ヘビですが、なにか
Nara
第1話 長さの問題
毎日のように時間を潰すのが、俺の生活だった。ニュースでは「働かない若者」が社会問題だという報道が毎日流れ、それがまるで俺を非難しているかのように感じて、テレビを見るのは避けていた。かといって、生産的なことをしているわけでもない。ベッドに横たわりながら、スマホでSNSの面白い投稿を眺めてはクスクス笑うのが日課だった。まるで床にこびりついたラーメンの汁のように見栄えが悪く、だらしない姿で、その日もユーモアの投稿を見ていた。
[タイトル: 240で身長+体重+アレの長さを分配してみた.txt]
俺みたいに暇を持て余している人間がたくさんいるようだった。中身のないその投稿にコメントが100件以上もついていたからだ。人々は誰も興味を持たないであろう自分の意見を一生懸命に表現していた。
(匿名1) 平均身長174で体重50、アレは16にすればいいなw
(匿名2) 177、50、13
どれもごく普通の選択だ。おそらく、みんな真剣に考えたのだろう。
(匿名5) 身長185、体重40、アレ15
ㄴ(匿名1) 185で40キロなら日常生活できるか?w
ㄴ(匿名5) 俺のスペックだ
(匿名7) 160で体重45kg、アレ35cm
ㄴ(匿名1) 嘘だろw
もちろん適当に言ってるコメントも多かったが、ふと少し真剣になってしまった。もし自分ならどう分配するだろうか。240をどんなふうに分けても満足するのは難しそうだ。虚しさを感じ、戻るボタンを押そうとした瞬間、最も多くの評価を受けたコメントが目に入った。
(匿名32) 190cm、70kg、-20cm
ㄴ(匿名31) マイナスってなんだよw
ㄴ(匿名48) 俺は強い女が好きだ。
ㄴ(匿名50) 女が190で70kgってどうなんだよw
ㄴ(匿名72) アスリートにでもなればいいんじゃないか。190で70ならちょうどいいだろ。
ㄴ(匿名54) 天才だな
ㄴ(匿名12) wwwwwwww
すごい、賢いなと思った。何かを思い切って捨てれば、別のものを得ることができるのだ。もちろん、捨てるべきものがとても重要なものであったが……その投稿は興味深く見ていたが、やがて記憶の彼方へと消えていった。しかし、まさか後になってその投稿を思い出すとは思わなかった。
***
それもこれも、目の前に浮かんでいるこのせいだった。
[ステータスを分配してください。]
※注意: 一度設定したステータスは修正できません。注意深く分配してください。
この半透明のウィンドウを何と呼ぶべきだろう。ステータスウィンドウ?ステータス?メッセージ?ゲームで見るようなこれは、紛れもなく現実だった。久しぶりに外出した俺が落ちてきた看板にぶつかって死んだのが本当なら、ここはおそらく死後の世界なのかもしれない。
「今、昏睡状態ってわけじゃないよな……」
恐ろしい想像だった。しかし、倒れた俺に群がった人たちが「ああ、あれ脳じゃないか?」と叫んでいたのを聞いたから、確かに俺は死んだのだろう。
私は緊張したままその下の文章を読んだ。
- 分配可能ステータス: 60
- 分配可能項目:
[精神力] [健康] [運] [潜在力] [出身成分]
「これって一体……」
死んだらゲームの世界に入ってどうのこうのっていうウェブ小説はたくさん見てきた。俺の時間つぶしの一つにはウェブ小説も含まれているが、俺はそもそもゲームはあまりしないし、このステータス分配能力がゲームらしいかといえば、少し奇妙だ。普通は力、敏捷、知能、魔力とかが出てくるのが普通じゃないか。潜在力や出身成分とは何だろう。
まず、ステータスは1が一番低くて20が一番良いものだろう。
幸いにも説明が書いてあった。
※標準的な人間の平均ステータスは10です。分配されたステータスによってあなたの次の人生が決まります。
つまり、精神力10なら普通の人の精神力という意味だ。運や健康など、他の項目も同じだろう。
「それじゃあ、どうやって分配すればいいんだ……」
