DOUBLE-BUDDY-STRELITZIA
秋乃楓
第1話 CONTACT
20XX年。これはそう遠くは無い未来の話。
身の回りの様々な物がどんどん便利な物へ進化して行った。携帯電話はいつの間にか板の様に薄くなり、テレビだって箱の様な物からモニターの様な形が今では主流となった。他にも様々な身の回りの物が新たな物へと進化、そして発展を繰り返して生活を豊かにして行く一方で[黒い影]の部分もまた大きく変貌し始めていた。
-犯罪-
これも時代に応じて形を変えて手口も巧妙な物へと変化しつつあった。法の目を掻い潜る者達による犯罪は横行し悲しい事故や事件が増えていくばかり。
国はこの事実に対し更なる重い刑罰の導入を視野に入れたが上手くは行かず、犯罪者達からすれば、単なる脅し程度のモノでしかなかったのだ。
そして苦肉の策として犯罪者達に対抗する為の新たなる制度を導入付ける事に決定した。
[国家治安維持制度]と呼ばれる物を正式に導入する事を議会で決めたのだ。
度重なる犯罪による死傷者の数が減らない事や
近年では技術発展に伴う人型兵器の犯罪も増え始めた事から決定されたそれは機密事項として扱われる事となり、この事を知っているのはごく一部の人間のみ。どういった物かは国民へは明確に説明こそされていないものの、これにより犯罪数は減少傾向にあった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
とあるアパートの一室。
目覚まし時計の音と共に1人の女性が目を覚まし、ベットから降りて立ち上がった。寝癖の付いた橙色のショートヘアに黄色い瞳、スタイルの良い身体付きと薄い桃色の寝間着姿。眠い目を擦りながら洗面所へ向かうとそこで洗顔し寝癖を直して行く。
彼女の名前は
大学を卒業し春から一人暮らしを始めたばかりで不慣れな所も多い、因みに歳は21。
「はぁあ…ねっむ。毎日思うけど朝が来るの早くない…?」
ブツブツと文句を言いながらリビングへ来ると朝食の支度を始める。上京する前は親と共に住んでいたが仕事の都合から彼女はファウダーと呼ばれる都市へ訪れていた。彼女は普段と同じで朝はコーヒー、それからトーストに目玉焼きとサラダを口にする事が殆ど。
簡易ケトルでお湯を沸かしながら、お気に入りのマグカップへ瓶に入ったインスタントコーヒーの豆を入れ、その間に市販の食パンを1枚トースターへセットしてから油を敷いたフライパンへ卵を割って中身を落とす。準備する最中に彼女は天井へ向けて呟いた。
「レクサー、テレビ点けて。チャンネルは2ね。」
音声入力だけで勝手にテレビが点灯、画面へ女性アナウンサーが映った。朝はニュースを見るのが彼女の日課だ。レクサー002と呼ばれる音声入力システムを導入したのはつい最近の事。一人暮らしに便利だからと彼女の両親、特に母親が決めて導入したのだ。
「よーし、半熟だ!私って天才♪」
にぃっと笑うと皿へ目玉焼きを乗せてから横へ市販のサラダを添えて完成。それを持って行くと今度はトースターから食パンも併せて回収、そして透明なガラス製のテーブルの上へ置くとケトルのお湯をマグカップへ注いで普段の朝食が完成した。
「いただきまーすッ!!やっぱ朝はパンだよパン!」
ご飯よりパン派な陽香は嬉しそうに自分の作った朝食を食べ、テレビのニュースを見ていた。
『1週間の犯罪数に関しましては以下の通りです。続きまして…数日前に発生した貴金属店の強盗事件に関するニュースです。治安局は引き続き捜査に当たっておりますが……』
「貴金属強盗か…また物騒だなぁ。」
トーストを齧ると彼女はそれをコーヒーで流し込む。暫くして食べ終わり、手を合わせてから食器を流し台へ持って行ってから今度は部屋で着替えを始める。クローゼットから取り出したのは紺色のスーツと白いワイシャツ。寝間着を脱いでそれ等を順に着込むと最後に左手へ黒い帯の時計を巻いた。
「よーし、バッチリ!後は携帯持って…と。」
鏡で軽く髪や服を整えてから彼女はリビングへ戻り、再び音声入力でテレビを消した後にガスを止める。そしてカバンを持って靴を履いてからアパートの外へ出る。ドアの端末へカードを差し込んでロックすると階段を降りて通りへ出た。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
