勇者パーティから追放された薬師見習い、実は最強のレベルアップグルメ製作者〜魔境で神話級生物を餌付けしてダンジョン攻略スローライフ送ります〜
西園寺わかば
第1話 クソ勇者だべ
-side アイザック-
「アイザック!お前を通報する!」
「そんな!」
「お前の作る薬なんて、もう必要ない。戦闘の役にも立たないし、飯もそこそこだ」
俺――アイザックは、突然の言葉に絶句したべ。勇者ラウルが俺を鋭く睨みつけ、その後ろでは聖女ルナと剣士ガルスが呆れた顔をしている。
「ちょっと待つべ!俺が一体何をしたって言うんだ!」
「お前の存在がもう無理なんだよ、アイザック!」
存在が無理?あまりに曖昧すぎる理由に頭が追いつかない。俺はこれまで薬師見習いとして魔物と戦い、料理を振る舞い、パーティを支えてきた。それなのに――。
「具体的に言えよ!俺のどこが無理なんだべ?」
「お前、空気読めないんだよ!」
ラウルは腕を組み、ため息混じりに言った。
「戦闘中だって、いちいち『これ飲んどけ』とか指示してきてウザいんだ。お前はオカンか!こっちは戦ってるんだから、そんな細かいこと言われたくないんだよ!」
「……指示って、それはお前らが少しでも有利に戦えるようにと思って――」
「言い訳すんな!いまだに薬師見習いとかどうなってるんだよ!?師匠にまだ認められてない分際で勇者パーティに入るなんて図々しいにもほどがあるほどがある!」
「それは……」
師匠が俺がどれだけ頑張っても、いつまで経ってもお前はまだ半人前だって言ってくるのであって、他の人たちはとっくに俺が一人前である事は認めてくれている。
「それに、料理だってさ、いっつも妙に凝っててムカつくんだよ!俺たちが求めてるのは、戦士らしい硬派な飯だっての!お前の作る料理はなんだ?ハーブだのソースだの、いちいち洒落てて調子に乗ってんじゃねえよ!」
なんだその言い分は?もはやなんでもいいんじゃねえか?――調子に乗ってる?いや、むしろ俺は彼らが疲れた身体でも食べやすいように工夫していたはずだ。
「お前がやってることなんて、どれもこれも自分を目立たせたいだけだろ!俺たちのパーティは、お前みたいな目立ちたがりの居場所じゃないんだよ!」
ラウルは吐き捨てるように言う。
「……本気で言ってるべ?」
俺は、唖然としながら問いかけた。
「本気だ!だから、お前はもうここにはいられない」
ラウルの後ろで、ルナが小さく笑う。
「正直、あんたと一緒にいるの疲れるのよね。ムカつくし、気を使うしさ」
ガルスも肩をすくめた。
「俺もだ。お前の存在、なんかイラつくんだよな」
俺は静かに立ち上がった。
「……分かった。お前らがそう思うなら、それでいいべ。俺とはここでお別れだべ」
「分かればいいんだよ分かれば」
「やっぱお前クソ勇者だべ」
「な、なな、なんだとー!」
「とっとと、ずらかるべ〜」
この勇者のことを考えても無意味だと察した俺は切り替えて、その場から去ったのだった。もうこのパーティに思い出すことはないべ〜♪没落しても同情の良しなしだべ〜♪
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
こうして、俺は勇者パーティを追放された。
そんな、俺の職業は「薬師見習い」。特に得意としているのは、「グルメ」に特化した薬味の調合だ。
例えば、ただのパンに「経験値獲得量を3倍にする」効果を付与したり、ステーキに「一時的に筋力を強化する」力を宿らせたりする。
ラウルたちが気づいていないだけで、これまで数々の戦いを支えたのは、俺が作った料理だったと思う。あいつらはクソざっこだべ。
だがまあ、追放されてしまったものは仕方ない。そういうわけで、俺は新天地を求めて旅に出た。
「疲れたからしばらく誰にも会いたくない」
そんなことを思った俺が行き着いた先は、「魔境」と呼ばれる未開の地。
俺の故郷の「羅巣断村」の隣に位置する羅巣断村に負けず劣らずのど田舎だ。
ここには、神話級のモンスターがひしめいていると噂に聞くが、俺にとってはむしろ好都合だ。
なぜなら――俺の料理は、ただの人間相手だけでなく、モンスターにも通じるのだから。こうして、俺の新たな生活が始まった。
最初に出会ったのは、空を飛ぶでっかいトカゲだった――。
「うおっ!オラあんなでけえトカゲ初めてみたべ!」
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