~喋る壁~『夢時代』より冒頭抜粋
天川裕司
~喋る壁~『夢時代』より冒頭抜粋
~喋る壁~
宙(そら)の空壁(かべ)には表情(かお)が映って、俺の言葉は身憶(みおく)を横切り、斬新(あらた)の信仰(めいろ)へ自己(おのれ)を咲かせる幻(ゆめ)の自主(あるじ)へその実(み)を宿らす…。無想の四つ葉が男・女(だんじょ)を識(し)るうち他(ひと)の白壁(かべ)には無重が仕上がり、それまで活き得て躾(しつ)けられ得た男子の片手は外界(そと)の震えに温(ぬく)みを求めて、身寒い明日(あした)を横目に囁く女性(おんな)の母性(はは)へとその身を失(け)した…。
純白(しろ)い気色を幻(ゆめ)の目下(ふもと)に置き遣る儘にて未知の感覚(いしき)を果命(かめい)に宿せる神秘(ふしぎ)の独気(オーラ)は身重を知り貫(ぬ)き、自然(しぜん)に象る愚行(おろか)の経過は主観(あるじ)に請われて不倖(ふこう)を観て居た。
*
僕は、矢張り、壁に喋り掛けて居る。でもその壁は、喋るのだ。
*
無用の用事を脳裏(あたま)へ振らせて俺の孤独を貯蓄して生く無応(むおう)の自然(あるじ)を傍観しながら、白亜(しろ)い途切(とぎ)りは〝無応〟の間(ま)に間(ま)に涼風(かぜ)を切るほど列伝(つたえ)を届かせ、自然(あるじ)の許容(なか)から嫌悪を導く孤動(こどう)の羽音(はおと)をつくづく聴いた。胸中(むね)の高鳴(なり)から共鳴(さけび)の程度が自然(あるじ)を越えて、自己(おのれ)の精神(こころ)を真心(こころ)に澄ませるオレンジ色した夕日を気取らせ、無言の許容(うち)から自然(じねん)を吃(ども)らす無言の胸苦(きょうく)は放蕩して逝き、遂には還らぬ街の一灯(あかり)を暗黙(やみ)へ葬り未信(みしん)を感じる。無意(むい)の清閑(しじま)に他(ひと)を宿せる空間(すきま)を知るのは都会の空気(くうき)に勝気を見据える幻(ゆめ)の論理に追随して活き、明日(あす)の果てから暗夜(よる)を照らせる無音の感覚(いしき)は男女(だんじょ)を仕留めて、事始(こと)の辛気を無造(むぞう)に射止める無理の限度(かぎり)は天に遠吠え、旧い形見を両手に据え保(も)つ勇気の過日(かじつ)に有利を観て居た…。
*
…喋って来るから、僕は相対(あいたい)するため仕方無く、あれやこれや思考を重ねて、壁の気に入る言葉(ないよう・ふんいき)を無意識の内に選んで、喋って居る。
*
無言の寵児に羽二重(ふたえ)が巻かれて〝併鏡(あわせかがみ)〟の無適(むてき)の気色に幻想(ゆめ)の生憶(きおく)が活き活きし始め、明日(あす)の孤独を刹那に牛耳る〝併せ・調子(テンポ)〟の器用の相(あい)では、言葉が通じぬ無様(むよう)の気迫が「試み」から退(の)く未用(みよう)に止められ、〝未信(みしん)〟の信者が神に追従(したが)う拙い寵児(こども)の気色を幻見(ゆめみ)て、〝器用〟を肴に本能(ちから)を寄らせる自然(あるじ)の生気を通感(つうかん)して居た。胸中(むね)の奥義(おく)から二性(にせい)を宿らす俗世(このよ)の昼夜が凡庸(ふつう)に明け暮れ、現世(このよ)の男女に活気が茂れる厚い陽気は基底(そこ)を看破(みやぶ)り、事始(こと)の気色に自己(おのれ)を募らす無意(むい)の本位は自重を蹴破り、昨日司(きのうづか)さの明日(あす)の形成(なり)には「酔い」を醒ませる未完(みじゅく)が発(た)った…。
*
…喋っている時、他人がそこに居る事は遠(とお)に分って居るが、頭が呆(ぼう)っとして、その他人を消したくなる衝動に駆られた訳だ。
