第5話 我らがリア充銃士団の誇る『三銃士』だ‼

 充の困惑は一瞬だった。


 DTは倒した。

 2.5次元空間の呪縛はまもなく崩れ去ろうとしている。

 それなのに、なぜ? いったい誰が?


 そんな諸々の疑惑、困惑を押しのけて、彼はすぐに臨戦態勢に入った。

 銃声の音源を探す。


 しかしそれは、探すまでもなかった。

 なぜなら、その回答を提示してくれる人物が、車に乗って駆けつけてくれたからである。


「フゥーーーッハッハッハァアアアアアア‼」


 思わず充がたじろいでしまうほどの高笑いとともに車から出てきたのは、リア充銃士団の団長である。


「見たか、『白きリア充』! お前が好き勝手できるのは今日までだ‼」


 充は首をかしげる。白きなんとかというのはもしかして自分のことか? と。


「我々はあらたな『リア銃システム』の適合者を見つけたのだ! これからはお前の力など必要ない‼」


 どうやら団長は、思い通りに動かない異端分子である自分のことを疎ましく思っているようだと、充はようやく納得した。

 この瞬間まで、充は銃士団のことなどあまり注視していなかったのである。その態度がまた、団長のハイテンションに油を注ぐ。


「その不遜な態度も改めてもらうぞ!」


 団長はバッと振り返り、その右手でケーティータワーの頂点を示した。


 そこに三つの影がある。

 そのうちの一人は、いまだ硝煙のくすぶるスナイパーライフルを持っていた。先ほどエロゲを撃ち抜いたのはこの人物である。


「紹介しよう! 我らがリア充銃士団の誇る――『三銃士』だ‼」


 団長が叫び、彼らの呼び名を充に紹介してくれる。


「『蒼月の狂想曲』――ルナティック・ブルー‼」


 夜空のように濃く青い、ドレスのような装甲に身を包み、三日月形の仮面をつけた女性である。

 その手に持つのは機関銃の形をしたリア銃。


「『潔癖な碧』――クリーン・グリーン‼」


 汚れを知らぬエメラルドグリーンに身を包んだポニーテールの、これまた女性である。その仮面のこめかみにはまさしくエメラルドがきらめいている。

 彼女がスナイパーライフルを所持する狙撃手である。


「『緋色の傷跡』――スカーレット・スカーレッド‼」


 鮮血のような赤い装甲に身を包む、長身の男性である。黄金の仮面に、その名の通り緋色の傷跡がついている。

 そして、その手にあるのは、ギラギラと不敵に輝く刃を備えた銃剣である。


「もうすぐ2.5次元空間は消え、もとの世界が戻ってくる。故に我々は退散する。今日はあいさつ代わりだ。次からお前の出番はないぞ、白きリア充!」


 団長はそう言って、再び車に乗り、姿を消した。


 わざわざ三銃士とやらを紹介しに来てくれたらしい。律儀な人である。そんな風に、充は思った。


 赤と青のいびつな世界が崩れ去り、リアルワールドが戻ってくると、いつの間にかタワー頂上の三銃士の姿も消えていた。


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