同じ頃、1人の少女が路地裏を駆けていた。
黒い長髪とコートを風に靡かせて走る。追っているのはガタイの良い黒づくめの男で彼の右手にはバールを所持している。フェンスへ飛び付いてよじ登って越えれば彼女もよじ登って追跡を続ける。
「クソッ、何なんだよあのガキ!!」
覆面姿の男が振り返ると彼女の顔が視界に入った。
紫色の瞳と整った顔立ちはさながら美人そのもの、だが感じられる気迫は大人顔負けと来た。
歳はどう見ても10代と思われる。
男が人通りへ逃げ込むと直ぐに騒ぎになり、行き交う通行人達を押し退けて走り続けていた。
「早く退け!オラぁあッ!!退けってんだ!!」
女性だろうと男性だろうとお構い無しに押し退けて彼は只管に逃げ続ける。流石に見失っただろうと思い、途中で立ち止まるがそれは違った。
「……鬼ごっこはお終いか?オッサン。」
その少し低めの声に振り返るとバスの上から1人の少女が彼の事を見下ろしていたのだ。どうやって追い付いたのかは定かではない。
「お前…一体どうやって!?」
「そんなのはどうでも良いだろ…そんで、どうすんだ?お前達のせいでケガ人もかなり出てる。此処で大人しく──」
「ガキがサツの真似事か?はッ、ふざけんな!!俺は捕まらねぇぞ…絶対に!!」
彼が啖呵を切った瞬間、少女は懐から素早く黒光りする何かを取り出して男の方へ向けた。
それは拳銃で銃身の下部にはライトが搭載されている他にスライドカバーも前方部に左右4箇所の穴が空いている変わった物。そしてパンと乾いた音が響くと共に男の右手からバールが吹き飛んだのだ。
「え…ぁ…?」
「……警告はした。次はお前の脳天をコイツでブチ抜く。」
硝煙と思わしき煙が立ち昇っているあれはどう見ても銃、それも所持しているのは子供。
だがこの国の法律では未成年者の火器類の所持は禁止されている筈だった。それを何故彼女が平気で構えて持っている?それが解らない。まさかと思い、彼女へそれを投げ掛けた。
「まさかてめぇッ…ライセンス持ちか!?」
「……そうだと言ったら?」
再び少女が照準を此方へ合わせ始めると突然、2人の間へ割って入る様に全身銀色で人型のロボットの様な者が降り立つと男を庇う様にして立った。
「兄貴、生きてるか!?」
「お前…まさかジョージか!!」
「車がその先にある!それに乗って逃げろ!!」
そう話した彼は頷くと大柄な男を逃がし、代わりに少女と対峙すると車の走る音が聞こえた事から少女は舌打ちした。
「
「ベラベラ話してる場合か?喰らえぇッ!!」
青い目が点灯し相手が右手の平を向けるとビームが発射、彼女がバスから飛び降りて躱した瞬間に背後の看板へそれが命中し爆発音を立てて崩落してしまった。辺りから悲鳴が上がると人々が蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。少女は物陰へ隠れると端末で指示を乞う。
「おい、どーすんだキョーカ!!強盗犯じゃなくてテロリストの間違いじゃねぇのか!?ちッ…解ったよ…始末書増えても知らねぇからな!!」
通信を切り、バッと物陰から出ると少女は銃口を向けて狙いを定める。敵が振り返った瞬間、彼女へ目掛けて背部のマイクロミサイルと両手の平のビームを乱射し爆撃する。だが彼女はそれを右へすり抜けて避けては停車していた普通車の方へ駆け上がってルーフを踏み付け飛び上がると空中で身体を左へ若干捻ってから引き金を引いて幾度か発砲した。銃声と共に薬莢が散らばる。
「そんな攻撃ッ…何だ、急に動かなくなったぞ!?」
「……邪魔だ、失せろ。」
慌てている彼の頭部を後ろから射抜いて倒すと
少女は再び駆けて行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして話は再び陽香の方へ戻る。
彼女は地下鉄を利用して別の地点へ来ると大きな白い壁の建物の中へ入る。此処が彼女の勤務先となる場所、国家治安局本部。