そうつぶやきながら、俺は少しワクワクしている自分に気づいた。これは二度目のチャンスではないか。虚しく死んでしまったが、それさえもあまり悲しくなかった。むしろ胸が高鳴っていた。
まず、少し変わった項目が何を意味しているのか分析する必要があった。精神力、健康、運は直感的に理解できた。どれも重要な項目だ。人間の平均が10だと言うから、俺の前世のステータスはそれぞれ4、5、7くらいだったのではないだろうか。俺の精神も腐っていて、体も悪く、運も悪いほうだったからだ。
「5分の1ずつ分けても12ずつになるから悪くないな。」
240という曖昧な数値で身長や体重、あれの長さを分けるよりもずっと良い。12ずつ分ければ平均より少し良い人生が送れるはずだ!俺はためらわずに12点ずつ均等に分けようとした。
だが、指はそう動かなかった。俺のどん底のような人生と比べれば、平均的な人生でも十分にありがたいはずなのに、今回は何か特別な人生を生きてみたくなったようだ。
「……潜在力、出身成分か。」
それについて考えてみよう。
潜在力という表現は曖昧だ。才能のことだろうか?学問に対する潜在力、運動に対する潜在力?少なくとも前世の俺が持っていなかったものなのは確かだ。音楽も手を出してみたし、勉強もしたし、美術もやってみたが、才能なんて微塵もなく、何一つまともに成し遂げられなかった。もちろん根性がなくてすぐに諦めたせいもあったが。
一方、出身成分はなんとなくわかった。これは「スプーンの話」ではないか。誰の子として生まれ、どこで生まれたかに関するものだ。
もし俺が新たに生まれる場所が、俺の知る地球ではないとしたら、平民の子供として生まれるのか、それとも貴族の子供として生まれるのかが分かれるかもしれない。
「ちょっと待て、他のが良ければこれも克服できるんじゃないか?」
急に頭が冴え渡った。まるで、アレの長さを思い切ってマイナスにして他のステータスを手に入れたあのコメントのように。
「精神力、運、健康、潜在力、全部手に入れるなら、出身成分を少し犠牲にしても……」
実際、俺の冴えない人生とは裏腹に両親は裕福だった。両親は離婚したが、俺は何不自由なく裕福に暮らしてきた。だからこそ、無職でいられたのだ。もし少しだけ出身が悪くても、他のステータスを充実させれば、充実した人生を送れるのではないだろうか。
長い間悩んでいた俺は、ステータスウィンドウが不吉に点滅しているのを見て決心した。
そして分配したステータスは
[精神力] 20
[健康] 10
[運] 9
[潜在力] 20
[出身成分] 1
「おぉ……」
思い切った選択をした瞬間、20で満たされた項目の文字が太くなった。ただ、1に設定した出身成分も不安げに点滅し始めたのが少し気がかりだ。
案の定、声が聞こえてきた。
「思い切った選択、精神力を20に設定しました。あなたは不屈の精神を持つことになるでしょう。最も嫌悪すべき悪魔、最も偉大な神と対峙しても、心は決して揺らぐことはありません。」
なんだか雰囲気のある声だ。説明には大いに満足した。精神力は俺が最も重要視した項目だった。俺のメンタルはゴミみたいなものだったからだ。いつも簡単に諦め、ひとりで傷つき、他人や環境ばかりを責めていた。しかし、もうそんな生き方はしないだろう。
「平均的な健康を持つことになりました。不治の病にかかることはありませんが、非常に健康でもありません。」
「平均的な運を持つことになりました。人生を揺るがすような幸運にも、呆れるほどの不運にも見舞われません。」
健康と運は平均程度で満足だった。最も大事なのは精神力と、その努力で開花させることができる潜在力だ。
「思い切った選択で、潜在力を20に設定しました。あなたの魂には無限の可能性が宿っています。諦めずに努力し続けるならば、大きな不運が訪れない限り、いつかその力は輝かしい花を咲かせることでしょう。」
とてもいい。今回は前のように無気力には生きない。
胸が高鳴り、最も不安だった「出身成分」についての声が響いた。
