【短編】初デート in 街

kこう

待ち時間

やーやー皆さん、どうもどうも。私、神楽大輝というものです。

現在時刻7:00ジャスト、ただいま街の銅像、考える犬という謎の像のところで人を待っているところです。


「…って言っても集合の2時間前何だけどな。」


 ええ、そうです。なんと約束した集合時間はまさかの9時!

何を隠そう、あまりのも楽しみであほみたいに早く起きたのですから。


 …え?誰をそんな楽しみに待ってるのかって?

えーと…その、…天野由衣さんです。…タイトルでもう知ってるでしょう?

そうです!デートですよ!デート。付き合ってからの初デートです!

 

 ええ、先日ねえ、私ようやく勇気を出して告白したんですよ。

 そしたら、お互いに両思いで念願の恋人になれたんですよ。それで、そのあと週末に出かける約束して、それはもうウッキウキになりましたよ。

 だって一目ぼれ、初恋の人と付き合えたんですよ?しかも今回は何度も言うように初デート、そりゃあ、楽しみに決まってるじゃないですか。

 

 当然見た目にも気合い入れてきましたよ。少しでもおしゃれになるようにショートの髪型に寝癖がないのはもちろん、少しワックスもつけてるし。

 服だって、ジーパンに白い服を重ねてその上に黒いパーカーを着て少しでもおしゃれになるよう頑張ったんです。

 …ちなみに、私が起きたのは朝の4時です。準備に2時間かけてます。


…まあ、そんなわけでくそ早く来てしまったので今のうちにデートプランのおさらいだ。


 まず第一に、うちの彼女は食いしん坊だ。結構小柄な体系をしてるだが、あの見た目で馬鹿みたいに食う。

 弁当はいつも2個だし、前に友達と食べ放題に行ったときは、制限時間いっぱいいっぱい食べ続けていた。

 …だから、会計の時の店員さんの顔が忘れられない。あれは、人を見る目ではなかった。


 そんな、彼女とデートをするとなれば、当然今回のデートは食べ歩きツアーだ。

 商店街でいろんなものを食べながら、隠れた名物を見つける的な感じである。


「…ここでの注意点は俺が食べ過ぎて行動不可能にならないこと、」


 胃袋一般人が大食いと同じ量を食べたらいうまでもなく、途中でお陀仏だ

 だから、いかに適度に俺は食べていくのかが大切である。


第二に途中で少しでもいいからカップルらしいことをすること。

 せっかく付き合えて、デートをするんだ。できればカップルらしく手をつないだり、いろいろしたい。

 ただ、あいつはおっとりとした性格だからここら辺にうとい可能性がある。なので、この第二のプランはいかに俺が勇気を出すかということだ。


 まあ、あとは景色のいいところとかキーホルダーとかぬいぐるみを買いたいというぐらいなのでおおよその大きな目標はこの二つだ。

 当然俺は前日までに死ぬほどリサーチ済みで休みの日まで完璧に把握し、イメージトレーニングも完璧にこなしてきた。

 だから、問題ない…はずだ。たぶん、きっと、おそらく…。


「…あれ~?神楽、はやいね~。」


「ん?あ、天野さん!」


「おはよ~、」


 気が抜けるようなゆる~い声で俺に挨拶をしてきたのは、俺の待ち人であり恋人である天野由衣である。

 ふわふわの髪と小動物みたいな小さい体や顔が特徴的でかわいいという言葉がもっともよく似合う少女だ。


「おはよ~って、まだ集合の一時間前だよ?そんな早く来なくても。」


「…それ、神楽が言うの~?」


「…それはそうだな。反論の余地もねえわ。」


 俺、普通に二時間前に来てるし、よく考えたら突っ込める立場じゃねえわ。


「とはいえ、マイペースなお前にしてはやっぱ珍しよな。全然遅刻とかもあると思ってたのに。」


「…それ~、わかって言ってる~?」


「ん?なんの話?」


「…………神楽はなんで早く来たの~?」


「俺は普通に楽しみすぎて、早起きしちゃって。家にいてもそわそわするだけだから。集合場所に先に来ただけ。」


「…そういうの、ずるい。」


 彼女は俺に聞こえない声でそうぼそっとつぶやきそっぽを向いてしまった。


 …あれ?なんか、いきなり機嫌が悪そうだぞ?

 …私、いきなり何か間違えました?


や、やばい。これからデートなのに不機嫌スタートは大問題だ。な、何とかして機嫌を取らなければ…

 えーと、確かデートで機嫌を取りたいなら、と、とにかくほめるんだったか?


「あ、天野!」


「…ん?」


「き、今日のお前の服すごいかわいいな!白のワンピ―ス、それ、新しく買ったやつだろ?すごい似合ってる!!」


「…本当?」


 あ、食いついた!!よっし、このまま畳みかけろ、俺!!


「ああ、それに髪も3センチぐらい前髪切っただろ?いつもよりさっぱりしていていいと思うよ。それに、少しメイクもしてて、いつもよりよりきれいに見える!!」


「…………………………う、うん。」


「それに…」


「…神楽、」


「うん?」


「…やめて、お願いだから。」


「え、あ、うん。」


 こ、これは…やりすぎた。いつものおっとりとした声が嘘のようにマジトーン!! 

 そのうえ、さっきよりこっちを見てくれなくなってしまった!!

 なんか、顔も赤い気がするし、…もしかしてきもすぎて、怒ってるのか?


 た、確かにさっきのセリフはきもかった気もする!!うわー俺のバカ~!!

 やはりネットの知識なんて頼るんじゃなかった!!機嫌を直すどころか、怒らせてしまっているではないか!!


「あ、あの天野!!ご、ごめん!!なんか機嫌悪くしたよな!!」


「…別に、怒ってないけど~。そ~いうとこ、ほんと直した方がいいと思うよ~。」


「ああ、わかった!!以後気を付ける!!」


「…はぁ、これは~。わかってないやつだな~。」


 そう、神楽は生粋の天然たらしである。なので、しょっちゅうこういったことが起きる。しかし、天野の苦労を理解できるものはここにはいないのであった。


 


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