*
文言(ことば)の体裁(かたち)に内実(なかみ)と活気が俺の幻想(ゆめ)から脚力(ちから)を根削(ねこそ)ぎ、明日(あす)の暗黙(やみ)には腕力(ちから)を示せる幻視(ゆめ)の脅威が落転(ころ)がり続けて、出来事(こと)の始めに機嫌を好くする産みの本能(ちから)は魅力を寄り添え、向うから来る独義(ドグマ)の勝手を他(ひと)に会わせず寝室(ねむろ)に帰(き)せた。回帰して生く「眠りの杜」には白体(からだ)が漂い密室から成る幻(ゆめ)の傘下は空気(もぬけ)の諸刃に追随して活き、俺の生憶(きおく)が文句(ことば)を介して陽(よう)を保(も)つのは、未信(みしん)の旋律(しらべ)が八頭(あたま)を擡げる苦労の末(すえ)から見得る形成(かたち)で、他(ひと)の周囲(まわり)で俺に寝そべる無刻(むこく)の深化は万物(なに)へ対すも頑な差(さ)を観た。事始(こと)への生憶(きおく)に堂々巡りの進理(しんり)が誘(さそ)われ「昨日の無刻(むこく)」に散歩が備わる意味の審議は彷徨して活き、隣人(ひと)を相(あい)する加減の限度は誰もに見られず端正(きれい)に失(き)えた。隣人(ひと)を愛する行為の総てが俺の背後を巧く蹴散らせ、居残る人には俺が見得ない盲者(もうじゃ)の禄(ろく)から欺瞞を興(おこ)させ、無性(むしょう)ついでに無頼を気取れる〝風切り坊主〟は無感(むかん)を突き付け、俺の還りに寝室(ねむろ)の盲目(ゆめ)では〝加減〟を識(し)らない奇妙を撓(しな)らせ、物憂い御託に始終を果して徒労の大口(くち)には、俗世(このよ)を配(あやつ)る無心(むしん)の動作が白体(からだ)を拡げて結託して居る。俺の独創(こごと)は明日(あす)の行方を早々按じて安気(やすき)を酔わせる寝室(ねむろ)の雰囲気(ムード)を暗気(あんき)に化けさせ始終を解(ほぐ)し、小言の脅威に未知を想わす無知の心機は身辺(あたり)を見廻し、安気(やすき)に醒ませる未覚(みかく)の真理(しんり)は不断に培う余力を識(し)った…。昨日と今日とで躰へ養う無量の活気は背後(あと)にも将来(さき)にも一体(からだ)を示さず、俺の白紙(こころ)に撓(たわ)る孤独は無心に休まる未来(みらい)を儲けて、白亜(しろ)い子守に未成(みせい)を撓(しな)らず脆弱(よわ)い独歩は雲母を先越(さきご)え、遠くの行方(かなた)へ暫く鈍(にぶ)れる幻想(ゆめ)の音頭を低吟して居た…。不屈の精神(こころ)を概(おお)きな視(め)に据え、朝な夕なに信徒(むれ)を脱(ぬ)け出て俺の孤独へ寄り添う聖者(もの)には、信徒(むれ)の内から微妙に仕上がる微温(ぬる)い常識(かたち)を寄り付けさえせず、独歩に憶えた他(ひと)の気持ちを大きく逃して素人威張りの稀有の瞳(め)をした無刻(むこく)の勇者は俺の孤独をひょいと取り上げ宙(てん)へと翳し、俺の周囲(まわり)へ一切寄らない常識張(かたちば)りした現人(やから)が活き着く。無言の早朝(あさ)には動かぬ自体(からだ)が白壁(かべ)を眼(め)にして揚々表れ、事始(ことのはじめ)に他(ひと)を気取れる滑稽(おかし)な目をした無法の信徒は「黄泉」の流行(ながれ)に無関を呈した丈夫な希薄を悠々携え、人煙(けむり)に巻かれた小指の傷には無知の生憶(きおく)が言語(ことば)を気忘(きわす)れ、幻(ゆめ)の進化に醒めを目指せる無機の疾走(はしり)は勇気を強めて無快(むかい)を発(たっ)する…。