第2話
「ふざけんじゃねぇぞ」
どうしてこんなことになったんだろう。
「おまえに俺らの何がわかるんだよ」
ヒロは、本気でそいつの胸ぐらをつかみあげて怒鳴っている。
「生まれてきたことを恨むならなぁ」
あぁ、
「ちゃんと生きてからにしろ!」
―――その通りだ。
同窓会だったはずだ。
いや、その会場なんだよここは。間違いなく。
大変な勢いで静まりかえってるけど。
今日は久々に地元にいる。
小学校の同窓会があるということで、俺とヒロと秀ちゃんの3人で帰ってきたんだ。
藤くんだけは別の小学校だったから、いないんだけどね。
ところが、開宴直前に秀ちゃんが「熱っぽい」とか言い出して、実家へ。いわゆるドタキャン。
たいして具合悪そうにも見えなかったけどなぁ。
仕方ないから、終わったら2人で秀ちゃんちに行くことにした。
でまぁ、そこで起こったのが、さっきの騒ぎで…
そのまま逃げるように会場を飛び出した帰り道、俺はヒロの背中に向けて声をかけた。
直『かっこよかったよ』
増「……“レム”の完コピだけど」
直『まあね』
増「じゃあかっこ悪いじゃん…」
直『いや?』
増「いーよ。なぐさめは」
直『おまえ、俺ら4人のプライドを完全に守ってくれただろうが』
増「―――」
直『ただしあそこで噛んでたら、バンド追放の可能性もあったかもね(笑)』
増「…あー」
直『だっろ~?』
増「確かに…」
直『追放っていうか、自ら辞めていただかないと♪』
増「うわ~、いや~、命拾いしたわ俺」
よし、笑った。大丈夫だ。
増川サンの言ったことは一つも間違ってない。
いきなり絡んできたあいつが悪いんだよ。
何も知らないくせに、藤くんを馬鹿にしたあいつが悪いんだ。
何も知らないくせに、俺たちを馬鹿にしたあいつが!
…俺らは、悪くない。
本当にそうだろうか。
いや、4人でやってきたこの年月は間違ってない。そうじゃない、俺が言いたいのはそんなことじゃない。
“俺”は、何だ?
なんだか自分がよくわからない。立っている場所が、急に脆いものに思えてきた。
怒鳴っていたヒロの姿はあんなに潔かったのに。
自分の信念を吐き出して、今はすっきりした顔をしてるのに。
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