エンディング2 お兄ちゃん(おじさん)の妄想

 俺は伊藤正文。

 まだ経験の浅い新人警官だ。

 今日は強制わいせつで捕まった佐藤紫陽花という男の家宅捜索だ。

 こういうのは、初めてだから緊張するなー。

 親が金持ちだったんだっけ?

 俺は、一人暮らしのわりに豪華な一軒家の中を調べながら、先輩と佐藤の経歴や罪状を確認する。

「えーと、佐藤紫陽花、1985年生まれ、39歳。で、被害者が七瀬結衣ちゃん。まだ中学1年生なのにかわいそうだねー。」

 今回の事件は、佐藤紫陽花が、たまたま近くで、一人で遊んでいた中学1年生の結衣ちゃんに近づき、服を脱がそうとした。

 それを見た近所の住人が通報した。

 佐藤容疑者容疑を認めているが、動機を一向に話さないので、今回の家宅捜索が決定した。

 一階には、捨てられていないゴミ袋が玄関に置いてあったり、台所のシンクには大量のカップ麺のゴミが放置されていたりした。

 特に何もないので、二階に上がることにした。二階に行くと、大量の本が廊下に散らばっていた。

 どれもラノベや漫画、18禁のものだ。

 俺は、邪魔な本を足でどかしながら一番手前の扉を開けた。

 そこはきっと、佐藤の部屋だろう。

 ラノベや漫画、18禁の本、ゲーム、コントローラー、フィギュア、ポスター。

 所謂、引きこもりオタクの部屋だった。

 そこで、イカ臭い白いものが付いた机の上に、置いてあったパソコンに目が行った。

 こいつがこの部屋で、ひとりで何をしていたのか考えるだけで吐き気がする。

 俺はなんとなくEnterキーを押してみた。

 すると、そこには、なろうのサイトが開かれていた。

「こいつが書いた小説か…」

 先輩は他の部屋の捜査をしているので、ちょっと見てみることにした。


 一話…「お兄ちゃん!おはよう!元気?」眠気Maxで登校中の俺に話しかけたのは七瀬結衣。中学一年生。身長は150ちょっと。体重は...コンプレックスみたいで、聞いていない。だが一応体は華奢だ。兄妹というわけでもないが、小さいときによく遊んであげたから、お兄ちゃんと呼ばれるようになった。この子は相当顔が整っていて、運動も勉強もかなりできるため、言うまでも無く、モテモテだ。


 俺は何となく読み進めていった。

 部屋の中には、カチカチとマウスのクリックだけが鳴り響いている。


 三話…結衣は日本の貴族に転生したと。あいつにもう一度会いたい。これが恋なのかどうかは分からないがとにかく会えば分かることだ。この結希というやつを使って他の貴族に接触できるかもしれない。俺は結衣を探し出すことにした。


 こいつ、たまたま近くで遊んでいたからわいせつをしていたのではなく、ずっと結衣ちゃんの事を狙っていたのか。

 最初の投稿が…3年前!?まだ小学4年生だぞ!

 俺は、ばたんと強めにパソコンを閉じた。

「その部屋は終わったか?俺が探した方は何もなかった。」

「はい。こんな犯罪者の家、居るだけで吐き気がします。」

 俺の言葉を聞いた先輩はびっくりした顔で話す。

「お前の口から、そんな言葉が出るとは思わなかった」

 犯罪者の家から一刻も早く出たいのは当たり前だろ。

 俺は最低のクズ野郎、佐藤紫陽花の家を後にした。

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