第2話 妹ステラの判定の日

レベッカは家族四人が、馬車で出掛ける音を聞いていた。


今日は一つ年下の妹。ステラが教会で判定を受ける日だ。


去年の判定の日を境にレベッカの生活が大きく変わった。


レベッカは魔力がないと判定された。

父も、母もレベッカは娘でないと罵った。兄も自分はお前の兄ではないと冷たく言った。

優しかった両親に拒否されたレベッカは泣いてすがった。前のように抱っこして欲しかった。頭を撫でて欲しかった。優しい声で名前を呼んで欲しかった。


でもレベッカに与えられたのは侮蔑に満ちた視線と冷たい言葉だった。


「うるさい。おまえは娘ではない」それから侍女を呼んで

「部屋から出すな」と命令する声。


母も

「なによ、来ないで。部屋に閉じ込めておいて。これからステラとお茶なのよ。邪魔されたくないわ」とレベッカについている侍女、チトラに言った。


兄も同じだ。ステラと庭で遊んでいるのを見たレベッカが


「お兄様」と駆け寄ろうとした時


「来るな。兄と呼ぶな」と怒鳴りステラに向かって


「邪魔がはいった。部屋に戻ろう」と言うと手を引いて行ってしまった。


レベッカは毎朝、目が覚める度に怖い夢は終わった。みんな元の様に優しくなっていると希望を持ったがなにも変わらなかった。


使用人がレベッカを粗末に扱うようになるのに、さほど時間はかからなかった。


前はレベッカを褒めていた家庭教師、ゴネリルは、何も出来ない。与えた課題をこなさず遊んでばかりだと両親に訴えた。


それなのになにも教えてくれず、ゴネリルはチトラとお茶を飲みお菓子を食べておしゃべりをしていた。

お菓子も侍女のチトラが、レベッカ様が欲しがっていると嘘を言って厨房から貰って来ていた。


レベッカは家庭教師がなにも教えてくれないなら、自分で学ぼうと思った。


レベッカは家の図書室から持って来た本を読んだ。魔法を学びたかったが、その方面の書物を読むことは禁止された。


「魔力もないくせに笑わせないで」公爵夫人は嘲笑いながらそう言った。


『いつ、この家を追い出されるか、わからない。それなら少なくとも知識だけは身につけて置こう』レベッカはそう思って出来ることをしている。



馬車が戻って来た。使用人が賑やかになった。


『ステラはいい判定を貰ったのか』とレベッカは思った。


羨ましいと思った。これからも、ステラは両親からも兄からも大事にされるのだ。


捨てられた自分とは違うのだ。


とっくに枯れたと思っていた涙が、溢れてきた。


今日はいつもより大きな音が聞こえる。


じっと目をつむって音が聞こえなくなるのを待ったが、音は止まらない、それどころか、なにか言葉が混じりだした。


「ショウ・・・・・ウサ・・・・ショ・・・・・です。・・・・・サ・・・」


聞き取れず、意味がわからなかったが、声を懐かしいと感じた。


やがて音は消えて、静かになりほっとしたが、ちょっと寂しかった。



気を取り直したレベッカは時計を見て食堂に向かった。家族は既に食卓についていた。


ちらっとレベッカを見たが四人はお互いの会話に戻った。


お祝いの乾杯をしていたようだったが、レベッカの前にグラスはない。


じっと座って下を向いた。


父が珍しく

「いやぁ、さすがブルークリフ家のものだ。魔力量を自慢できるな。聖魔法もすぐに覚える」と燥いでいる。


母も優しく

「本当よ。ステラなら、すぐに上達するわよ」と微笑んでいる。


兄も

「羨ましいしな。僕は、魔力量が少ないから、聖魔法を覚えるのが大変だったのに・・・ほんと、ステラは自慢の妹だ」と言った。言葉の途中でちらっとレベッカに目をやったが、すぐにふんと顔を背けた。


ステラもチラっとレベッカを見て

「お兄様の魔力量も多いでしょ?」と言った。


執事がすっと前に出るとレベッカに向かって

「そちら様はお祝いの言葉をおっしゃらないのですか?」と言った。

「え?」とレベッカは顔を上げた。


四人がレベッカを見た。表情のないガラス玉のような四対の目がレベッカを見た。


その目が侮蔑の表情を浮かべた。


するとレベッカつきの侍女、チトラが進み出て

「わたくしは、ちゃんと皆様が帰って見えた時、すぐにお部屋に行ってステラ様の魔力量が多かったと伝えました。するとこちらはクッションをわたくしに投げつけました」と言った。


レベッカはえっと言うとチトラを見た。それから


「いえ、わたしはなにも聞いていません。チトラは部屋に来ませんでした」と言った。



「ひどいです。嘘をつくなんて」とチトラが言うと


公爵が


「お前を見ると不愉快だ。部屋に戻れ」と言って執事に向かって


「これの部屋に食事を持って行ってやれ」と言った。


「せっかくの祝いの席を台無しにするなんて」と公爵夫人が言うと


長男のリチャードがステラに向かって


「気にすることないからな」と優しく言った。


レベッカは目に涙を浮かべたが、黙って部屋を出て行った。


執事を始め使用人たちは、目配せし合ってにやりと笑った。



◇◇◇◇◇

この世界の魔力は、運動神経のようなものです。

運動神経がいい人はバスケも野球もゴルフも上手です。

そんな感じなので、魔力が多いと色々な種類の魔法を使えます。

そして、一番むずかしく価値があるのが、治癒魔法です。これを聖魔法と言う人や地域もあります。

その為、治癒魔法、聖魔法に厳密な区別はありません。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る