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 この動画がどういう経路で若い――もっと言うなら幼い、成人前の子供たちの目に触れたのかは分からない。

 特に劇的に再生数が増えたとか、インフルエンサーと呼ばれる人が紹介したとか、そう言うことはなかった。少なくとも、春愁はそう記憶している。

 ちゃんとフィクションである、と明記したのだ。これは本殿修理のために遷宮していただいた簡易のお社で、ご本神ほんにん様はまあまあ興味津々でお社をぶっ壊すのを最前列でかぶりつきでご覧になっていた上に、出演も果たしてくださったが。

 そしてそれがしばらくしてから視聴者に気が付かれて、コメント欄が盛り上がっていたし、確認のために再生数を伸ばして貰えたので、ありがたかった、で終わる話ではあるのだが。


「それでなんで壊していいってなるわけ???」


 コメント欄に「祠って壊していいんだ!」「近所の祠壊してみる!」みたいな書き込みが増えだしたのだ。

 単純に最後まで見ずに、コメント欄だけ見ているとか、祠の破壊が終わったところで止めたとか、そう言うことかもしれない。ちゃんと紹介文に書かないとだめか、という思いと、ちゃんと紹介文に書いてもこの手合は読まないよな、という思いの両方が春愁をさいなむ。


 いや、この壊した子供が――子供だと言ってくれ。大人だったらどうしてくれよう。

 勝手に神に呪われるのであれば好きにしてもらって構わない、とは思う。一族郎党呪われたとしても、春愁の尻尾は傷まない。

 痛まない、が。


「多分これ、怒られるよね」

「怒られるね」


 原因を作ったこと、について、怒られるだろう。理不尽なことに、宇迦之御魂神様は怒られないのだ。依頼してきたのあっちなのに。


「となると取れる手は一つだけか」

「書き込みだけで終わるといいよね」


 春愁と炎陽はため息を吐いて、キツネのネットワークに話を流してもらうために、王子稲荷の頭領の部屋へととぼとぼと向かうのだった。

 それは、桜のつぼみもほころび始め、通り沿いには花が咲き乱れるほどではないが咲き始め、花粉も飛散をしだす頃だった。

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