胡桃の鈴

菫野

胡桃の鈴

欠けたから取りかへられたマグカップばかりが沈むみづうみがある


じやすみんの夢の中では致死量のすべての嘘がただ白かつた


しんしんとつめたい部屋の爪みがき胡桃をひとつうつくしくする


湯の中のただむきあはくひかりをりとどめておける地図などなくて


無慈悲だなほんたうのことばかり言ふクレッシェンドの夕焼け匂ふ


とりどりの画集をうすく積みかさね思ふことあり幽霊船を


コピー・アンド・ペーストされてことばたちどこでも鳥のやうにゆけるわ


人魚だと気づかれたから別れたと云ふ子の耳のかたちがきれい


ことり屋が胡桃の鈴を鳴らすとき飛ばされていくたんぽぽの種


滅ぼした星のはなしを聞かせてよしづかな野原へとつづく道

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胡桃の鈴 菫野 @ayagonmail

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