1章
冷たい
第3話
「
「その方が、私の夫となる人ですか?」
「悪いな、亜衣」
「大丈夫ですよ」
申し訳なさそうな顔をするお父様に薄く微笑んで、その人の写真を受け取る。
第一印象は、優しそうな人、だった。黒い髪に少し垂れ目で二重の瞳。綺麗な白い肌に目が釘付けになる。
「これ、は…、本当にこの人なのですか?」
「ああ。それなりに良い男だろう。そこらの変な男より、よっぽどいいと思ってな」
「まあ、はい…」
予想以上に容姿の整ったその人に呆然として言葉を失った。まるで、ドラマの俳優みたい…。
「何度か会ったが、礼儀正しい子だった。今度、あっちの親と一緒に会合するから、そのつもりでいてくれ」
「わかりました」
頷いて、軽く頭を下げてからその部屋を出る。廊下に出てもう一度その写真に目を向けていると、「お嬢様」と声が聞こえてそちらを振り向いた。
「
私が小さい時からの世話係である彼女は、私の手元を見て眉を寄せる。
「それは…」
「この家の次期当主になる人よ」
「本当にその縁談を呑むんですか」
「ええ。私にはこの家を継ぐ能力はないから」
さらりと言って、古藤の隣を通り過ぎる。彼女はなにか言いたそうな視線で私を見ていて、その視線にうんざりした。
別に、恋人がいるわけでもないし、私はなんとも思っていないのに、周りはそうは思わないらしい。
私が政略結婚することを知って、最近では使用人達が哀れめいた視線を送ってくるようになった。
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