わたしの運命の相手は輪廻を超えて会いに来てくれた。忘れていたけど覚えていた。

朝山みどり

第1話 魔力判定の日

この国は子供が十二歳になると、教会で魔力量を判定して貰う。


一般的に身分が高い程魔力が多い。魔力が多いと使える魔法の種類が増えるし、威力もあがる。


魔力がないものはいない。最下層の貧民ですら最低限の魔力がある。


レベッカも両親、兄と一緒に馬車に乗って教会に行った。妹は家で留守番だ。

この日の為に母は王都で人気のマダム・ボーテ・メルバでドレスを作ってくれた。

レベッカは優しいレモン色のこのドレスが、大好きだ。

兄がレベッカの髪を撫でながら

「楽しみだね、ブルークリフのお姫様はどれくらい魔力があるかな?」と言うと父の公爵が、

「そこの心配はいらない。うちのお姫様は才能豊かだ。血筋の聖魔法なんてすぐに出来るようになる」と父が言った。


事実、レベッカは既に魔法が使える。誰に習ったわけでもないのに、舞い落ちる木の葉を止めたり、くたりとなった花を生き返らせたり出来た。


最近はお気に入りの縫いぐるみにダンスをさせたりしている。


しかし、レベッカはなにやら大きな音が聞こえて頭が痛くて続きが聞き取れなかった。

この二週間ばかりこの音がする。すぐに止むから気にしていなかったが、いつもより音が大きいし長い。

レベッカは家族が心配しないように必死に微笑みを浮かべ続けた。


「・・・着いたな」と父の声が急にはっきり聞こえた。


父は最初に降りると母に手を差し出した。ついで兄が、身軽に飛び降りた。


レベッカは父に抱っこされて馬車から降りた。


それから兄と手をつないで教会にはいった。


「大丈夫だよ。あそこで手をあの石版に当てるだけだよ」と兄に言われたレベッカは『小説みたい』と思った。

『小説ってメレアカにいた頃、流行っていたね。カサンドラのような異世界とか。え?何?カサンドラ!』

大きな音がひどくなった。



気がついたら、馬車に乗っていた。


「おまえは我が娘ではない」と父親が言っている。いや、罵っている。


「え?お父様・・・どうして、そんな」とレベッカは言ったが、途中で泣いた為最後まで言えなかった。


「父と呼ぶな!無能が」


「お母様。お父様が」と母に向かってレベッカは言った。そして返って来たのは


「母じゃない。お母様なんて言わないで・・・」


「お母様・・・」とレベッカは呻くように言った。


縋るような目線を向けられた兄が


「勿論、僕も兄じゃないよ」と言った。


召使いは娘でも妹でもなくなったレベッカを、粗末に扱うようになった。

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