バリア☆マギア狂騒記~結界魔法を極めに極めたJCの話

イズラ

第1章 始動編

第1話 Barrier of Magia

「サキのシュートすごかったよねー」

「それなー。エリの頭の上スーッっと抜けてぇー。ねぇ!」

「えぇー? そぉー?」

 たった一人の親友・兎川とがわサキが笑っている。クラスの皆に囲まれながら。その才を称え上げられながら。

 更衣室の隅で着替える私の顔など、誰も見ていない。


「アリカー! 数学教えてよー!」

 クラスの誰も気に留めない私と、サキは関わってくれる。

「いやー、れんりつほーてーしき……?──とか全然分かんなくてさー……。いや、ほんっと助かるっ!」

 必要としてくれる。


 そんな彼女に少しだけ嫉妬している──私は、根暗で運動音痴の中学2年生女子、鮪岬まぐろみさきアリカ。


 今夜もベッドに潜り、真っ黒の天井を見つめる。明日のみじめな自分が、映像のように映っている気がした。

「……おやすみ」

 それでも、目を閉じる。


 ──不変不幸な人生が変わったのは、その日からだった。


     *


「…ど、どうしたの……!?」

 朝、お母さんと顔を合わせた途端言われた。

「えぇ……!?」

 突然のことで唖然としている私に、母は明らかにショックを受けた顔を向ける。

「…あ、あんた……、髪…染めたの……!?」

 母は、頭を傾けている私を洗面所まで押していった。

 そこで見た光景は、異様なものだった──。

「……ん!?」

 鏡に映っていたのは、鮮やかな青髪に朱色の瞳を持つ少女だった。

 自分の顔をペタペタと触る。──これは、確かに自分らしい。


「…えー……」

 なにせ一晩で色が変わったものだから、私は学校を休み、病院に行かされた。

 ──だが、皮膚科に入るや否や、それはそれは色とりどりの景色が広がっていた。

 待合室にいる若者たちの髪色は、派手なものばかりだった。

「…赤…緑…青…紫……。…あ、オレンジも……」

 なんと、確認できるだけでも10色以上の髪色が、ここに溢れている。

 この異常事態に、医師は「原因不明です」とだけ言い放ち、全員が様子見となっているらしい。もちろん、青髪の私も例外ではなかった。


 ──それから何日経っても状況は変わることはなく、結局、髪を黒に染めて登校することになった。私の家では。

「やっべーなーっ!」

 案の定、クラスの不良グループは男女問わず大歓喜。派手な色のまま登校し、気分が上がったのか授業中にまで騒ぎ出す始末だ。


 だが、街中を包みこんだらしい『若者の髪・瞳変色事件』によって起こった事象としては、案外大ごとにはならなかった──と、思われた。

 事件から1週間後までは──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る