受け付けで説明しIDカードとパスケースを受け取ると陽香は応接室で待たされていた。
「…緊張するなぁ。流石は本部…養成学校とは全然違う。」
少し経つとドアが開き、白衣を着た女性が入って来る。歳は自分よりも5つ上の様な気がした。陽香は立ち上がると彼女へ向けて敬礼する。
「は、初めまして!私は第08養成学校卒業生の早乙女陽香と申しますッ!!」
「…特殊犯罪捜査部隊並びに技術責任者の
女性も軽く敬礼すると陽香を応接室から連れ出して歩き出した。
「国家治安局…N.D.Sへようこそ、早乙女さん。此処では主にこの街で起こる事件や事故…その他色々な事を引き受けて行っている場所。まぁ…早い話が警察モドキって所かしら。」
「警察とは違うんですか?」
「ええ、此処に所属する人間…特に捜査関係者は皆、ライセンス所持者。つまりD.L.Sを持っているって事よ。」
エレベーターへ乗り込むと京香は6階のボタンを押すと共にドアが閉じ、エレベーターが動き出した。
「…確か警察はライセンスが無いから犯罪者への処置は出来ないんですよね?」
「そうよ、民間の警察にはライセンスが無いし常日頃から拳銃の所持は出来ない。大きく違うのはその変かしら。早乙女さんのライセンスは後で渡してあげる。」
「あ、ありがとうございます…。でも何故…犯罪者を処分する必要が有るんですか?」
エレベーターが止まり、ドアが開くと京香が先に降りて続いて陽香が降りる。そこはあまり人気の無い所で京香は再び歩き出した。
「……度重なる犯罪の増加、そして犯罪者の更生率の低下、そして再犯のリスクの増加。寧ろ減る所か悪化の意図を辿っている。また次の被害者を増やさない為…という狙いもあるわね。」
「学校でも聞きました。その為のライセンス…その為にN.D.Sが存在するんだって。」
「最近では
自動ドアを抜けた先に有ったのは狭い部屋。
右には仕切りが有る応接用の場所で後は白い長机が部屋の真ん中に置かれているだけ。椅子もそれぞれ人数分置かれていた。
「あの…此処って……。」
「特殊犯罪捜査対策部、A.C.T。Attack-Crime-Taskforceの頭文字を取った物よ。どう?カッコイイでしょ?」
「そうではなくて!!……此処って所謂、窓際部署って奴ですよね!?」
「そうよ?私達A.C.Tが必要とされるのは刑事課の連中でも手に負えなくなった時と…相手が一般人に危害を加え兼ねないと独自で判断した時。今は前者で1人が動いてくれてる。」
京香に手招きされ、モニターを見ると防犯カメラに1人の少女が映し出される。それは何かと戦っている様子だった。
「あの子もそうなんですか?」
「名前は
「
「出世コースから思いっ切り遠回りだけど…まぁ何とかなるから!ね?」
ポンと肩を叩かれると陽香はガックリと肩を落としてしまった。それから京香は「ちょっと待ってて」と伝えては彼女へ手帳と拳銃のホルスターを差し出して来る。
それを受け取った陽香は手帳を懐のポケットしまい、今度は上着を脱ぐと黒いホルスター付きのベルトを身に付けてから再び上着を羽織る。そして京香が拳銃を差し出して来た。それは銀色のベレッタm92Fなのだがバレルが延長されているのが解る。
「貴女のは此方でカスタムした物。マガジンの装弾数は15発、セーフティは此処。」
「これが私の銃……。」
陽香は少し眺めた後、それをホルスターへしまう。
そして突然鳴った携帯を京香が取ると応対し始めた。
「はいもしもし?…OK、アンタはそのまま張り込み継続して。たった今援軍が到着したからそっちへ向かわせる。いい?無理して死ぬんじゃないわよ?じゃーね!」
通話を終えた京香は付いて来いと陽香を手招きし
部屋の外へ出ると再びエレベーターへ乗り込む。
フロアの1階へ着くと別の通路から外の駐車場へ出ると小型のワゴン車へ乗り込んだ。陽香は助手席に座るとシートベルトを締める。
「いきなり実戦で悪いわね…相手は例の連続貴金属強盗犯。現在港の倉庫内に潜伏してる…それも人質取って……。」
「人質…!?」
「最初に言ったでしょ?この街では当たり前の事なの。誰が死のうが生きようが関係ない、無関係の一般市民を平気で巻き込むクズばかりなのよ。さぁ、出発するからしっかり掴まってて!!」
