2.時間という名の薬

父の大きな背中の記憶が、思い出そうにも思い出せない。


父の愛に包まれ、母の愛に包まれ、二つの手に、二人の温もり感じたい。


父の顔覚えてないのに、あの日の私は、幼かったのに、なのにあの事だけ、そうあの日父と母が喧嘩した事だけ鮮明に覚えてるなんて…私は、その事が傷になり、そして寂しくなって、母の愛を必要以上に欲しがったかもしれない。だけど、母が求めてたのも優しさ、そう寂しい心を埋めてくれる優しさだった。


私は、一人にされた。


母は、何処かに出掛けたり、家に男を連れ込んで、夜になると母は女に戻った。狭い部屋で、隣から襖を伝う声…それを聞くのが嫌だった。淫らな感じがした。母は、私じゃなく男だったんだと幼心にも思った。


遠足や運動会、学校行事があるのに、家に戻らない母…


私は、一人にされた。


寂しい時、傍にいて欲しい時に…


私は、一人にされた。


傷ついた、寂しかった。


時間という名の薬が、いずれ私を癒やしてくれるのだろうか?


癒やされるまであとどのくらいの時間が、いや薬が私には必要なのだろうか?


癒されないまま、人生閉じるのだろうか?


父と母の二人の愛に包まれたい。二人の愛の中で私は子供に戻りたい


By 小さな貝がら


-完-

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