溝部ゆかり先生の最新刊エッセイ「不死鳥」を読みました。

Hugo Kirara3500

サイン会に行きました

 今日は楽しみにしていた溝部ゆかり先生の新刊エッセイ「『不死鳥 -灰になってからのこと-』発行記念サイン会」の日。皆さんの多くがスマホの上で電子書籍を買うのが当たり前になって久しく、紙を束ねた本がズラッと並んだ本棚を見ることできる書店というものが都心のターミナル駅近く以外からはなくなってしまいました。というわけで一年ぶりにその大手書店に入った。私が紙の本を買うのは一体何ヶ月ぶりだろう。


 私が本を買って列の最後尾にしばらく並んでからしばらくたった後、開始時間になってスラッとした背の高いショートカット姿の彼女がやってきた。

「あの人が溝部ゆかり先生……」

私が目を丸くしながらつぶやいている間に彼女は席に座った。そして彼女はスラスラと本にサインをしながら長蛇の列に並んだ読者たちをさばいていった。そんな彼女をらためてよく見ると後頭部からケーブルが伸びてその先は後ろの壁に刺さっている。そう、彼女はやはりアンドロイドだったのです。何らかの理由で機械の体を得た元人間なのでしょうか、あるいはそれとも。睡眠中だけでは充電時間が足りなかったのか、「食事」しながら次々に本にサインをしていくという普通の人間にはできない芸当をこなしていた。それはあまり表立っては言われることもないけど、一部のマニアックなファンの間では以前から噂されていたといいますか、もう公然の秘密でした。そして、背が高いのもバッテリーを体内に内蔵するための容積を確保するためですね。


 長い列が目の前から消えて私の番になって、直前に買った本と私の名前を書いた申込用紙を彼女に渡した。

渡田わたりだ結月花ゆつかさまですね。いつも楽しみにしていただいてありがとうございます。わたしの壮絶な人生を書いた本で、ソフトに書きましたが暴力描写があります。それでも投げ出さないでくれたらうれしいです」

私はサインを終えた彼女と固く握手したとき、涙が出そうになって胸が一杯になりました。それは気持ちだけかもしれませんが普通の人と何も変わりませんでした。


 帰宅した私は机に向かって早速その本を開いた。「帯に書いてある『壮絶な人生』とはどういう事だろう?」と思いながら。


(筆者注・次回以降は小説中エッセイになります。)


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