京香はレバーを左手で操作しアクセルを踏み込むと
ワゴン車は勢い良く走り出した。あまりのスピードに陽香はビビっている。どう見ても一般車が出して良いスピードではないからだ。
「しッ…死ぬぅうッ…!!こんなの無理ですぅうッ!!」
「大丈夫、死にはしないっての!!」
泣き叫ぶ陽香を他所に車は街中を疾走して行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
港にある倉庫の中では主犯を含めた犯人グループ4人と道中で彼らが人質とした30代の女性1人。
警察は出動こそしたが犯人側との交渉を続けているだけ、突入には時間が掛かっていた。
下手に刺激すれば人質を殺し兼ねないという緊迫した状況には変わりはない。一方の少女は倉庫から離れた別の路地で様子を伺っていて、そこへワゴン車が来ると彼女は振り返った。ドアが開いて京香が降りて来る。
「…状況は?」
「見ての通り…アイツらずっと奴等と交渉してる。あんな事してるからいつまで経っても古いんだよ。身代金要求してるから下手すりゃ相当長引くぜ?それで……そこの助手席で伸びてる女が援軍?」
「そう、ウチに配属された新人の早乙女陽香さん。舞依…彼女と協力して事件を解決させて来て。」
「はぁ!?アイツらなんかあたし1人で充分だっつーの!」
反論された京香は舞依へ近寄ると額へデコピンし
顔を近付けて来た。
「あのね、巻き込まれた無関係の人間を生きて返すのが私達治安局の役目でしょう!?派手にドンパチすればいいって訳じゃないの!!アンタ解ってるんでしょうねぇッ?」
口論を聞いて目を覚ました陽香が降りて来ると2人を見て立ち止まり、一方の舞依もまた陽香を見ていた。
「えっと…早乙女…陽香…です。」
「……行くぞ、足引っ張るなよ。」
舞依は陽香の尻をパンッと引っぱたくとワゴン車の荷台へ向かう。扉を開いてケースを取り出すと予備のマガジンを数本上着の内側へ忍ばせていた。
「あの…何を?」
「決まってんだろ、乗り込んでぶっ殺すんだよ。お前もマガジンそれで足りんのか?」
陽香は京香の方を振り返ると代わりにマガジンを取りに行き、場所を指定した。荷台はまるで武器庫で
サブマシンガンやアサルトライフルの他に各種グレネードも入っている。
「陽香ちゃんのマガジンケースは此処ね?後でスペース作っとくから。はいコレ、スタンバトン。護身用に持っとくと良いわ。」
「あ、ありがとう…ございます。」
筒状のそれを受け取った陽香はそれを腰からぶら下げると続いてインカムを受け取り、舞依の後に続いて歩いて行った。2人が向かったのは倉庫の裏手。
そしてガラスの前へ差し掛かると舞依が何かを拾って確かめ始める。それはレンガの破片だった。
「…これ位なら良いか。固さも重さも抜群だ。」
「えーっと……ま、舞依ちゃん…何する気?」
「そんなの決まってるだろ…もう良いよな?キョーカ。せぇーのぉッ──!!」
突入の指示が出ると舞依はレンガを投げてガラスを叩き壊し、積まれていた資材を足場にしてガラスを割って中へ飛び込んだのだ。当然犯人達は振り返って舞依の方を見つめる。黒づくめの連中4人が振り返った。痩せ型2人、大柄の主犯格1人、小太りの1人と様々。もう1人の痩せ型の男は人質の元に居る。そして人質は柱へ両手を後ろにされ縛られていて、口にはガムテープを付けられていた。
「てめぇ…さっきのガキか!?ジョージの奴は…ま、まさかッ──!?」
「あぁ、殺したよ。戦闘強化服なんかパクリやがって……頭イカれてんのか?お陰で黒焦げになっちまう所だった。」
「この野郎ッ…ぶっ殺してやる!!」
大柄の男が叫んだ途端、陽香も窓から降りた。
懐から手帳を取り出してそれを犯人達へと見せ付ける。
「全員動かないで、国家治安局です!!速やかに手にしている武器を全て捨てなさいッ!!応じない場合は特別法案に基づいて実力行使に──きゃあッ!?」
乾いた音と共に陽香の直ぐ横を弾丸が掠めた。
前方を見ると痩せ型の男がその手に銃を握り締めていたのだ。
「へへッ、可愛い顔してたもんだからつい撃っちまったぜ。悪ぃ悪ぃ!実力行使が何だってぇ?ぎゃはははッ!!」
