2話 はじめてのギルド
「ようこそ冒険者ギルドへ!ご用件は何でしょうか!?」
冒険者ギルドに来ました。
下調べはしていたけれど、実際に来るのは初めてだ。
本当は、色々実際にやってみてから軍を止めるつもりだったんだけど、突然だったからなぁ……。
俺は今、受付の前に立っている。
目の前には、美人で胸が大きい若い女性がいる。
窓口が5つあるけれど、内4つの受付担当が女性で顔が良くて胸も大きいから、そういうのも受付の基準になってそうだ。
残りの1つに立っているのは、筋肉ムッキムキのオッサン。
誰も近寄らない。
「冒険者になりたいんだけど、どうしたらいいのかわからないんだ」
「冒険者登録をご希望なんですね?では、登録手数料で銅貨5枚頂きます!」
「んん!?登録するのにお金かかるのか!?」
「もちろんです!ですが、もし今手持ちが無いのでしたら、後で報酬から天引きという事もできますよ?」
「えーと……じゃあそれで」
「畏まりました!」
最小の硬貨である銅貨1枚で大体パンが1個買える。
銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨10枚で金貨1枚と上がっていき、大金貨は無い。
ただ、金貨1000枚で白金貨1枚だったかな?
正直、よっぽどの金持ちじゃないと白金貨どころか金貨も使わないんじゃないだろうか?
一応よっぽどの金持ちだったはずの俺も、金貨は持ったことが無い。
悲しい。
話を戻すと、俺は今、パン5個分の金すらないと白状してしまったわけだ。
そんな醜態をさらしたのに、この受付の女性が苦笑いすらしなかったのは凄いと思う。
「改めまして、クルセリア冒険者ギルド王都本部へようこそ!私は、今回の受付を担当させて頂きますサリナと申します!冒険者登録をご希望という事で、まずは書類に必要事項を書き込んでいただきたいのですが、代筆は必要ですか?」
「いや、自分で書ける」
「畏まりました!ではこちらをお願いします!」
そう言って渡された書類には、名前、出身国名、年齢を書きこむ欄がある。
代筆が必要か聞かれたのは、識字率があまり高くない事と、銅貨5枚すら持っていない訓練着姿の俺に原因があるんだろう。
でも大丈夫!俺だって金は無いけど、文字くらい書けるし読める!パンすら買えないが!
ちょっと泣きそう。
思えば、この町の看板が文字じゃなくて絵ばかりなのは、文字読めない奴が多いからなんだな。
今更気がついたわ。
「これでいいか?」
「確認しますね!えーと、ジル・シュヴァリエさんで間違いないですね?」
「はい」
「出身国はここクルセリアで、年齢は18歳で間違いないですか?」
「大丈夫」
「ありがとうございます!では、最後にこの魔道具に手を触れてください!」
そう言って出されたのは、黒っぽい水晶球のようなものだ。
言われた通りに触れてみると、黒かった水晶球が白っぽくなり、またすぐ黒く戻った。
「これで登録完了です!」
「え?こんなんでいいの?」
「はい!今のでジルさんの身体情報が登録されたので、世界中の冒険者ギルドでジルさんの事を確認できるようになりました!これがジルさんの冒険者カードです!」
そう言って渡されたのは、俺の名前が書かれた鉄の板だった。
ついでに国名も書いてあるけど、これは出身国だろうか?
「冒険者カードは身分証にもなりますし、仕事の依頼を引き受ける時と、報酬を受け取る時にも必要なので無くさないで下さいね?再発行には5銅貨かかります!まずは鉄級からのスタートになりますので、早めに銅級に上がれるように頑張ってください!鉄級で受けられるクエストは、鉄級クエストと銅級クエストだけなのでご注意を!」
「銅級に上がるにはどうしたらいいんだ?」
「お仕事依頼であるクエストを3つ以上クリアするか、魔物を5頭以上討伐し、討伐部位を提出して頂ければ昇級できます!逆に、鉄級の場合は1週間仕事の達成が確認されない場合失効してしまうので、早めにお仕事してくださいね?」
「ふーん……」
となれば、仕事をするより魔物をパパっと倒しちゃう方が早いか?
でも、魔物倒してお金貰えるのかなぁ……。
倒し方ならわかるけど、解体して魔物素材にする方法が分からん……。
よし、それならプロに聞くか!
「サクっと魔物を倒してこようと思うんだけど、どうやったら魔物を倒してお金が貰えるのか教えてもらえるか?」
「そうですね……解体方法は魔物ごとに違うので一概には言えませんが、冒険者ギルドには必ず買取所があり、そこで手数料を支払えば解体まで行いますよ!あとは、魔物を倒すクエストも一緒に受けて、一緒にクリアすると無駄が無いと思います!」
「討伐するだけのクエストってのもあるのか」
「はい!魔物がいると危険ですから、素材は討伐を証明する部位のみ納品してもらえればいいから、とにかく倒してほしいという依頼も多いです!」
おー、流石は受付にいるだけはある。
俺みたいな素人にもわかりやすく、現実的な提案をしてくれる辺りがとても高評価だ。
あと、美人でおっぱい大きいし。
俺はギフトのおかげか、身体能力は高いし、魔法もガンガン使えるけれど、こういう応用を利かせるようなのって苦手なんだよなぁ……。
戦いの中でなら結構できるんだけど、ルールとかそう言うのはちょっと……。
「ですが……」
っと、ここまでの説明はにこやかにしてくれていたサリナさんだけど、いきなり申し訳なさそうな顔になった。
「ジルさんは、今武器もお持ちじゃないですよね?それだと、あまり魔物討伐はおすすめできないのですが……」
まあそうか。
今の俺の格好で魔物が闊歩する場所へ行ったら、周りからは自殺志願者だとしか思われないだろう。
流石の俺もそれはわかる。
でもな、俺は大丈夫!何故なら英雄だから!忘れられるけど!
「大丈夫。魔物なんて殴れば死ぬ」
「いえ、でも、失敗したら違約金として、報酬の半額を逆に支払わないといけないんですよ?」
「大丈夫」
「……そうですか。わかりました!では、こちらでお勧めのクエストを探しましょうか?」
「そうだな……うーん……じゃあお願いしようかな?できれば、敵が強くてもいいから、王都の近くで達成できるのだと嬉しい」
「畏まりました!そうなると、ギルドの常設クエストなど如何でしょう?」
「常設クエスト?」
サリナさんによると、ギルドでは街道の保全などを目的として、常に魔物の討伐を国から依頼されているらしい。
王都の周りだと、ブラウンボアやグレイウルフ、あとゴブリンなんかを、何でもいいから3頭狩ってきたら達成扱いになるらしい。
ボアとウルフの場合は右の牙、ゴブリンは右の耳が討伐証明部位なんだとか。
残りの部位は、冒険者側で好きにしたらいいらしい。
ただ、死体を放置するとそこに魔物が寄ってきてしまうため、持ち帰らないなら燃やさないといけないらしい。
「じゃあ指定の魔物を9頭狩ってくれば、仕事を3つクリアした上に魔獣の数も規定値越えてるから、すぐに銅級に上がれるんだな?」
「そう……ですね!でも、無理せず毎日コツコツ倒していく方が良いですよ?」
「わかった。じゃあそのクエストを受ける」
「畏まりました!お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
よし!コツコツと今日中に銅級になるぞ!
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