乙女ゲーの没落貴族に転生したので、原作&前世知識で無双してたらメインヒロイン達がメイド候補としてやってきた【挿絵有】
田中又雄
第1話 かませ犬の没落貴族に転生しました
「...」
目を開けると、すぐに違和感を覚える。
見知らぬ部屋...。
それも西洋風でかなり時代錯誤な古めかしい見た目の部屋だ。
それなりに広い一人部屋...。
とりあえず我が家ではないことを察し、頭を掻きながら昨日のことを思い出す。
「...あっ」
そうだ...そうだ!昨日、家でゴロゴロしていると、いきなり4人の黒づくめの男がやってきて、俺を誘拐して...それから...。
思い出そうとして、あまりの恐怖に気持ち悪くなる。
いったん、生唾を飲み込んで、思い出すことをやめる。
落ち着け...。
まずは...いったん状況を把握するべきだ。
そうして、大きな姿見を横目にここがどこかを把握するために部屋を出ようとしたところ、自分と思われる一瞬鏡に映った姿に違和感を覚える。
...見たことがある。
しかし、それは自分の姿ではなかった。
大きな目に、綺麗な鼻筋、整った容姿...。
髪は白髪で、肌は新雪のように真っ白だ。
序盤でいなくなるには無駄に高いスペックの男...。
急いで鏡のところに戻り、恐る恐る鏡を覗くと、そこに居たのは前世の斎藤優斗ではなく、やはり彼女が大好きだった乙女ゲーム【私を囲む5人のイケメン王子様】の序盤に登場するかませ犬の没落貴族の一人息子である『アイン・リーベルト』の姿だった..。
「...まじですか?」
そうつぶやくと、鏡の中の自分も同じ口の動きをする。
おいおいおい...ゲームの世界に転生って...そんなのマジであるのかよ。
いや、どちらかというと死後の世界より輪廻転生よりの考えではあったが...ゲームのキャラに転生は流石に考えていなかった。
現状を理解するべく、一旦近くにあった椅子に座ると、部屋をノックされる。
「...はい?」と、疑問符をつけながら返事をすると、扉を開けて入ってきたのは一人の無表情でかわいいメイド姿の女の子だった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091395506736
金髪ショートヘアで金色の目...。
やや慎ましいお胸に、あまり尊敬を感じない眼差し...。
うん...俺の性癖にはぴったりである。
「...珍しいですね。この時間に起きているなんて...。これからもそうしてくれると助かります。こんな無駄に広い城でメイドはたった一人しかいないんですから」
その言葉を聞いて確信する...。
なるほど...。やはりこれはあのゲームの世界だ。
メイドという世界観に没落貴族ゆえにメイドもまともに雇えない状況...。
「...奥様がつぶやいていましたよ。いよいよこの城も売らないといけないかもと。そうなればいよいよ、没落貴族どころかただの庶民になってしまいますね。私がアイン様とため口で話せる日もそう遠くはないかもですね」と、メイドとは思えない言葉を吐きながら、俺が寝ていたベットを整えている。
ったく、登場することもない没落貴族のメイドさえこのスペックとは...贅沢なゲームだ。
よし...おっけ...いやおっけーじゃないけど...状況は大まかに理解できた。
恐らく、このまま何もしなければ、きっと落ちていくだけの人生...。
まさに俺の前世もそんな感じだった。
だが、俺はこの世界の事情についてかなり詳しい。
彼女に無理やり何度もこのゲームをやらされているから、この先の展開についてはなんとなくわかっている。
だから、どういうムーブをすればいいか、逆にどういうムーブをしてはいけないかもわかっている。
更に、前世の知識も加えれば鬼に金棒...。
この家を没落貴族から名門貴族に変えることだってできるはずだ。
人生に答えなんてないというが、この世界において答えかはわからないが正解は存在するのだ。
よし...と、前向きになった気持ちのまま、俺は立ち上がり、辛辣メイドに向かってこう言った。
「まぁ、安心しな。今日俺は生まれ変わった。これからは毎日カニが食べられるくらいの名門貴族に戻してやるからよ」と、格好つける。
しかし、「...私、甲殻類アレルギーですけど。私に死ねといってるんですか?最低ですね。まぁ、期待はしていませんが頑張ってください」と、相変わらずの辛辣に返してくるのだった。
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