第5話 暖かいロングコート
「なあ、今じゃダメなのか?夜中まで待つのはめんどくさいな」
「そう言うなよ。隊長達が誰1人も戻ってこない……何があったか分からないから、
慎重をきしたほうがいいと親方様が仰ってる。
それに今騒がれたら面倒だ……
夜中、寝静まった頃に、侵入する。鍵は預かってあるからな」
「……って言ってるよ」
「よく聞こえるわね?私には何にも分からないわよ?
夜中に襲ってくるの?どうしましょう?……」
「僕がやっつけちゃう?それでも良いんだけど……
何人いるか分からないから……
2人を守りながらだと、少し心配だね。
夜中って言ってるから、まだ少し
今の内に、王都のティアナの家に、助けを求めれば良くない?」
「それはそうだけど……どうやって連絡するの?……」
「僕が抜け出して行って来るよ。だから急いで手紙書いてくれる?」
「もう直ぐ日が暮れるわよ?谷に掛かる橋は、夜通行出来ないの……
それに、隠れて渡れても、人の足だと王都までつくのは……」
「大丈夫、空飛んでくから」
「……今なんて?」
「だから空飛んでく、1時間も掛からないと思うよ?」
「う……嘘……」
「ティアナの家は、地図のここであってる?」
異空間から、ゴソゴソと1枚の地図を出し、中央を指差す。
「な、何で貴方が、私の家までの案内図を持っているの?」
「王都に行く用事が有るって言ったけど、
それはクリスティー公爵家に行く事だったんだ」
「何で言わなかったのよ?それに何の用事で私の家に?」
「ハハハ……驚ろかそうと思って……それと用事は……
じいちゃん達から、公爵様への手紙を預かってるんだよ」
「え?貴方のお祖父様達って、父の知り合いなの?」
「分かんないけど、そうなんじゃないのかな?」
「どういう内容の手紙か知ってる?」
「クリスティー公爵家にお世話になりなさいって言われてるよ?」
「うちに住むの?」
「さあ?どこに住むのか分からないけど、
学園の寮かもしれないし……学園に通えって言われてるから……
とにかく、手紙を見せれば、必ず助けになってくれるからって」
「ダメよ寮なんて……私の家に住みなさい?部屋はたくさん有るんだから」
「まあ、それはどっちでも良いんだけど……
そういうのは後でいいから、早く手紙書いてよ」
「じゃあ行って来るね」
「うん、気を付けてね。私達は家具でバリケード作って待ってるから」
「ん?必要ないよ?さっき部屋に結界貼ったから、
2時間や3時間で、破られる事はないよ?」
「そ、そうなの?貴方の結界って……凄そうね……」
「じゃあ」
窓からヒョイっと飛び降りるレオナルド。
「……ラニー……ここ5階よね?飛び降りたわよ?」
「大丈夫です、ほらもうあそこの空を飛んでいます……」
「……何なのあいつって……本当に人間?」
「お〜い!誰かいない?お〜い!」
「誰だこんな夜に!何だガキじゃないか。どうした?道にでも迷ったか?」
「ああ、門番さん!僕、ティアナの友達のレオナルド。
そしてこれ、ティアナの手紙、緊急事態なんだ、
急いでティアナのお父さんに見せて!」
「そ、その字は確かに……って、俺、お嬢様の字なんか見たことね〜や。
ちょっとそこで待ってろ。今届けて来るからよ」
暫くすると、屋敷の明かりが次々につき、
ドタバタと大きな音がしている。大騒ぎになっている様だ。
「おい、坊主、公爵閣下がお呼びだ」
「君がこの手紙を?ここに書かれている事は本当なのかね?」
「そうだよ。ティアナの字でしょ?急いで助けに行ってあげて。
僕はティアナが心配だから、今直ぐ戻るね」
「ちょっと待ちなさい、今、魔道飛行艇の準備をしているから……
それに乗った方が早いだろう?」
「僕も空を飛んでくから……その方が早いよ?上空はすごく寒いけどね」
「……今なんて?」
「だから空飛んでく、1時間も掛からないと思うよ?」
「ほ……本当か……」
「ハハハ、親子だね?ティアナと全くおんなじ反応……じゃあお先に……」
「ちょっと待ちなさい。貴方震えているじゃない。寒いのでしょ?
そんな格好だから……これに着替えなさい。丁度良い大きさだと思うわ」
髪は透き通る様なブルーロング。
大きな目の瞳は少しだけピンクがかった紫色。
ティアナによく似た上品そうな婦人が、ロングコートを差し出す。
「お……お前、それは……誰にも触らせなかったじゃないか……良いのか?」
「良いのよ。この子は……レオナルド君だっけ?
ティアナをもう2度も助けてくれた命の恩人よ」
「お前が良いなら良いんだが……」
「お〜暖か〜 このロングコートは動きにくくなるかと思ったら、すごく動きやすいし……
母さんありがとう……じゃないや、ごめんおばさん間違えちゃった……
服ありがとう……ど、どうしたの涙が出てるけど……」
「お願いもう一度お母さんって呼んでみて……」
「え?え……と、お母さん?……あ、あの……僕なんか悪い事言っちゃった?」
「ううん、違うのよ?気を付けて行ってきてね?ティアナをお願いね?」
「うん、じゃあ行ってくる。あっそうだ、これ……
僕のじいちゃんとばあちゃんから、公爵様に渡せって」
「ん?君のお爺さん達から私に?」
「うん、じゃあね!」
「何だ?手紙?サウザー?メリーアン?
こ、これは剣聖様と大賢者様からではないか!あの子は一体……」
「閣下!準備出来ました。
この時間ですので、200名程しか騎士を集められませんでしたが、
直ぐに出発できます!」
「分かった!手紙は飛行船の中で読もう」
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