つま先フェチのマッサージ師と、冷え性の高飛車令嬢

中田もな

プロローグ

「私、暇なの。あんたは、一体どんなやり方で、私を楽しませてくれるのかしら?」


 眩いばかりの金髪に、氷のように凛とした瞳。クラシックなロングドレスに身を包んだ彼女は、読んで字の如く、高貴なオーラを放っている。


 スカーレット・オブコニカ。この国を統べるオブコニカ国王の、愛しの愛しの第三女。「姫」という立場である以上、彼女の些細な一言が、国の行く末を左右することだってあるかもしれない。


「さぁ、さっさと始めなさい」


 私は思わず、息を呑む。陶磁器のように滑らかで、美しい御御足。でも、そのつま先に触れてみると、驚くほどに冷たい。まるで凍ってしまいそうだ。


 ……いや、「凍ってしまいそう」は言い過ぎかもしれない。とにかく、私は緊張していた。ただの平民である私が、ご令嬢の足に触れてるなど。それに、私みたいなただの一般人が、本当に彼女を満足させることができるのか、と。


 でも、もうここまで来たんだ。やれと言われたからには、やるしかない。私はガチガチになりながらもお辞儀をして、ゆっくりと息を吐いた。


「では、施術を始めます」


 これが、フットマッサージ師の私が、令嬢──もとい、お嬢様──の足を綺麗にするようになった日の、一番最初の出来事だった。

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