永遠を超えて

海星

第1話 12月31日

大晦日、妻の実家。


今年は僕の荒療治という事で妻の実家で鍋をいただくことになった。


僕は軽い潔癖症。

複数人で同じ皿をつつけない。

回し飲みが出来ない。

でも唯一妻だけは初対面からそれが出来た。



「侑くん、あたしがあたしの箸でお皿に入れたら食べられる?どう?」


妻と妻の両親と四人で鍋を囲んでいた。


「…食べ…られる。」

「どんだけ嫌なの。でも今年はあたしの権限でこれしかないから。嫌なら帰って。」

「咲となら大丈夫!」


慌てて答えると、


「大丈夫。あたしの親だから。安心して。」


僕を包み込んで頭を撫でた。

傍から見ればおかしな光景。


でも咲は僕をちゃんと理解してくれていた。


僕は僕で咲を包み返して、


「…ごめん。こんなんで」と言うと、

「信じて。大丈夫だから。」と言ってくれた。


「時間かかっていいから。安心してうちの子になって」と義母。




なんとかこの日は咲のおかげで美味しく食べられた。




――――――食事が終わって咲の部屋へ。


僕はベットでずっと咲に後ろからくっついていた。


「…そろそろ戻る?」


咲に促されて

「うん。」

と答えた。



ご飯を終えて部屋に来たのは僕をクールダウンさせる為。

10分でも、20分でも、その時間を作った方が僕にとってはよかった。


「咲。」

「ん?」

「…お前の匂いする。」

「そりゃ、あたしの部屋だからね。」

「…服、ある?」

「あるけど多分もう匂いしないよ。暫くここの着てないし。」

「そっか…」

「…これ着る?」


咲が自身のパーカーのチャックを外し始めたのでその手を止めた。



「そこまでしなくていい。大丈夫だから。」

「本当に大丈夫?」

「大丈夫。だから脱がなくていい」

「わかった。」




――――――――――――その日の夜中。


咲の部屋のベランダで隠し持ってきた酒を飲んでいた。


「風邪ひくよ」


部屋の方から優しい声がした。


無言でその声の方へ戻りキスした。



「咲、、あったかい所入りたい…」

「上手いこと言わないで…」



僕らは年の初めから声を押し殺して愛を確認しあって、咲の最奥へマーキングした。



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