夜職レポート
バーの主任は3人いて、他に通常スタッフと店長そして新人のボクの合わせて8人で店を回していた。
正直、店内の広さからしてスタッフが余るように感じたが、ここではボクは新人。余計なことは考えてはいけない。
初出勤であるボクは他スタッフに就きながら仕事を学ぶ形だった。
意外だったのは、勤務開始前に行われたミーティング(MTG)の内容だ。驚くほどしっかりしていて、「同伴」「未定」「売上」などの言葉が飛び交っていた。
これらの単語がキャバクラやホストと同じ意味合いで使われていることを、この時点で理解した。
営業中は「シャンパンコール」「飲みコール」「ラスソン」「同伴」といった夜職の十八番がぐるぐると飛び交う夜夜夜職。
その手際には目を見張るものがあった。
しかし、以前にバーテンダーとして働いていた自分にとっては違和感の連続だった。
ここでのドリンクのほとんどはキャスト用のお茶割りピッチャーで、お客様用のドリンクといっても出るのはリキュールやシロップを使ったジュース割り(たぶんカシオレ)くらいだった。
わかっているがこれが歌舞伎町の接客であり、ここではこれが正解なのだ。
頭ではそう理解しながらも、文化の違いに軽い衝撃を覚えた。
正直、「この程度でBARを名乗るなんて…」という感情が出てきたが、ここは歌舞伎町。一般的なBARがあるほうがおかしい。
逆に思考を転換して、この職のいいところを見つけるべきである。ただ貶すのはもったいない。
コールを覚えるのは大変だったけど、べつに嫌いじゃない。むしろ実際に働いてみて、毎日のようにこの仕事をこなす彼らを尊敬する。
「せっかくの仕事なんだ。この一日だけでも全力でやろう」。
そうトイレで決心した。
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