Cosmic Repeat Proverbs

Сара Котова

#01

OP. 魔女は科学を知っている

 地球という惑星は、とても複雑で奇妙だ。私たちの知る有機的な生命が存在できるハビタブルゾーンに、水という完璧な媒介が過激な流動を繰り返す中で、細胞が生まれ、植物が生まれ、動物が生まれ、人類が生まれ、文明が生まれ、そして今、私はタイプライターで文章を打っている。混沌とした世界から対称性を理解する〝機構〟が作られたのだから、それを〝奇跡〟と呼ぶのも無理はない。しかし、本当に・・・奇跡なのだろうか?

 46億年前に地球が生まれ、40億年前に生物が生まれ、5億年前から植物や動物は陸上へ進出した。そこからは指数関数的な増加で、700万年前に猿が二足で歩くようになり、150万年前に火を自在に操るようになり、知恵を手に入れた人類は10万年前から劇的な進化を遂げた、が・・・奇妙だ。1万年前に農業へ辿り着いたと云われている。それを基に線を描くと―――何故か、歪なグラフになってしまうのだ。

 その間は本当に何の発明もなかったのか? 古来から未確認飛行物体が世界各地で観測されるのは何故? 月面に着陸したアポロは司令塔との通信を遮断した際に何をした? コラ半島で行われた地球の地殻深部調査が中止になった本当の理由は? ・・・陰謀論に振り回されては、答えは見つからない。今の人類は、変わらず〝科学〟という最も優れた手段で文明を支えている。

 少しだけ話題を変えよう。皆は〝カウンターアース〟をご存じだろうか? 太陽を公転する地球の軌道上に存在すると仮定された、地球と同様の惑星である。常に太陽の裏側に隠れている存在なので長らく真偽は不明だったが、物理学を発達させた人類は方程式を用いて地球が唯一の惑星であることを証明した。・・・本当に存在しないのか? 本当に―――存在〝しなかった〟のか?

 今の人類が己を認知する前、太陽系には2つのハビタブル惑星が存在した。

 一つは、私たちが暮らす自然に富んだ惑星。月の満ち引きで生命が混ざり合い、多様な共存関係が構築された―――古の人類はここを《フォルタグルンドゥ》と呼んだ。

 一つは、海水と雨雲に包まれた群青の惑星。僅かな陸地に生命が芽生えることはなく、しかし人類が開拓した―――そこは《ティロディアクボ》と呼ばれていた。

 今の人類が知る由もない、壮大で複雑な歴史が存在する。2つの地球には、科学を扱う人類と魔法を持つ人類が存在した。環境に依存する言語を用いて高度な歴史を語り継ぐことは難しい。しかし、宇宙の様々な事象を共通の言葉で綴ることができる今、私はタイプライターで物語を記すことにした。これは、永久の命で空白の10万年を生き続けた私が発信できる、唯一の警告かもしれない。この歴史は―――嘗ての諺にも綴られている。

 【真実を知覚しない人類は、同じ歩みと過ちを繰り返す。】

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