怜悧(つめ)たい眼(め)をした白衣(はくい)の描写に浮かべた模写には幻(ゆめ)の温度が充々(じゅうじゅう)醒め行く無悔(むかい)の仕種が競歩を発して、感覚(いしき)を保(も)たない現行(いま)を束ねた未刻(みこく)の分子は、俺の眼(め)を保(も)ち視界を遮る〝限(ぎり)の遊離(ゆうり)〟を愉しみ出した…。―――、現代人(ひと)の好意に無頼を感じて未憶(みおく)に興じる事始(こと)の概句(おおく)を未知の行方が詩吟に減じる破傷の限度(かぎり)に治療を設けて、〝併せ鏡〟の妥協に欲する無味の両腕(かいな)の海原(うなばら)等には、早朝(あさ)の空気(しとね)に空想(おもい)を過らす無為の辛気(しんき)に実名さえ保(も)つ…。事始(こと)の有無から雌雄に活(かっ)する未限(みげん)の進理(しんり)は、事始(こと)を追うのに理元(りげん)を養う行事(こと)の進化に憂いを想わせ、明日(あす)の目的(さかな)に心機に行(ぎょう)をさせ得る無意(むい)の論理は俗世(このよ)の露悪(ろあく)に中途を外され、無味(あじ)の無いのを冒頭(あたま)に逆行(かえ)せる「黄泉」への自慰から真心を返され、現代人(ひと)の温(ぬく)みが信徒を自滅(ほろ)ぼす未遂の冒(おか)しに虚無を観たのは、俗世(このよ)の規矩から肉体(からだ)を射止める無意(むい)の屍(かばね)の肉欲でもある。
不明の真理に論理を設けて幻(ゆめ)への淡路を揚々波(わた)れる自己(おのれ)の調子は元理(げんり)を培い、紺(あお)い盲理(もうり)が心身(からだ)を鈍(くも)らす無適(むてき)の病理は愚鈍を着せ替え、幻夢(ゆめ)の〝白亜(はくあ)〟が実利を透せる無名の「王者」を監督する内、一切合切拙い信理(しんり)は暗黙(やみ)の行方(かなた)へ葬られて居る…。一男(おとこ)の盲唖(もうあ)に肉欲が発(た)ち、一女(おんな)の信義(しんぎ)に肉体(からだ)が立つうち駆動の如くに自然(じねん)の所以(ありか)は暗黙(やみ)を透して悪態さえ吐き、暗夜(よる)の小路(みち)から自体(からだ)を彷徨(まよ)わす無双の虚弱は我(われ)に関せず、独創(こごと)の連呼は他(ひと)に対する連慕(れんぼ)に似せ生く自重を着飾り、明日(あす)の夜明けに俗世(このよ)を葬る無為の理性(はどめ)に懼れを識(し)った。偽善者達から淡白(しろ)く挙がれる孤独の相(そう)には、俗世(このよ)に蔓延る「信徒」の概(おお)くが自体(からだ)を通して欠伸して生く熱心(こころ)の丈夫を欲して居ながら、俗世(このよ)の概(おお)くに興味を呈(しめ)せる餓鬼の食盲(しょくし)は「海原(うみ)」を越え活き気力(ちから)を揮わせ、寝言の如くに調子を発狂(くる)わす身塵(みじん)の態(てい)した気丈の様子は、俺の背後(うしろ)で常に活き生く無情の徹尾を更に幻見(ゆめみ)た…。両親(おや)の目下(ふもと)で〝回帰〟を失(な)くせる無遊(むゆう)の弄(あそ)びに陥る我(われ)には常に努める五月蠅(あわ)い輪舞曲(ロンド)がこの地に落ち着く理想を訴え、明日(あす)の小路(みち)へと臨機に先立つ無用の自主(あるじ)の孤独の「巣(そう)」には、無闇に消せ得ぬ信理(しんり)の私運(はこび)が重層(じゅうそう)ながらに矛盾を貫き、明日(あす)と現行(いま)との無用の彼方へ未順(みじゅん)を採り上げ追走(ついそう)して居た…。
