落ちこぼれ王子に転生した魔術師は、二度目の人生でも魔術を極める 〜チートすぎる魔力と前世の知識で、世界最強に至る〜
鬱沢色素
第1話 落ちこぼれ王子に転生してしまった
「うーん、どうしたものか……」
鏡の前に映る自分の姿を見つめ、俺は頭を悩ませていた。
どうやら、俺は二千年後の世界に転生してしまったらしい。
前世の俺は魔術師だった。
幼い頃から魔術の真髄を追い求め、研究を続けた。
そのおかげで俺が打ち立てたいくつかの魔術理論は、世界の魔術に革命をもたらすことになった。
気付けば、俺は最強の名を欲しいままにした。
しかし、世界は残酷だった。
魔術師として名を馳せていく俺に、周囲は期待した。
辺境の村に巣食うドラゴンを倒してほしい。魔術協会のトップに立ってほしい。講師としてうちの大学に来てほしい──などなど。
周囲の声は煩わしかったが、俺はみんなの期待に応えるべく、さらに魔術の研究にのめり込んでいくことになった。
だが反面、華々しい結果を残し続ける俺に、嫉妬する者も多く現れた。
世界の権力者たちが俺に冤罪をかけ、処刑しようと目論んでいた。
他にやることが忙しく、気付いたら、もう弁明出来ないところまで俺は来てしまう。
とはいえ、俺が本気を出せば簡単に処刑を逃れることも出来た。
ゆえに焦る必要はなかったが……この時の俺は人間に、そして世界に絶望していた。
俺はただ、魔術を極めたかっただけなのだ。
それなのに何故……と。
悔しい思いはあったが、俺は処刑を受け入れることにした。
間違いなく処刑され、意識が失ったかと思ったら……別の人間に生まれ変わっていたということである。
「とにかく、今の状況を振り返ろう」
まず、俺は『リオ・オークルチア』という少年の体に転生してしまったらしい。
黒髪の可愛らしい顔立ち。
肌は真っ白で体の線も細く、一瞬病人だと危惧してしまったが、どうやら健康体ではあるらしい。
転生したと同時に、『リオ』の記憶も流れてきたので、現在の詳しい状況も分かった。
リオの現在の年齢は九歳。
そして彼は、オークルチア国の第八王子であった。
「オークルチア
二千年前、オークルチアはただの村に過ぎなかった。
しかしある日、オークルチアの地下に突如として大型の迷宮ダンジョンが出現。
ダンジョンには魔物がいて危険な場所でもあるが、素材や宝が眠っている資源でもある。
ダンジョンに眠る資源を求め、各地から冒険者も訪れ、彼らのための宿や飲食店も増えた。
迷宮ダンジョンにより、オークルチアは一気に栄えることになるのだが……まさかこの二千年で、大陸一の大国になっているとは予想外だ。
時の流れというのはすさまじい。
俺も前世では、ここ──オークルチアの迷宮ダンジョンに挑んだこともあるし、感慨深い気持ちになる。
そして、問題は俺が転生したリオという人物。
リオはオークルチアの第八王子として生まれることになるが、彼には秀でた才能が一つもなかった。
さらに王位継承から程遠いことから、周囲から軽んじられ、『落ちこぼれ王子』と呼ばれている。
「王子なのに、俺がこうして一人で落ち着いて考え事が出来ているのも、そのおかげだろうな」
仮に第一王子だったら、常に周囲に人がいるだろうから。
「果たして、どうしたものか……」
こういった王子の末路は、いつも悲惨なものである。
政争の駒として使われるなら、まだマシ。
俺が知っている話なら、王家の恥晒しとして、国外追放を告げられてしまった例もある。
秀でた力がない落ちこぼれ王子が、地位を剥奪され、平民と同じように生活していけるわけがない。
良くて食べるものがなく野垂れ死に、悪くて元王族という立場を利用され、むごたらしい破滅の道を送ることになる。
なんにせよ、訪れるのは悲惨な結末だ。
「だが──それについては問題ない」
悲惨な結末の原因が『無力』なら、力をつければいいだけじゃないか。
どんなことが起ころうとも、跳ね返せるだけの力を。
誰よりも強くなれば、仮に国外追放をされようとも、一人で生きていくことが出来る。
それに……。
「王位に関係がなく、誰からも期待されていない落ちこぼれ王子だっていうなら、周囲の目を気にする必要がない。これなら、自由に魔術の研究が出来るじゃないか!」
前世では、強くなりすぎたせいで他の
だけど、
好きな魔術を思う存分鍛えることが出来、魔術の真髄にまた一歩近付くことが出来る。
しかも二千年後となると、魔術の進歩しているだろう。
この二千年で、魔術はどう進化したのだろうか?
考えるだけでワクワクする。
決して立場がいいわけではない第八王子に転生してなお、今の俺はまだ見ぬ魔術たちに心躍らせていた。
「そうと決まれば、善は急げだ」
俺はその場を去り、今の自分がどれだけ魔術を使えるのか確かめてみることにした。
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