結衣と学校

 4月6日

 学校は、辺りをきょろきょろしながら校舎へ向かう生徒たちであふれかえっていた。

 華月高校は今年、俺と結希(結衣)を含めて134人の一年生が入学する。

 出来たばかりの学校で、建物もきれいで、先生もしっかり授業をして、生徒の質問にも一個一個丁寧に答えてくれる。

 学費が高いから来るのは金持ちが多い。

 それに加えて首席で合格した生徒は好きな大学や会社に無条件で入ることができる。

 もちろん、入ったあと成績が悪ければ退学やクビになる。

 でも無条件というのは理想的だ。

 その学校に俺は今入ろうとしている。

 俺は校門の近くで結希を待っていた。

 一応これからは結希と呼ぶか。

 すると周りがざわざわし始めた。

 男子たちはみんな黙って何かを見ていて女子たちからは「可愛い」や、「あの子誰?」などの声が聞こえてくる。

 きっと美人な生徒が来たんだろうな。

 俺のいる角度からでは、誰かわからない。

 俺とその視線が向かっている先には壁があるからだ。

 まあ、このままここに突っ立っていれば、横を通るはずだ。

 そして、みんなの視線が少しずつ俺の方へ近づいてくる。

 みんなが見ていたのは結希だった。

 やっぱり結希はモテるんだな。

 まあ、俺もー、たまに女子からの目線を感じるしー、別に負けてはいないかな。

 前世よりもイケメンに生まれたしな。

 結希はあたりをきょろきょろ見回したあと、俺を見つけるとこっちに向かって歩いてきた。

「おはようございます。では、行きましょう?」

 なるほど、学校ではお嬢様をやるんだな。

「分かりましたお嬢様。」

 周りからはひそひそと話し声が聞こえてくる。

 男子からは、とても恐ろしい目線を感じるが…

「やっぱり彼氏いるんだね。」などが聞こえてくるが、迷惑だ。

 俺は結希のことが好きだが、それは恋愛感情ではない。

 単純に、友達として好きなだけだ。

 俺と結希はそのまま、校舎へ向かった。

 クラスは一緒だが席は真反対にある。

 結希はクラスに着いた瞬間クラスメイト達に囲まれた。

 男子はみんな結希の方を向いている。

 だが、一人だけ、そちらを向いていない人がいた。

 俺の隣の席の人だ。

「あなたと一緒に来ていた人よね?大人気だね。」

 話しかけてきた。

「まあ、顔はいいからな。」

「やっぱ彼女?」

「まさか。」

 なんか結希からの視線を感じる。


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