第2話

そこで目が覚めた。

今日の夢は、俺をこんな状況に追い込んだ原因の日、そのものだった。



ここ数ヶ月の間ずっと、俺は眠るたびに何かしら強烈な夢を見る。

良い感情も悪い感情も、懐かしさも何もかも含めて、かなりリアルに迫ってくる。



…おかげで、寝覚めがひどくキツい。

夢と現実の境界線がわからなくなってしまう。



でも、俺は今日も歌うんだ。

なぜって、見てくれるヤツらがいるから。

至極当たり前の現実へ向かうため、俺は壁に立てかけたギターを引き寄せる。








今の状況になったのは、半年ほど前のこと。

あの時飛行機みたいに見えた物体は、俺たちの影をはっきりと地面に焼き付けて、大地に降りてきた。


とんでもないデカさで、SF小説に出てくるUFOみたいな、でも円盤とかロケットの形はしていない、何とも形容しがたい、動く宮殿みたいな…


…いつか神話の挿絵で見た、ノアの方舟のような。





その方舟から出てきたのは、冗談でも何でもなく、“異星人”だった。





そして異星人たちは、“地球の浄化”を開始した。

完了するのに、1週間もかからなかった。


べつに核とか地獄の業火とか、そんな物騒なものは使われなかった。

ただ静かに、正体不明の病原菌をまいていったんだ。





ごくわずかな例外をのぞいて、地球を我が物顔で支配してきた人類は、死に絶えた。


動物や植物は、いつもどおり元気なのに。

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