オレの生憶(きおく)が現行(ここ)まで来るのに信途(しんと)を得ながら、厚い嫉みを器用に切り出す「未刻(みこく)の分子」を「文士」と名付けて、自己(おのれ)の総身に諦観から成る厚い孤独は疾走(はしり)を終え活き、「未知への孤独」と「無想の憂慮」を事始(こと)に保(も)たせて傍観して居る。幻視(ゆめ)の概句(おおく)を俯瞰して行く事始(こと)の概(おお)くは末路を従え、明日(あす)に成り生く気性の概(おお)くは幻視(ゆめ)に翻(かえ)され主観(あるじ)を眼(め)にして、幻夢(ゆめ)の身辺(あたり)をするする徘徊(まよ)える俺の実体(からだ)は信徒(むれ)を厭(きら)って、「味気無いのが吟味(あじ)である」など不要の一汗(しずく)は首(こうべ)を流離い、〝併せ鏡〟の無精の一滴(しずく)は暗黙(やみ)を先駆け人間(ひと)を愛せる無名を心理を用途に携え、未来(みく)に尽(つ)きせぬ幻(ゆめ)の概(おお)くを白壁(かべ)に活かして保(たも)って在った。…
*
…その衝動は発作的にやって来た。望んでも無いのに、極自然に歩いて来た様(よう)だ。僕はその「衝動(いきもの)」に捕まり、他(ほか)の人と同じ様(よう)に又、歩き始めた。歩調を合せようとして、一度、失敗して居る。
*
無幻(むげん)の要局(かなめ)を無残に見知れる奮起に従い俺の「従順(すなお)」は〝向き〟に尽きせぬ幻視(ゆめ)の廊下を往復して在り、無言の空間(すきま)に理知を直せる無味の昇華は限界(かぎり)を観た儘、泡(あぶく)の勇気を都度に肥(こ)わせる無法の倫理は突(とつ)さえ識(し)れずに〝行方を晦ます丸い銀河〟を無応(むおう)に対せる余力(ちから)と決めた…。自己(おのれ)の倫理を常に流行(はや)らす「無法」に培う事始(こと)の〝銀河〟は、俺の身体(からだ)へ終(つい)ぞ還れぬ〝他(ひと)の瞳(め)をした紺(あお)い常盤〟に揚々幻見(ゆめみ)る丸味(まるみ)を帯び行く女体(にょたい)を二重(だぶ)らせ、現代人(ひと)の腕力(ちから)に脚力(ちから)が及ばぬ未来(みく)の眼(め)をした無想を吐いては、〝併せ鏡〟に無言を読み取る人間(ひと)の文言(ことば)の温味(あたたかみ)を識(し)る。生(せい)を活き貫(ぬ)く言葉(ことは)の記憶を頼りにしたまま自己(おのれ)の人陰(かげ)から無頼を取り持つ幻想(ゆめ)への清閑(しじま)は魅力に溢れて、〝天馬〟が織り成す宙(てん)と地からの「歩幅」を問う内、固陋に這い得る孤独の手数(かず)には人間(ひと)の温味(ぬくみ)がこそこそ剥げた。どれだけ飲んでも生気を呑めない無行(むぎょう)に片付く清閑(しじま)の上には〝併せ鏡〟の身欲(よく)への進歩が涼風(かぜ)を切りつつ空(くう)を切りつつ、無刻(むこく)に合せて審議を疑う児(こども)の視(め)を見た〝鍛冶屋〟が現れ、孤独の水面(みなも)を宙(ちゅう)へ寄らせる孤踏(ことう)の主宴(うたげ)は寵(ちょう)を識(し)らねど、図らずも成る幻(ゆめ)の文言(ことば)に自己(おのれ)の孤独を追従(ついしょう)させ得た。白体(からだ)の終着地(アジト)が寝室(ねむろ)に足り得る未刻(みこく)の小口(くち)には悪鬼が野晒(のさば)り、自己(おのれ)の躰に厚差(あつさ)を感じる孤独の断片(かけら)は宙(ちゅう)へ跳び活き、絶望から成る無刻(むこく)の像には純白(しろ)い希薄が横行して生き、明日(あす)の身許へ棚引く幻視(ゆめ)には孤独を想わす「何か」が在った。