「極端な選択で、出身成分を1に設定しました。あなたは最悪の環境で生まれることになります。その結果がどうであろうと、それはあなた自身が責任を持つべきことでしょう。最も卑しい始まりから、あなたがどのような結末を迎えるか。まだ分かりません。」
極端な選択、か。そうだ、ここまでは予想していたことだ。
おそらく普通の家に生まれることは夢にも見られず、ひょっとすると親のいない孤児として始まるかもしれない。健康が低くないから、まさか身体のどこかが不自由な状態で生まれることはないと願っているが……それでも乗り越えられるだろう。
しかし、それがどれほど軽々しい覚悟だったのか、すぐに分かることになる。
シジャの森。
シジャの木はこの辺境地域で多く育つ種だった。土地が肥沃で気候が温暖多湿な場所でよく成長するため、この森もまた非常に茂っていた。
繁茂した木の葉が太陽光をほとんど遮り、昼間なのに薄暗い。地面は湿っぽく、風も少ないため苔があちこちに生えていた。その森を歩く者たちがいた。
シジャの森には多くの魔物が住んでいるため非常に危険だが、彼らの足取りはためらいがなかった。この土地の住民も毒蛇や虫を避けるため足元に気をつけるが、フルプレートの鎧を身にまとった者たちには何も恐れるものはないだろう。さらに、その鎧を身につけた男は、この地の領主でさえ恐れるほどの大物だった。彼を案内する地元の農夫は、思わずごくりと唾を飲んだ。
「鋼鉄のグンター……八英雄の中でも一番ではないと聞いたが、それでも恐ろしいな。」
シジャの森には最近、危険な魔物が移り住んできた。その魔物が領主の兵士たちを多数殺害したため、領主は都に助けを求めたのだ。そして八英雄の一人であるグンターがやってきたというわけだ。
「そこか?」
グンターが低い声で尋ねた。彼が指さしたのは、森の崖の隙間にある洞窟だった。農夫はすぐに答えた。
「ええ、あそこです。あいつがあそこに陣取っています。」
「ここで待てばいいだろう。」
グンターは波乱万丈な人生で有名だった。他の英雄たちと異なり、彼は最も卑しい身分である下層民の出だった。しかし、彼は鋼のような精神力と、それ以上に輝く才能を持っていた。傭兵から始まり、ただ一本の斧槍で王国の八英雄の一人となった彼は、この村人たちにとっては神秘そのものだった。
どれほど待っただろうか。木に腰掛けていたグンターが突然立ち上がった。
「来るぞ。」
誰もその気配を感じ取れていなかったが、確かに不吉な音が洞窟の奥から響き出した。
シィー、シーッ。
農夫の背筋に寒気が走った。洞窟の中から巨大な何かが滑り出てきていた。
「目を閉じろ。石になりたくなければな。」
グンターの警告に、皆がぎゅっと目を閉じた。勇気ある数人だけが手鏡を取り出し、グンターの勇姿を覗き見ようとした。農夫もその一人だった。彼は汚れた手鏡で洞窟から何が這い出てくるのかを見守った。そうすればその魔物の目を直接見るのを避けられるからだ。
「うっ……!」
彼は思わず息を呑んだ。現れたのは恐ろしい怪物だった。
あれはただの蛇ではなかった。
名前に「サーペント」と付いているが、どうして魔物が女性の顔をしているのか。大木ほども太い蛇の胴体に、人間の顔がついている。髪の毛は一本一本が実は小さな子蛇で、頭にまとわりついて揺れる緑色の蛇たちがシューッと威嚇し、毒牙をむき出しにしている。
「シリリッ……」
そしてそのメデューサ・サーペントの唇から、紫色の長い舌がひらひらと揺れている。その妖しげに輝く眼差しがグンターを見据えた。
耐性がない者は目が合っただけで体が固まってしまう。しかし、グンターはまったく怯まずに駆け寄った。斧槍を高く掲げ、無謀なほどに正面から突撃する。目を閉じていることに気づいた農夫は、思わず叫びそうになった。
「シャアッ!」
メデューサ・サーペントの口が大きく開き、グンターに襲いかかる。たとえ鎧を着ていたとしても、その巨大な口に噛みつかれれば丸ごと押しつぶされるだろう。
その後のグンターの動きは、農夫の目では追いきれないものだった。ひらりと跳躍すると、巨大な斧槍を振り下ろし、――
ザクッ、ドサッ!
