小屋のウサギ

Hogero

第1話

子供の頃、家の脇に小さな小屋がありました。

正面が金網張りになっていて、内側に日光が差し込む形状でした。

広さは、畳一枚分くらいだったと思います。


数羽のニワトリがいたことがありました。

一匹は雄鳥で、とても気性が荒く、飛びかかってくるので

私は恐ろしくて近づくことが出来ませんでした。


そのニワトリがいなくなり、しばらく空き家でしたが

あるとき、小屋の住人がウサギになりました。

大きさは猫程度、色は白だったのですが、

毛はキレイな状態でなく、薄汚れていました。


いつも小屋の端の方にジッとしていて、

目をつむって口を動かしていました。

あるとき、ふと触ってみたくなり、小屋の中に入りました。

後ろからそっと近づいて、なでてみると、猫ほどスベスベしていません。


逃げる様子がないので、抱きかかえてみます。

かなりの体重です。

がんばって持ち上げると、それまで動かなかったのに、

ギュンと足を伸ばして私の腹のあたりを蹴ったのです。


その勢いで私は転びそうになりました。

びっくりしました。

まさか、こんなに力があるとは思ってもみなかったのです。

こわくなったので、小屋を出て針金で入り口を閉めました。


何日くらい経ったか、様子を見に行くと、

ウサギはいませんでした。


当時、いなくなった理由は分かりませんでした。


こんなことを思い出したのは理由があります。

ジャンボうさぎ品評会の動画を見たのです。

めずらしいペットがいるものだ、と思いながら見ていると、


食用らしい。


ここで、パッと謎が解けました。


ーーーー


今は食料品店に行くと、肉や野菜がキレイに並んで売られています。

パック詰めで衛生的、そしてその本来の姿を想像することは難しくなっています。

これが良いことなのか、悪いことなのか、よく分かりませんけど、

日々、命の有り難さに感謝することを、忘れてはならないと思ったのです。


フードロスが問題になっていますが、その一因も、こんなところにあるかも知れません。

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