第一話

第1話

「扉をちゃんと閉めないと、おとないさんに連れていかれるよ!」


おとないさん。


この名前を私がはじめて聞いたのは小学校に上がる前だったと思う。



今日のように夕涼みしようとリビングの窓を三分の一ほど開けて風を取り込んでいた。


リビングのドアも少しばかり開いていた。


それを見つけた祖母が深いしわを刻んで顔をしかめながらリビングの扉を締めて口にしたのが聞いたこともないこの名前。


「なにそれ?」


「ああして道をつくると、よくないもんが入ってくるんだよ」


祖母は諭すように私に言った。


「わかった」


当時の私はそれで納得したものだった。



そして大学を卒業して社会人になっても同じことを言われたわけだ。


ようやく荷物の整理が一段落して息抜きしていたというのに……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る