冴ゆる夜

萩津茜

冴ゆる夜

 夜陰まさしく、天霞む塔である。

 終夜、仄明らむのを感ず。

 見えざる塔の上。

 近寄る人影もないから、知られぬ塔。

 公園の中央、黒々とそびえる。

 見えざる塔の上。

 スプリンクラーのように振り撒くは氷の粒。

 雲より上を流れて輝く粒がそれ。

 ゆえに匂ふは雨模様。

 ゆえに吹くは雨模様。



 誰か居るのだろう、塔の上。

 更々見えざる塔の上。

 貴方は私より凍えている。

 唯地へ向け氷粒を撒く。

 貴方のお陰、夜陰霞み、端々冴ゆものだ。

 夜陰まさしく、天霞む塔である。

 見えざる貴方が恋しけれ。

 はたまた焦がれるのが怖く。

 夜と塔の上、二人っきり。

 夜と塔の上、二人っきり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冴ゆる夜 萩津茜 @h_akane255391

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