それどころじゃない。



なんで俺だけなんだよ。

チャマは?ヒロは?秀ちゃんは?



なぁ、俺、何かしたっけ?

悪かったよ、何だかわかんねぇけど。

だから、謝るから、出てきてくれよ。



俺1人じゃ何も出来ない。

曲は作れたとしても、4人じゃないと歌えない。






それとも…まさか。

その可能性に突然思い当たり、戦慄が走る。

全身の肌が粟立つのを感じた。



もう俺と一緒に演奏したくなくなったってこと、か?

俺はあの3人から、見放されたのか…?






―――それが、今朝目をさます寸前に見ていた、哀しくて幸せな夢。

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