現代人(ひと)の記憶に言葉が廃れて宙(ちゅう)が降り立ち、無言と無音の自然(あるじ)が呈せる熱気の空間(すきま)は、俗世(このよ)の万物(もの)から歓迎され得る身欲(よく)の生気が漲り溢れて、経過(とき)の流行(ながれ)に身塵(みじん)を感じる事始(こと)の緑(ろく)から哀れを乞い出し、現代人(ひと)の陽気を生気に留(と)め得ぬ未知の身憶(みおく)は遊離して活き、現世(このよ)を射止める五感の主観(あるじ)は信徒(むれ)を外れて〝我先に…〟と寝た。白亜(しろ)い躰は心中(こころ)を混ぜ生く斬新(あらた)な未亡を感じて居ながら、明日(あす)の〝廓〟に身重(みおも)を預ける二手(ふたて)の哀れを無重に観て採り、自己(おのれ)の一身(からだ)の無頼を感じて神の恵みをその眼(め)に承け得る「現代人(ひと)を乖離(はな)れた固(たし)かな信義(しんぎ)」を、孤独の内(なか)にてしっかり保(も)ちつつ現世(このよ)の一路(いちろ)を波(わた)って行った。空(もぬけ)の終着地(アジト)は俺の躰をするりと抜け去り「孤独を意図する惨い殺(あや)め」を殊に相(あい)して〝無頼〟を感じ、明日(あす)の温味(ぬくみ)に意気を相(あい)する無為の屍(かばね)に衰理(すいり)を観たまま事始(こと)の哀れを逆手(さかて)に採り得る未刻(みこく)の〝長寿〟に相対して居た…。
*
…僕の後頭部は、僕が他人の前へ行ったり、緊張すると、望んでも無いのに、まるで暗示に掛けられたように呆(ぼう)っとして来て、くらくら眩暈を僕に与えて、僕を皆の目前(まえ)で失神・卒倒させようと企んで居る。
*
白壁(かべ)の表面(おもて)が俺に輝き俺の背後(うしろ)に人間(ひと)の嘲笑(わらい)が木霊す頃には、未知の終着地(アジト)が仄(ぼ)んやり掲げる孤高の夢路が大きく仕上がり、明日(あす)の孤独を端正(きれい)に映せる幻想(ゆめ)の弾みが美化され続けた。速い景色に紋様(もよう)を浮かべる人物(もの)の集落地(アジト)は荘厳ながらに神秘が奏でる無様(むよう)の終着地(アジト)は古都に咲き得る大樹を湿らせ、明日(あす)への独創(こごと)を自分に繋げる未来(みらい)の景色は疎らに失(き)え去り、昨日(きのう)の集落地(アジト)にほっそり割き得る未用(みよう)の終着地(アジト)を暗い空間(すきま)へ這わせて行った。白亜(はくあ)の人煙(けむり)が未踏(みとう)に佇む哀謝(あいしゃ)を窺い昨日の自己(おのれ)の体裁(かたち)を尋ねる魅了の旧巣(ふるす)を闊歩したなら、忘月忘日(ぼうげつぼうにち)、君主の盛(さか)りが俗世(このよ)に名高い人根(ひとね)の呼笛(あいず)を誠に呼び合い、古い独創(こごと)に連呼して生く日用(ひよう)の自活(かて)には他(ひと)が気取らぬ不審の主観(あるじ)が幻(まぼろし)など見た。現代人(ひと)の孤独が自由に生け捕る不要の諸刃は事始(こと)を呼び寄せ拙い間延びを紫陽(しよう)に突き出す一人(ひと)の独我(どくが)を噛んだからには、俺の寝言は未遂に片付く行為を読み取り、詠み取る果(さ)きから自然(あるじ)が覗ける未活(みかつ)の一途(いっと)を希望に保(も)った。俺の心身(からだ)を自在に取り巻く「不要」に徹する一人(ひとり)の清閑(しじま)は、明日(あす)への輪舞曲(ロンド)に自信を絡める〝浪速〟の文句(もんく)の気性を呼び付け、未来(さき)を脚色取(いろど)る連呼の春日(かすが)に自己(おのれ)の野望をしっとり置き去り、昨日まで観た人間(ひと)の〝連呼〟を「自由」に滅する脚力(いろ)の中央(さなか)に連想させた。