メデューサ・サーペントの頭が切り落とされた。首を失った胴体があちこちで蠢いていたが、グンターは気にも留めず、斧槍に付いた血を払い落とした。
「領主に、魔物を討伐したと知らせろ。」
「……は、はいっ!」
農夫は足が震えていた。たった一撃。グンターはわずか一撃であの怪物を仕留めたのだ。今日見た光景は、一生の自慢となるだろう。
「うわっ、ぎゃあ!」
誰かが悲鳴を上げた。そこにはぞっとする光景が広がっていた。メデューサ・サーペントの髪。数千匹の小さな子蛇が、死んだ頭からどっと落ちてきたのだ。その小さな蛇たちはグンターがいる方には向かわず、慌てて母親がいた洞窟へ逃げ込んでいった。
「こいつらはどうしますか?」
農夫はつい尋ねてしまった。グンターは冷ややかな目で農夫を見た。
「俺がそんな小蛇どもまで始末しろと言ったのか。」
「す、すみませんっ!」
怯えた農夫は急いでひざまずき、頭を下げた。
「その洞窟は奥が塞がっているのか?」
「はい、そうです。」
「ならば領地の兵士に命じて討伐させろ。火でも放てばいい。」
そう言ってグンターは躊躇なく立ち去った。取り残された農夫たちは、茫然と洞窟を見つめているだけだった。数千匹の蛇が、まるで虫の群れのように洞窟の中へ逃げ込んでいった。
「ここを見張っておくしかないな。」
「火を焚いておこう……誰か、硫黄持ってるか?」
その小さな蛇たちはさほど危険ではなかったが、農夫たちはため息をついた。そのうちの一人が這う蛇の群れを指さした。
「あれ、白いやつも混ざってるな。」
「白髪かもな。はは。」
***
そうだ、その数千匹の子蛇の中の一匹が俺だった。それも、ひときわ小さくて弱々しく、たった一匹の白い個体。
【リトル・ホワイト・スネーク Lv1】
メデューサ・サーペントは頭に子供たちを付けて養育する。卵から孵った俺は、だから母の体にしっかりとしがみついて生き延びてきた。
しかし、化け物じみた奴によって母の頭が吹き飛ばされた。
「くそっ、出身成分に種族も含まれてたのかよ!」
貧しい身分で生まれる覚悟はしていた。孤児院で意地の悪い院長に叩かれて育つ覚悟もしていた。
だが、蛇……しかも魔物の蛇の子供として生まれるとは、一体どういうことなんだ。
その時、首を失った母の体が暴れ出し、俺の兄弟たちを押し潰していった。危うく死にかけたが、血まみれの兄弟たちを避け、かろうじて逃げ出した。
[素早く這いまわる Lv1 を獲得しました。]
[生まれ持った潜在力によって熟練度が速やかに上昇します。]
くそ、潜在力なんてくそくらえ。
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