第7話 お屋敷で… By扶久子
お屋敷につくと、私は
幸い、落雷があったのはあの神社だけだったらしく、このお屋敷には何の被害も無かったらしい。
後から聞いたが、あの神社にたまたまいた人達にも死人やけが人はいなかったとの事だった。
良かった。
…という事は、もしも亜里沙も、この平安?らしき時代?世界?に来ていたとしても生きてはいるはず!
少なくとも、亜里沙が怪我して動けなくなって建屋の下で埋まってるなんて事はなかったようで、それだけは本当に良かった。
先に戻ったお供の人が私の事を伝えてくれていたおかげか、私達が屋敷に着くと待ちかねていたかのように二人の女房(奥向きの女性使用人)がお出迎えしてくれた。
「大変な目にあわれましたね?さぁさ、奥へ…
「は、はい。お世話になります」と私はそれだけ答えた。
「何?母上が?起きておられるのか?気鬱が激しくこのところ伏せっておられる筈では…」という
「それが、先に戻ってきた
「ええもうすっかり身支度も整え、そちらの姫様に菓子まで用意させてお部屋でお持ちでございます」と、二人の女房は少し興奮気味に義鷹様に報告した。
「なんと!」「まぁ」と
そう言えば
人助けをした
いやいや、タイムスリップなんつうもんがあるんなら神様の御利益とかくらい普通にあってもいいよね?
私も現代に帰れますようにとか亜里沙に会えますようにって祈願しに行こう…なんて事を考えている間に私は奥の私の為にしつらえられたという部屋につれてこられた。
なんだか、長い廊下を通って随分と奥まったお部屋に案内されたようだ。
そこは日本間の十二畳ほどの広さで障子を開け放っているので続きの部屋も含めるとかなりの広さを感じた。
そしてそこには病み上がりとも思えないふくよかで優しそうな女性(芙蓉の方)が居て私を見るなりそれはそれは嬉しそうな?表情で声をかけてくれた。
「まぁまぁ、よくいらっしゃいました。難儀にあわれましたね?供の者ともはぐれたとか?遠い讃岐の国からこられて一人きりになって
うん… 優しい!
「
「ええ。無事に保護できて良かったです」
「えっ?人攫いですか?」私が驚いたようにそう言うと
「え?あ、あの?人攫いなんて出るのですか?京都は帝のおわす都ですよね?あんなに綺麗で賑やかな町なのに…」
「まぁ、余程大事にお育ちの姫君なのですね?世間の事に疎くていらっしゃる?はぐれたお供の者達もさぞかし姫君の事を心配している事でしょう。この京の町は帝のおひざ元ではありますが夜ともなれば魑魅魍魎、盗賊や人攫いなども徘徊すると言われておりますよ。ましてや貴女のように美しい姫君が一人でいたら昼間でも攫われかねませんよ」
「ええっ?」と私は身震いした。
私の知る京都は観光地で学生が修学旅行で普通に自由行動もできる町だった筈である。
改めてここが私の知る平成の京都ではない事を思い知らされ青くなった。
「そ、そんな…あ、あの私、はぐれた
そう、私が言うと母上様と
「「とんでもないっ!」」
「姫君、貴女は遠いところから旅してこられて無事だったのは
そう、
そもそも『
(ここは、敢えては言わないけどね…うん)
「えっ?そんな、そこまでご迷惑を…」
そんな私の言葉に今度はお優しいお母上様が私に声をかけた。
「まぁ!何をおっしゃいます。そんな気遣いは無用と申し上げましたでしょう?私もお話し相手が出来て嬉しいのですよ?人探しなどは
「ええ、是非そうなさって下さい。貴女はただ待っていれば宜しいのです」と
何?この神対応!
お母上様、芙蓉のお方様も超優しい!
私は最大の危機を脱した事をひしひしと感じた。
そして安心したら何だか涙腺が緩んできた。
とりあえず野宿とか攫われるという心配はなさそうなことに心から安心したのである。
「う!ううっ。ほ、本当にありがとうございます。わ…私、本当はとても不安だったのです…」と、とうとう泣きだしてしまった。
これ以上、ご迷惑をかけちゃ申し訳ないとか思うのに一度涙がこぼれたら後は止めどなく溢れ出し止まらなくなってしまった。
「ああっ姫君!」と
「だ、大丈夫です!姫君の事はこの
「「「まぁ」」」と、その様子を見たお母上様と女房たちが、口元に手をあて微笑ましそうに目を見張っていた事を涙で周りの見えなかった私は知らなかった。
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