悪びれる様子もなくゲラゲラと仲間達と笑っている。陽香は「頭来た!!」とムスッとし、スーツの左側にあるホルスターから拳銃を抜いて素早くセーフティを外した。
「……アイツらがマトモに話なんか聞く気ねぇだろ。退け、あたしがやる…お前は援護でもしてろ!!」
「え?あッ、ちょっとぉッ!?もーッ!!」
舞依は真っ先に駆け出すと自身から見て左の男が先に発砲する。2発が頭部を狙って放たれたが、それを彼女は1発目を少し頭を下げ、そして2発目を首を少し右へ傾けただけで避けてしまった。
「た…弾を全部避けやがった!?」
「はッ、遅せぇんだよバァーカ!!」
そして反撃で3発、舞依が素早く発砲すると胸部、左肩、腹部と撃ち抜くと1人がその場に倒れて動かなくなった。
「お、おいッ…大丈夫か!?」
「他人の心配してる場合か?ヒョロガリ野郎ッ!!」
痩せ型の男が構えた瞬間、素早く眉間を撃ち抜いて撃退し更に距離を縮めて行く。狙いは小太りの男で彼は舞依へ向けてアサルトライフルを向けた。
「これでも喰らえぇッ──!!」
凄まじい銃声と共に薬莢が音を立ててばら撒かれ、
舞依へ弾丸が掃射されて行くと彼女が左側へ飛び退いた後に後方から陽香がスモークグレネードを投げ付けた。それが地面へ着弾した瞬間に爆発、白煙が周囲に撒き散らされると銃声が止んだ。
「げほッ、げほッ…あのガキ何処行きやがった!?スモークなんて炊きやがって…畜生、前が見えねぇッ!!」
「此処だよオッサンッ!!」
声がする方向を向いた時にはもう遅く、白煙の中から姿を現した舞依により顔面へ左ストレートを喰らった末に眉間と胸部を撃ち抜かれてしまった。残るは主犯格の男のみで足音が舞依から後方へ遠ざかったのを確認する。
「てめぇッ!!逃げる気か!?」
「あばよ!!誰がてめぇらサツに捕まるかって──いぃッ!?」
白煙の中から抜け出した先に待ち構えて居たのは陽香、白銀の銃口を彼へ向けて構えていた。右足を少し後ろへ下げたウィーバースタンスの状態から狙いを定める。それでも大柄の男はお構い無しに陽香の方へと走って来た。
「くそッ、ライセンス持ちがなんだってんだ!!俺を殺せるもんなら殺してみなッ、女ぁあッ!!」
「当たれぇッ──!! 」
陽香は素早く引き金を引いて左肩と右足を的確に射抜いて相手を転倒させ、彼が苦しんで悶えている所へ深呼吸してから近寄ると銃口を彼の頭部へ突き付けた。
「……国家指定犯罪者特別法案に基づき、貴方へ実力を行使します。」
「ち、畜生ッ…何でだッ…!?俺達は…俺達は……!!」
すうっと僅かに息を吸い込んだ陽香は更に続ける。
「貴金属店を襲撃し民間人へ危害を加え、その挙句に無関係な彼女を事件に巻き込んで人質に取った……もう貴方は立派な犯罪者です。」
「はッ!!く、クソ喰らえだ…ッ!!何がライセンスだ…何が犯罪者を独自に裁く権利だ…てめぇら全員人間じゃねぇッ!!こんな国なんか──」
そして陽香が引き金を引くと彼は動かなくなる。赤い血液が漏れ出て来ると共に彼女はゆっくりと彼から離れた。
「状況終了しました…人質は無事、犯人グループ4名は条例に基づく実力行使により……処分しました。」
陽香は銃をしまい、人質を解放すると
彼女を宥めながら舞依と共に現場の入り口から外へ出る。現場のトップとも思われる人と話していた京香が振り返って近寄って来た。
「2人共お疲れ様!これで事件は無事解決したわ。人質も無事、初日にしては上出来じゃない?」
「私は特に何も…それに撃ったのは最後位ですし。後は舞依ちゃんがやってくれました。」
陽香が舞依の方を向いたが彼女は目を逸らした。
背を向けて歩き出した舞依の近くへ来ると陽香は彼女へ話し掛けた。
「あのッ!改めて…その、宜しくね?哀原…舞依ちゃん。」
「……あたしはアンタを認める気はない。
そう切り捨てると彼女は立ち去ってしまった。
早乙女陽香と哀原舞依。彼女達は国家治安局…通称N.D.S内部に存在する組織、A.C.Tに属しているライセンス持ちの女性刑事である。
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