元親友
抹茶
第1話 恵ちゃん
彼女は1ヶ月前に私立の中学校に入学した山口乃々華。受験でギリギリ受かった私立中学高等学校に通っていました。小学校まで友達たくさんだった彼女は、新しい環境に馴染めず、1週間近く誰とも話さない学校生活が続いていました。そんな彼女に1人の女の子が話しかけました。
お弁当
「こんにちは!乃々華ちゃんだよね?」
いきなり話しかけられ、やっとの思いで持ち上げたミニトマトを落とす。びっくりしながらも、話しかけてきた人物に顔を向ける。
「こんにちは…川口さん?」
「あはは、恵でいいよ!」
「初めまして、恵ちゃん。」
彼女は川口恵(かわぐち めぐみ)。クラスの中で1番背の低い子で、男女ともに友達がいる子だった。
「どうしたの?」
話しかけてきた意図が分からず、聞く。すると恵ちゃんは手に持っていたお弁当を顔の近くまで持ち上げ、笑いながら言った。
「一緒にお弁当食べよ!」
「でー、最近そこに行ってみたんだけどー、めっちゃケーキ美味しくてー!」
「へー!どんなケーキなの?」
「えっとねー、」
(キーンコーンカーンコーン)
チャイムが鳴り響く。
「あっ、もう掃除の時間かー、また後で!」
「うん、また後で。」
友達
なんとなくで一緒になった帰り道。私たちの中学校では、ほとんどの人が電車で帰るので、自然と帰り道も同じになった。
「ねぇ、乃々華ちゃん。」
そう言われ、隣を歩く恵ちゃんの方を向く。
「どうしたの?」
そう聞くと、言いにくそうに下を向きながら言う。
「私、小学校とかで ずっと友達みたいな子がいたんだけど、乃々華ちゃんともそんな感じの関係になれないかなって…。私の一生の親友になってくれない?」
ガシリと小さな手でそれでも強い力で私の手首を握りしめる。
「あー、そういうことね。」
しばし考える。そして、
「もちろん、ずっと友達だよ!」
そう答える。なぜ考えたかと言うと、ここで同じように親友や、一生などという言葉を使えば、逃げられないと言う予感がしたからだ。これは私の勘なのだが、この子は私の性格にあっていないという感じがしたのだ。話したのもほんの数時間だが、今までの十二年間で培われた勘がそう訴えているのだ。私の計算されたその言葉に気づかず、恵ちゃんは
「ほんと!?やったー!」
と言い、顔を近ずけてくる。それを軽くかわし、微笑む。そんなことには気づかず、どんどんと恵ちゃんは進んで行く。その後を私も追う。
電車
駅のホームで待っていると、遠くから踏切のカンカンという甲高い警告音が聞こえる。駅に速度を落とした電車が止まる。すると、恵ちゃんは降りる人も待たずに、人の波をかき分け、一直線に席へと急ぐ。その後を人が降りるのを待ったあとに乗り込む。
「席空いてたよ!ラッキーだったね!」
「うん。そうだね…」
ちょっと困りながらも席に座らせてもらう。
2つ目の駅に止まった時、恵ちゃんが立ち上がる。
「私ここなんだ。また明日ー!」
「うん、また明日。」
そう応え、恵ちゃんが降りるのを見送る。恵ちゃんが降りたのを確認したあと、席を立ち、電車の端に行く。すると、老夫婦達が席に着く。その光景をチラリと見て、周りを確認したあと、携帯を出す。私の学校はSNS禁止で、電車内でも先生が見守っているのだ。私は唯一学校で許可されているLINEを開く。そして、小学校からの友達とのチャット欄を開く。
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