第5話 幸せの形

――――――ある日の夜中。


「なんだか今回はえらく自由ね。」

「めんどくさい事は一切無し。」

「…大きくなっても甘えん坊さんでママは困るわ。」

「困るの?」

「冗談に決まってるでしょ。」


いつものように彼女の膝の上に頭を乗せて話していた。



「やっぱ無理だ。無理って言うか『理想と現実』みたいな。『辛子と砂糖』みたいな。」

「言いたいことはわかるから大丈夫よ。」


翠が声を出して笑う。


「……。」


頭を撫でる翠の手を取って頬に当てる。


「…ちょっとだけいい?」


翠に建前でお伺いを立てるが答えを聞く前に翠を抱き寄せた。


「あんたの(心臓)煩い。」

「お前にはいつもこう。」

「…そうね。確かに。あんたはいつもうるさい。」

「どういう意味だよ。」

「さぁ?」


「…してよ。」

「ほら、黙ってる気ないじゃない。」

「いっぱい吠えさせて…」

「可愛いわんこ。」


「あなたとならあたしは幸せ。」

「俺もそう…。」

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