俺の周囲(まわり)で精神(こころ)が蠢く一人(ひと)の臭気が手合いを見付けて一女(おんな)の肉体(からだ)に悪魔を見付ける事始(こと)の終止を微かに識(し)り貫(ぬ)き、〝併せ鏡〟で現世(このよ)を見て取る終止の哀れは凡庸(ふつう)を呼び込み、昨日の清閑(しじま)に自己(おのれ)を翻(かえ)せる幻想(ゆめ)の概句(おおく)の冷めた文言(ことば)は、漆黒(くろ)い側(そば)から脚色(いろ)を脱する無効の集成(シグマ)に陶酔して居た。白亜(しろ)い人煙(けむり)に当面渦巻く〝試み〟から成る無謀の調子は、幻想(ゆめ)の過程(さなか)を静かに独歩(ある)ける終(つい)の競歩に促進して活き、独義(ドグマ)の身重がその場を去り生く他(ひと)の主観(あるじ)が自滅する分、矢庭に掲げた生(せい)への勇気は孤独を蹴散らせ永久(とわ)へと失(き)えた。純白(しろ)い詩(うた)には自己(おのれ)の背後(うしろ)を上手(じょうず)に消し生く無想の八頭(おろち)が段々仕上がり、暗黙(やみ)の最中(さなか)に目立って気付ける夢想(ゆめ)の還りはどんどん遠退き、現代人(ひと)の生気に運好(うんよ)く仕上がる無機の活気は保守の身に立ち延命(いのち)を蹴散らし、明日(あす)の生(せい)への小路(みち)の上では虚無に巻かれた突飛が在った。漂白(しろ)い限度(かぎり)が煩悩(なやみ)を鈍(くも)らす未完(みじゅく)の独気(オーラ)を通感(つうかん)するのは暗黙(やみ)の間(あいだ)の自己(おのれ)を束ねる私闘の独気(オーラ)への安定から観て、幾つも幾つも曲(きょく)を脱する空気(しとね)伝いの柔軟でもある。律儀の瞳(め)をした無意(むい)の目的(さかな)は嗣業に在れども、永い春には自己(おのれ)を鈍(くも)らす生気を意図した脆味(よわみ)の身が在り、誰にも何にも傾(かしづ)かないまま器用に独歩(ある)ける幻想(ゆめ)の快無(オルガ)は、両脚(あし)を肴(さなか)に両手を延ばせる幻夢(ゆめ)の逆行(もどり)に通感して居た。純白(しろ)い稀有には自我(おのれ)を取り巻く純情(こころ)が成り立ち、荘厳足るまま幻夢(ゆめ)の自滅(ほろび)を縫合して生く盛(さか)りの両腕(かいな)を俯瞰しながら、稀有の気色に転倒(まろび)を観て居る俺の精神(こころ)の自活が在った。奇妙な瞳(め)をした紅(あか)い夕陽は日々を振り見て自体(おのれ)の闊歩を自由に呈する夜半(よわ)の孤独を俺に伝えて、俺の清閑(しじま)にぽつんと呼吸(いき)する延命(いのち)の独我(どくが)は真白差(しろさ)を気遣い、明日(あす)の懐(こころ)へ自信を観て生く自己(おのれ)の強靭差(つよさ)を通感して居る…
*
この事は、二〇一四年の一月九日から始まった。僕が自分の書いた文章を、ある程度集まった(予め知り得た)人数の前にて発表して居る時に突如現れ、「ここで、皆の目前(まえ)で横向きにでも倒れたら如何(どう)なるやろうな?」と言う疑問と共に僕を襲って来た。僕は、発表中だから口と口調と流れを止(と)める事は出来ず、また心を休める事も出来ずに発表し続け、冷汗、熱汗(ねっかん)、激しい(一瞬ずつの極度の)緊張を味わう事と成りながらも、何とか机と椅子とに倒れそうになる都度しがみ付いて堪え、皆の前で倒れないようにと強く努めた。
*
~喋る壁~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji
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