俺のアイテムボックスが呪いの蔵だった件~魔力なし冒険者は古代の呪法で無双する~
川崎俊介
第1話 アイテムボックス覚醒
「レイド、もう少し速く歩けないのか? 道案内がおまえの仕事だろ?」
俺ことレイド・アジールは、同じパーティのアルドに急かされていた。だが、ダンジョン内にはトラップもたくさんあるし、何より高ランクの魔物の群れに遭遇しないよう注意しないといけない。
「安全第一だから、ちょっと我慢してくれ」
「ったく、この臆病者がよぉ、そんなに魔物が怖いか?」
「レイドは魔力なしの無能なんだから、仕方ないでしょ」
カミラもそんな風に詰ってくる。しかし、俺は今、案内役として命を預かる身だ。迂闊な行動はできない。
「あっ、あそこにアークウルフがいる! 素材は俺が頂くぜ!」
「待て、アルド。下手に攻撃したら群れが来る……」
俺の制止を聞かず、アルドは炎魔法を放ってアークウルフを焦がした。
だが、十、二十と、次々に上位個体の気配がしてくる。
「な、なんだよこれ……」
「マズい、ヤバい群れを引き寄せた。全力で逃げるぞ」
俺はそう声をかけるが、群れの奥にいる巨体の魔物が足を踏み鳴らすと、ダンジョンに地割れが走った。
俺は裂け目に足がはまってしまった。
「助けてくれ、アルド、カミラ!」
「わ、悪いなレイド。ここは囮になってくれ」
「な、何を!」
「これだけの群れからは逃げられない。奴らがお前を食ってる間に逃げるよ。この恩は忘れないからな!」
そう言って、アルドは俺の両腕の腱を切り裂いた。
「待ってくれ、俺を魔物の餌にするのか! 助けてくれ!」
俺の叫びなど聞こえていないかのように、アルドたちは背を向け走り去っていった。
冒険者同士の即席の絆など、こんなものか。俺は奴らに復讐することも、ここから逃げ出すことも叶わず死ぬのだろう。
思えば下らない人生だった。魔力なしと分かった途端に実家からは追放され、大したスキルも武術も身に付けられなかった。
何も成し遂げられないまま、ここで終わりなのか?
アイテムボックスのポーチに手が触れる。
もちろん、状況を打開できるようなものは入っていない。
だが、亡き母さんの施してくれた刺繍に手が触れた。母さんのところに行けるなら、もういいか。
【情けないことよ。エウロペの息子とは思えない】
重く響く唸り声がした。
「誰だ?」
【皆は魔人と、私を呼ぶ。どれ。この程度の魔物ども、蹴散らしてやろう】
すると、濃い闇のオーラがアイテムボックスから吹き出した。
次の瞬間目に入ったのは、魔物の死体の山だった。
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